定時制野球部では3年生になり、キャプテンとなった
今まで自分勝手にやって来た俺は、キャプテンには程遠い性格であったが、先輩に託され、新しい自分への挑戦であった
1、2年生の時は上級生が野球の出来る人達が何人か居たので、1年生の時は県大会でも決勝まで行け、2年生の時は市大会で優勝、準決勝では、ピッチャーとして、最後の1人のバッターまでパーフェクト試合、あと1人というとこで、どうしても野茂で投げたくなってしまい、ファーボール、結果ノーヒットノーランになってしまったが、記録を達成した。
しかし俺が3年生になった時の後輩は、2人位野球の出来る子が居て、あとは…
どう見ても野球が出来そうな子がいない、見るからに『いじめられっ子です』と背中に紙を貼られている様な子達だ😅
『野球やったことあるか⁉️』
『はい🎵』(新入部員)
『お、どこやってたの⁉️』
『ランナーコーチ以外やったことありません🎵』(新入部員)
( ̄▽ ̄;)
人数はギリギリ、野球経験者は実際、俺合わせて4名
残りの5名はキャッチボールもまともに出来ない
これは【がんばれベアーズ】(昔の洋画)より酷いぞ😅
それでもみんな『野球が好きだ🎵』と言う
何とかこの子達に、野球やってて良かったな🎵
もっと野球が好きになった🎵
と思わせてあげたいなと真剣に思った
その為には試合に勝たないといけない‼️
俺らでも勝てるんだ✨って言うのを経験して自信が付けば、いじめられっ子では無くなる
キャッチボールをしても中々直ぐには上手くならない、時間は必要だ
キャッチボールの練習は毎日出来る
その前に、試合での緊張感の中では普段出来ても、出来なくなってしまう
だからこそ【勇気】が必要で、それは【声だし】に共通する
先ずは多摩川の土手沿いに日曜集合し、キャッチボールの後は、河に向かい声出しをする
大きな声を出すことにより、恥ずかしさをなくし、自分を奮い立たせる
冬になるとスキー合宿と言う名の遊び旅行
もちろん、いじめられっ子代表選手の様な子達、女の子と喋るのも簡単ではない
それでもスキー場で女の子に声を掛けさせる
不思議なもので段々に女の子にも慣れ、基礎体力も付き、体感も良くなり、自信も付いてくる
そしてチームワークも出来てくる✨
このチームが夏に快進撃を起こすとは誰が予測しただろうか?
野球の技術も1年でだいぶ上手くなった👀
でも一番の武器はチームワークだ
もう、昔の俺ではない
先輩から託されたこのチームで、キャプテンシーを教わった
後輩はクラスではやはり、いじめられる存在である。
それも俺が守ってやる
野球を楽しもうぜ🎵
実際、後輩達のボディーガードをしてあげた
そして、昔の同級生に対しての扱いではなく、後輩達が先輩をいじれる環境作りをした
他のチームとの技術は、差があり過ぎてそう簡単には埋まらない
でもチームワークがあれば実力差を超えることが出来る
これは今まで何度か逆の経験をしたことがあったから言える
絶対に個々の実力は負けてないのに、気付いたら試合に負けている
これをうちのチームワークなら出来ると思った
先ず一番バッターは、野球レギュラー経験のない子だ
病気で髪の毛が縮れてまばらに生えている子を一番バッターにして、ヘルメットを浅く被り、ホームベース上に頭を出す
立ち上がりどんな優秀なピッチャーでも不安定と言うが、そこに来てモンスターリンクがベースの上に顔をかぶしこっちを睨み付けてる
ぶつけるわけには行かないから大体ファーボールだ⚾
1回の先頭打者の出塁率は8割を超えた
おそらく他のチームはみんな『あれはズルイ』と言っただろう
実力差のある相手を次々と倒していく
段々と勝つ味をみんなが噛み締めて、それが自信に変わっていく
エラーをしても、『当たり前だろ下手なんだから、俺らが打って返してやるよ✨』と言う
下手くそな選手が当たり前にゴロをさばいただけで、大ファインプレーをした様な盛り上がり、それに相手チームも段々呑まれていく
ふと、昼間の学校でも名門校の夜間学校との対戦、甲子園常連校の元名将野球部監督に
『君みたいな子が1人、うちのチームに居たら強くなるな✨』とサヨナラ勝ちをした後にポツリと言われた
4年生最後の夏の大会、準決勝、最高のグランドで高校生活5年間の最後の戦いが終わった
俺はある意味他の高校球児より幸せだったのかも知れない
少年野球から、試合の日は欠かさず見に来ていた親父が今日も最後の試合を見に来てくれていた
最後の試合が終わり、1人球場の隅に居たところ、小さい頃から毎試合毎試合見に来て、ホームランを打った日にも、他のあの打席はダメだったと決して褒めない親父が、『お疲れ、良い試合だった、ご苦労様🎵』と初めて優しい声を掛けられた瞬間『終わったんだ』と思い大量の涙が溢れてきた。
1度は怪我で野球を諦め、悪いことをして学校を退学になり沢山の人を裏切り、それでもまた定時制の野球部で、最高の先輩、後輩、仲間と出逢い、他人より少し長い高校球児でいられ、色んな角度で野球が見れて、出来た。
『野球馬鹿』になることは難しい
自分の努力はもちろん、環境にも恵まれると言うことだ
大人になっても夢は持てる
それでも高校野球にしろ、他の部活にしろ、高校時代にしか叶えられない夢がある
若いエネルギーは、時として暴走することもある、時として間違える事もある
若いからやり直しもきく
でも、いきすぎれば俺の様に
ずっと昼間の高校に戻れる夢を見て後悔を背負う事もある
誰でも壁にはぶつかる
在り来たりな言葉だが、乗り越えられない壁はない
そして、その苦しんだ経験は、次の壁を乗り越える為の栄養である