小学3年生、少年野球をはじめて1年、徐々に友達が出来て来た頃、初代ファミコンが流行りだした。
普段何かを買ってと言わない僕ではあったが、この時ばかりはどうしても欲しくて母親に聞いてみた
すると『お父さんに聞いてみなさい』とわかりきった答えが返ってきた。
しかし、今回ばかりはここで引き下がるわけにも行かず
おっちゃん(父親)に『ファミコンが欲しいんだけど・・・』と言った
何故にこんなに言いづらいものかと言うと
母親は朝から晩まで働いていて、何かを買ってなど言いたくもない
父親は絶対政権だ
食べ物の好き嫌いを言うと、鼻をつままされ絶対に食べさせられる
ジャッキー・チェンの映画やプロレスを観たあとは必ず闘わせられる
もちろん手加減はしているだろうが、ギブアップは絶対にさせてくれない
『根性なし』と言われるのが嫌だったからだ。
なので、終わりはいつも母親に『いい加減にしなさい、脚の色変わってるじゃないの❗』であった。
この【家族】と言う小さな社会の中にハッキリとした上下関係があるなか『買って』と言う言葉はかなりな勇気であった。

ところが、思いもよらない言葉が返ってきた
『いいよ👌買ってやるよ』
おっちゃんが天使に見えた🎵
そうだ、世の中なんて意外に勇気を出せば思い通りに行くもんなんだ🎵と確信してしまった。

『ヒロ、ただ条件がある』
え、小3に条件を突き付けるおっちゃんは、正しくただ者ではない
『スイミングはじめて3年だろ?1500㍍を30分以内に泳いだら買ってやる』
言わなきゃ良かった😢
だいたい1500㍍何て距離泳いだこともないし、しかも30分以内って時間まで指定してきている。
今の時代ならパワハラか虐待とかにならないか?

でももちろんこの頃には普通だ
何より、挑発されて受けて立たないのは、男の子としてどうなのだ?

ともあれ、1500㍍30分を挑戦することになった。
結果
29分代前半で泳ぎ切った
でも、泳ぎ切った時には両腕は1ミリも動かなくなっていて、正直ファミコンなどどうでも良い、このままではリモコンも持てない
くそっ、でも負けなかったぞ

数日後、約束通りファミコンを買って貰ったが、それ以上にあの日を境に僕は変わって行くのであった

先ずスイミングは着々とタイムを伸ばし、学区内では敵なし、一気に大会新記録のタイムもだし、本人の気持ちより周りの期待が大きくなっていく
少年野球でもまだ当然レギュラーに程遠かった子が、誰よりも早いスイミング、コントロールこそ無いものの、ボールの早さは驚くほどで、マラソンをしても永遠のスタミナがあるかの様に、ずば抜けていた。

自信とは結果である
結果を、出したことない子に自信を持てと言っても無駄な話だが、結果が出る子に自信を持つなと言うのも無駄な話だ

つい1.2年前まで絵に書いたようないじめられっ子が、今度は同級生にチヤホヤされる
勉強何て出来なくても、小学校では運動が出来ればヒーローだ
そして悪い見本はすぐ近くにいる
最初にタバコを吸ったのは4年生だ
何故ならば、そこにタバコがあったからだ
最初にバイクに乗ったのは5年生だ
何故ならば、そこにバイクがあったからだ
色々な事が大人以上に出来るようになってきて、大人のやっていることに興味を持つなと言う方が無理な話だ。

スイミングの基礎体力に野球での総合力、おまけにプロレス好きで、毎日デェービィーボーイズスミスを目指し肩の筋肉を鍛えていた。