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空想詩: ゲーテとベッティーナの物語
時は過ぎ、未来に転生したふたり。
そこから物語ははじまります。
未来に転生したふたりは、
年齢だけはそのまま持ち越していた。
22歳のベッティーナは、
相変わらず光の速さで恋に走り、
58歳のゲーテは、
静けさの深さで世界を見つめていた。
「愛があれば歳の差なんて」と、
ふたりは一度はむすばれた。
未来の街のネオンの下で、
手をつないだ瞬間もあった。
だがしかし。
ある日、ベッティーナは突然言った。
「ねえゲーテ、なんか……おじさん臭い」
その言葉は、
未来の空気よりも冷たく、
ゲーテの胸に静かに沈んだ。
ベッティーナはそのまま、
新しい彼氏を見つけて、
あっけらかんと幸せになった。
めでたしめでたし。
――ん?
ゲーテは残された。
未来の海辺で、
ただ波を見つめてぼーっとしていた。
夕暮れの光が、
彼の沈黙を長く伸ばしていた。
そこへ、
なぜか浦島太郎が現れた。
「お疲れさん。これ、開けてみる?」
そう言って玉手箱を差し出した。
ゲーテは、
深く考えることもなく、
静かに蓋を開けた。
白い煙が立ちのぼり、
未来の海風に溶けていく。
ゲーテは少しだけ笑った。
白い煙は、
年齢さえ連れていったようだった。
煙が晴れたあと、
海だけが静かに残った。
終わり。
残されたゲーテが
かつての時代を思って詠んだ詩
海は広いな大きいな。
君が去ったあとも、
波は同じ速度で寄せては返し、
私の影をひそやかに伸ばしていく。
転生したこの未来の世界であろうと、
若さは風のように過ぎ去り、
私の手の中には
もう何も残っていない。
それでも私は見るだろう。
君の光が遠くで揺れているのを。
愛は、触れた瞬間に壊れるものではなく、
触れないことで形を保つこともある。
私は触れなかった。
それが私の愛だった。
🌹
追記 ここだけの話し、
玉手箱を開けたゲーテは若返っていた。


