「モテキのはじまり」の後、小林麻央さんの訃報に接した事もあって、自分史的には時代が少しばかり後の方にいってしまったので、ここらで話を戻しておこうと思う。
この話の頃、つまりボクが2度目の結婚生活の只中にいて、奥さん+彼女の三人暮らしという極めて変則的な生活をしていた。
なので、某有名ブランドの女子社員を自分が経営するスポーツ用品に引き抜いたのも、「モテキのはじまり」で書いたように<家に帰ると、奥さんと彼女が 「お帰り~」と迎えてくれ>ていた、まさにその頃の出来事なのだ。
そしてこの頃、子どもが産めない身体である事を泣きながら告白した女子大生と別れや、焼き肉デートを楽しんだ彼女の親友との交流が始まろうとしていた時でもあったのだ。
さて話を引き抜きに成功した某有名ブランドの女子社員に戻そう。
彼女の入社が決まったのは、8月1日、最近の言葉でいえば「猛暑日」のような暑さの日だった。
出勤初日は、兼ねてから約束していたとおり、ボクが彼女を自宅まで迎えに行き、二人で一緒に出社した。
ファッションビルの中にいても周囲の眼をひくほどの美人を、いきなり同僚として迎えた社員たちの気持ちはいかばかりだったろうかと、今となれば思いやることもできるが、当時のボクはそんな事にはおかまいなしだった。
なにせ、社長就任の日に、フルフェイスに皮のジャケットという出で立ちで出社するような自信家だったのだから、そんな事に気をつかうわけもなかったのだ。
その日から本店1階のウィンドウディスプレイやウェア売り場のディスプレイなどを担当する事となった彼女は、周囲が驚くほどの手際でお店を作り変えていった。
しかし、周囲からは完璧と見えるそのディスプレイも、ないないずくしの状況でなんとか誤魔化しただけという、彼女自身はまったく納得できないものだったのだ。
結局、出社初日にして早々に、彼女は一流ブランドのショップとスポーツ用品店の違いを実感することになったのだ。
その日の帰り、彼女を送る車中で、これからのスポーツ用品店のあり方について、彼女はマシンガンのような勢いでディスプレイの重要性や売り場の配置など、ずいぶんと踏み込んだところまで話してくれた。
なにより、こんな風に熱くビジネスについて美女と語り合えることが嬉しかった。
ボクにとっては、彼女のように身近にいながらビジネスパートナーとして接することができる女性という位置づけが新鮮であり、また刺激的でもあったのだ。
こうしてボクの彼女の関係は、夏の暑い季節の間、日々深まっていったのだ。












