詩: ホタテ


シュッ シュッ

ジェット噴射でさまようの

目指すは青い砂漠の底

月の雫を抱いて眠ります


ぷくぷくして美味しいね

あなたはそう言うけれど

それはわたしの時間

海の記憶が残ってるせいよ




詩: 風より先に


長いおみみが そっとゆれて

遠い土が まだ眠っている


小さなおはなが ふるえて

遠い水が ひかりをこぼす


赤いおめめが ぱちりと開き

遠い火が 名を呼んでいる


大きなあしが 地面を鳴らし

遠い木が 風より先に走りだす






詩: 映画好きのおっちゃん


「いやぁ〜

これがまたええ映画でなぁ!」


もう始まっている


まだ座ってもないのに

始まっている


缶コーヒー片手に

ポスターの前で

もうラストシーンまで喋ってる


「ほれ、ここ!

 ここが泣けるんや!」


いやまだ

誰も観てへん


「昔の映画いうのはな、

 雨の降り方が違うねん」


知らんけど

ちょっと分かる


スクリーンの話なのか

人生の話なのか


もう途中から

誰も区別していない


エンドロールより長く

喋り続けて


最後だけ急に

照れたみたいに笑う


「ほな、サイナラや


ロビーのポスターだけが

まだ少し明るい