秋の夕暮れ、大学のキャンパスは赤や黄の落ち葉で彩られていた。アキラは図書館の自習室で、机に山積みされた参考書とノートを前に頭を抱えていた。来週には大事な試験が控えている。しかし、アキラは勉強に本腰を入れるのが遅すぎたことを痛感していた。

彼は友人たちが勉強に励む中、遊びやサークル活動に夢中になっていた。試験勉強を始めたのはわずか数日前のことだった。参考書のページをめくるたびに、理解できない部分が山積みになり、不安が募っていった。

その夜、アキラは深夜まで図書館で勉強していた。集中力が途切れ、時計を見ると既に午前1時を過ぎていた。彼は大きなため息をつき、帰宅の途に就いた。道すがら、街灯に照らされた菊の花が咲いているのを見つけた。菊は秋の象徴であり、その美しさに心を癒されながらも、彼はあることわざを思い出した。「十日の菊」。

このことわざは、必要な時期を過ぎてから行動しても無意味であるという意味を持つ。アキラはその意味をかみしめ、後悔の念に駆られた。彼はもっと早く勉強を始めるべきだったのだ。

次の日、アキラは教授に相談することにした。教授はアキラの状況を聞き、優しく微笑んで言った。「アキラ、確かに君は遅れている。でも、諦める必要はない。今からでもできることを全力でやりなさい。結果がどうであれ、その努力は無駄にはならない。」

その言葉に励まされ、アキラは残りの時間を全力で勉強に費やす決意をした。友人たちにも助けを求め、わからないところを教えてもらった。彼は睡眠時間を削り、ひたむきに勉強を続けた。

試験当日、アキラは全力を尽くし、なんとか問題に取り組んだ。結果がどうなるかはわからなかったが、彼は自分の努力に満足していた。試験が終わった後、彼は再びキャンパスの菊の花を見つめながら、遅れを取り戻すために尽力した自分を誇りに思った。

数週間後、試験の結果が返ってきた。アキラは予想以上に良い成績を収めることができた。教授は彼にこう言った。「アキラ、君はギリギリのところで立ち直った。『十日の菊』のように遅れたけれど、君の努力は無駄ではなかった。これからは早めに準備することを心がけなさい。」

アキラは深く頷き、その教訓を胸に刻んだ。彼は今後、何事にも早めに取り組むことを誓った。そして、その後の学業や人生の様々な挑戦において、彼は「十日の菊」を教訓に、常に前もって準備することを心がけた。


ことわざから小説を執筆
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