「府民は実際の所、冷ややかな目で見てますよ」
在大阪企業のある幹部は溜息をつく。
11月に迫る大阪府知事、大阪市長のダブル選挙。現職府知事の橋下徹氏が市長選に鞍替え出馬し、自民党は府知事選に丸山和也参院議員の擁立を図るなど、話題ばかりが先行する。争点となっているのは、「府対市」であり、橋下氏らの「大阪都構想」に見られる「地方対中央」という構図ばかり。
具体的な政策論争に発展しないだけに、府民の関心は一向に高まらないのだという。それもそのはず。大阪はじめ、関西の経済界が東日本大震災以後、抱く危機感は急速に高まっており、政治の停滞にかまう余裕すらないのだ。
10月発表の日銀短観では、全国で見た場合の主な指標は、震災後から足元にかけて、着実な回復傾向が見て取れる。これは震災による生産の遅れを回復すべく、自動車産業を中心に国内生産が回復したことが主因だった。
しかし、関西だけを見ると、こうした全国傾向とは違った様相が浮かび上がってくる。直接被害がなかった関西では、震災直後の生産や消費に対するダメージは東日本と比べれば軽微だったものの、回復の足取りは鈍い。
電力不足は関西の方が深刻
東京電力の福島第1原子力発電所事故を受け、放射性物質の飛散や電力不足を避けるために、震災直後は関西への人口流入も一気に加速したものの、電力不足は関西も同様。むしろ、関西電力はほかの電力会社に比べて原発依存度が高いために、全国の原発が稼働停止する現状では、より電力不足が深刻化している。
中部や関東地方と比べ、自動車産業の集積度合いが低いことも回復の足取りを重くする一因となった。頼みの綱である電機産業も、先進国需要が低迷し、円高局面でアジア勢との熾烈な競争を繰り広げるため、事業環境は芳しくない。「震災よりも、関西企業に強い打撃を与えているのは円高」(りそな総合研究所の荒木秀之主任研究員)という。
そして、今後の関西財界に重くのしかかるのが、実は「復興」という2文字かもしれない。
今年10~12月の業況判断を見た場合、全国平均が前年同期比で横ばい、ないしは若干の下落傾向にあることに対し、近畿エリアは大幅な下落となっている。りそな総研の荒木氏はこの背景を、「復興特需が得られない中での増税」と解説する。
自動車産業だけでなく、裾野の広い建設産業は東北における復興需要の取り込みが期待されるが、これを享受できるのは関東のゼネコンなどが中心で、関西企業へのプラス影響は限定的だ。
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