マクベス稽古佳境に入り残すところ3日となった。勝俣さんの演出もより白熱してきた。いや、最初から白熱してる。演出のイメージ通り行けば凄まじいものになる筈。
再確認のつもりで昨日から何気なくスカーフェイス、リチャードを探して、そして蜘蛛の巣城を立て続けに流し観た。
どれもとても大好きな作品だ。スカーフェイスのトニーの台詞でマクベスの台詞に似たようなのがある。手に入れたいものを手に入れて、エルビラとマニーと三人でレストランで食事のシーン。「飲んで。食って。ファックして。俺はこの為に苦労したのか?やがて腹は出て、シミだらけになり、しわくちゃの後ろの化物みたいになる。それに一体何の意味がある?」とかなんとか。このシーンが良い。そして、更に上り詰めて最後はマクベスのラストのように運命と戦う決意をして殺されて終わる。この運命と戦うというシーンが非常に好きで、観ると影響される。明日はなくて今日を生きる感じになるからだ。
蜘蛛の巣城もストーリーが簡略されて展開が早いし、能の様式美も取り入れているので、目を離さずにいられない。特にマクベス夫人こと浅茅の見るという芝居だけで全然観る事が出来る。瞬きは勿論しないで見る以上の行為で見ている。これが出来たら素晴らしい。1957年の黒澤映画。無常。
今回の僕達の舞台も「人間とはおかしなものよのう」の一言。この世の中に生きている。僕達。人間は。というお話。マクベスだから。しかし、シェイクスピアのマクベスという役は読むのは容易いがやるのは大変だ。僕じゃないが。それは人間の人生以上の感情をものの2時間足らずで全部表現しなくてはならない。稽古は3日。本番まではあと5日。ここからが鞍に飛び乗れるか、向こう側に落ちるかの時間だ。運命と戦ってやるぞ!と皆が向かっている。その先には?
いいはわるいでわるいはいい。悪い事をすれば褒められ良い事すればかえって馬鹿にされかねない今のこの世で腹が煮えくりかえってる男です。命をかけてやってみるつもりです。台詞だけでこんなに面白いし、この一行でも四百年前から今に通じる人間の魂は不変的でそれがとても奇妙で面白い。アルパチーノがリチャードを探してを創ったわけがここにある。そのドキュメンタリー映画の街頭のインタビューで黒人の人が話したのが「言葉は知性だ。今の世の中は言葉が沢山あるが意味はとても希薄だ。シェイクスピアを子どもの時から教育に取り入れるべきだ。そうすれば感性が身につく。感性があれば人間は殺し合ったりしない。」
僕もそう思う。シェイクスピアはとても豊かにしてくれる。
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