静かな田舎町に住むサチコは、夫のタケシと結婚して十年になる。タケシはとても個性的な人で、その独特な趣味にはいつも驚かされていた。最近の彼の熱中しているのは、江戸時代の衣装集めであった。

ある日、タケシが大喜びで家に帰ってきた。「サチコ!見てくれ、これはまさに探し求めていた赤烏帽子だ!」彼はそう言って、真っ赤な烏帽子を誇らしげに見せた。

サチコは一瞬呆然とした。赤烏帽子は確かに珍しいものかもしれないが、普通の人にはその価値がわかりにくい。しかし、タケシがこんなに喜んでいるのを見ると、彼の幸せを優先することにした。

「素敵ね、タケシさん。本当に嬉しそう。」サチコは微笑んでそう答えた。

タケシはさらに嬉しそうに、「これを使って、今度の村祭りで衣装を披露するんだ。」と話した。

村祭りの日がやってきた。タケシは赤烏帽子をかぶり、他の江戸時代の衣装も身につけていた。その姿はまるで時代劇から飛び出してきたかのようだった。サチコはその姿を見て、心から誇らしく感じた。

村の広場に集まった人々は、タケシの姿を見て驚きと感嘆の声を上げた。「タケシさん、すごいね!」「その赤烏帽子、素晴らしいわ!」彼の独特な趣味が、こんなにも多くの人々を楽しませるとは思わなかった。

サチコも一緒に村祭りを楽しんでいたが、ふと気づいたことがあった。それは、タケシが自分の趣味に夢中になることで、周りの人々もその喜びを共有しているということだった。彼の好きなものが、他の人々にも幸せをもたらしていたのだ。

祭りの後、サチコとタケシは家に帰った。タケシは疲れたが、満足そうな笑みを浮かべていた。「今日は本当に楽しかったな、サチコ。皆も喜んでくれて、俺も嬉しかった。」

サチコはその言葉に頷き、「そうね、タケシさんの好きなことがみんなを笑顔にしているのを見て、私も嬉しかったわ。」と答えた。

その夜、サチコは思った。「亭主の好きな赤烏帽子」ということわざがあるように、タケシの好きなものが自分たちの生活を豊かにしていることを改めて感じた。夫婦はお互いの趣味や興味を尊重し合い、共に幸せを築いていくことが大切だと。

サチコは心の中で、これからもタケシの好きなことを応援し続けようと決意した。それが二人の絆をさらに深め、豊かな人生を送る鍵だと信じていた。

そして、タケシの赤烏帽子は、彼の個性と情熱の象徴として、二人の生活を彩り続けるのだった。


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