昔、国語の教科書にこんな文章が載っていた。
筆者が小学生の頃、字が下手なのを気にして先生に相談にいった。
その先生は「そうですか?そんなに下手ではないでしょう」と言った後
「字を書くときに、少しでもキレイに書こう、ていねいに書こうと思いながら書きなさい」とアドバイスした。
文字に限らない。
どんなことでも、少しでも上手になりたい、と思い続けていれば、きっと上達する…
という話。
俳優にして脚本家、金子正次は言った
「脚本ってのは、誰にでも書けるんじゃないでしょうか」
…これは、言葉を補足する必要がある。
→常に映画のことを考え、映画を観ながら、こんな展開にしたい、こんなセリフはどうか、と頭の中で練り続けている人ならば…「誰でも脚本が書ける」
金子正次、主演・脚本の映画『竜二』は印象深かった。
冒頭、「あんた三東会の竜二さんでしょ?」と言われた時の(誇らしげな、あるいはシャイにも見える)笑顔。
ラスト近く、「大根も高くなったわねぇ」と家計簿を付ける妻に「うるせぇ!」と怒鳴りつけた時の、切なく荒んだ表情。
金子は語っている。
…名画座で、健さんの任侠映画がかかっていた。
ヤクザの美学を体現する健さんを見ながら、街のチンピラ(下っ端ヤクザ)達が涙を流している。
でも自分には、彼らと一緒に泣く資格はない、と思った…
金子は、彼ら下っ端ヤクザに何を感じ、何を描こうとしたのだろう。
これは余談だが、こんな話を読んだ…
やっぱり名画座で、『男はつらいよ』がかかっていた。
あわや、寅さんの濡れ場?というシーンがあった。
幼い子を寝かしつける女性の腰回りが、ねっとりとスクリーンに映し出される。
隣の部屋では寅さんが茶碗酒を啜っている。
寅さんは、その腰に視線をやり…そしてそらす。
「寅さん、どうした、やれやれ~」と観客席から声が上がった。
すると、前列にいた客が立ち上がり、涙声で怒鳴った。
「寅さんは、そんなことしない!」
さて、金子正次は『竜二』公開中に、33才で病没した。
4本の脚本(いずれもヤクザ映画)が後に残った。
しかし、他人の手による映画化は
『チンピラ』…論外
『ちょうちん』…茶番
それ以降は観ていない。
任侠映画で涙するチンピラに、金子正次は何を見たのか。
その想いを表現するために、どれほど頭の中で脚本を練り上げたのか。
それを共有し得る者でなければ、金子脚本の真の映画化は出来ないだろう。
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