不倫夫・そして標的である不倫相手の出勤は
既に確認している。
前日の打合せで、提案があった女性の
実家マンションを朝から監視中。
両親と思しき2人は、確認済み。
依頼者と合流するのは16時。
それぞれの勤務先付近、追加で監視中の
実家、分散して周辺で待機する。
最終的な確認を依頼者とする。
1.相手の挑発に乗らず、事実関係の確認に
終始し、決して暴力などの行為にならぬこと。
1.事実関係を確認にした時点で、謝罪を要求、
うっ積した想いを全て吐き出す事。
1.相手へ怒りを口頭で吐き出した後、具体的な
損害賠償を要求する事。
不安がピークなのか、何度も飲み物を
飲みながら、質問を重ねる依頼者。
17時過ぎに、実家で待機しているJVstaffから
父親らしき人物の帰宅の連絡が入る。
実家は、不倫相手が事実関係を否定した際に
本人確認を行う為の準備。
交渉の様子によっては、ここに訪問の
可能性もある。
18時を回った頃、ほぼ同時に私のスマホ
2台が着信を知らせる。
それぞれの勤務先から不倫夫・不倫相手
共に退勤してきたようだ。
夫は会社の同僚と共に、帰宅路とは
真逆方向へ向かい、予定通り懇親会のある
ビルへと消えた。
一方、標的である不倫相手、近くのスーパーと
本屋に立ち寄り、マンション方向へ。
依頼者も、予定していた接触場所付近で
不倫相手の車両を待つ。
そして・・・・・・
その時はやってきた。
女性の車両が近づく。
買い物袋を下ろすために、後部座席のドアを
開けたと同時に依頼者が近づく。
『すいません、○○さんですよね。』
交渉が始まった。
声をかけられた不倫相手は、後部座席の
扉を締めようとしながら、振り返った。
恐らく、先に依頼者の姿を確認した模様だ。
『どなたですか？』
『○○さんご存じですよね？
これ貴女ではありませんか？』
『・・・・・ハイ。誰ですか？』
『私、△△の嫁です』
『私になにか用ですか？
こんなところで迷惑なんですが。』
『そうですよね、事実を確認したい
だけなんですが、この画像はあなた
で間違いないですか？』
『否定されるならば、それも構わない
ので○○の職場に確認をさせて
いただきます』
『・・・私です。勤務先も知っている
んですか？』
『調査会社の報告にありましたよ』
『・・・』
『△△さんの奥様も貴女とお話が
したいのですが、幸い今日は彼が
懇親会で不在なので良いかと思い
まして。場所を変えますか？それとも
ここで話しますか？』
『・・・』
『私としては、どこでも構わないんです
場所を指定して頂ければ、そこに
伺いますが、日時を変えてまでお話を
する必要もないと思いますので、こちら
としては、強要もしませんから』
『わかりました』
『場所はお任せしますんで、貴女の車の
後ろを付いていきますから』
『わかりました』
彼女に見せた画像は、不倫夫と二人で
じゃれあっている画像。
少なくとも交際していることは
否定できなくなった。
彼女の車は、５分くらい先にある
カラオケ店へと向かった。
その頃、懇親会の真っ最中の不倫夫は
会場にて監視中である。スマホを確認して
いる様子もない。
交渉は次の場面へ。
不倫相手の選択したカラオケ店。
無言のまま、従業員に促され入室。
ドリンクを注文し、さらに沈黙の時間。
飲み物が持ち込まれた後、
から
言葉をかけた。
『先に確認をしますが、強要してこちらに
お連れしたわけでもなく、もちろん危害
を加えることもありません。
帰りたければ帰っていただいて
結構です』
『・・・・・・・』
女性の前に、不倫夫と楽しく戯れあう姿や
マンションの駐車場から荷物を運ぶ
二人の姿を撮った画像を並べた。
『改めて確認しますが、ここに映る
この女性は貴女で間違いないですね。
間違いなければ、この男性はどなたで
しょうか？』
『・・・・ここに撮影されているのは私で
間違いありません。
△△さんは離婚されるつもりだと
聞いてます』
『妻子がいることもご存知だったんですね。
離婚していないことも知って
いたんですね』
『夫婦はとうに破綻していると、
言われました。違うのですか？』
『離婚もしてなければ、
破綻もしていません』
『・・・・・・・・・・・・・』
『夫婦が破綻していたとなにか証明
できるんですかね』
『・・・・・・・・・・・・・』
『もしかしたら、あなたを誘惑する
ために彼が嘘をついたのかもしれ
ませんね』
『・・・・・・・・・・・・・』
『少なくとも、彼に騙されたかもしれ
ないが、妻子のある男性と関係を
持ったことも、一緒に住んでいる
ことも間違いですね』
『はい、でも・・・』
『事実が確認できれば、別にそれ
以上に二人の関係を詮索する
必要はないので、それで良いですか？』
『はい』
『ならば、事実関係について間違いない
ということでこの書面に署名と捺印を
お願いします』
『・・・・・』
『これって、どういう意味ですか？』
『ここに記載している通りです。
不倫夫といつからか知りませんが、
不適切な関係になり、一緒に暮らして
いた事実を認めますというものです』
『・・・・・』
『貴女はどんないきさつがあれ、妻子
のある男性と同居していた事実が
あります。
先ほど認めている内容を
書面にしただけであり、それ以上でも
それ以下の記載でもありません。
拒否するなら拒否しますと書いて
いただければそれで結構です。』
『事実がないと、言われればそれを
確認するしかないですから』
『どういうことでしょう？』
画像を指差し
『これが貴女であるか、確認する
だけです』
『わかりました。署名します。』
用意した書面に不倫相手は署名し始めた。
記載されている内容は、不倫夫との関係が
いつ頃から始まり、その事実を認めるという
簡易なものである。
全ての記載が終わったところで、
『事実関係が確認したなら、無駄でも
謝罪をくらいしたらどうですか？』
『奥様に不快な思いをさせて
すいませんでした。
でも、私 本当に知らなかったんです。』
『この期に及んで、まだそれ言いますか？
貴女、旦那にLINEで早く別れてと
聞いてない？』
『・・・・・・・』
依頼者は自身のスマホから不倫相手に
写真を見せて
『これ見て！』
『・・・・・・・すいません。』
『貴女さ、謝罪する気持ちが本当にある？
下向いたままで、目線も合わせず幼稚園児
みたいにふてくされた顔で謝罪してると
言えます？』
『・・・・・・』
『気持ちこもっていない、謝罪しても
伝わらないからね。
子供じゃないからわかっていると思うけど、
慰謝料請求するから、６００万。
持ってるよね。』
『そんな大金ありません。』
『貴女のバッグだけで幾らになる？』
『失礼ですけど年収はどのくらいですか』
『900くらいかと思います。』
『貴女の場合、それだけじゃないでしょ』
『何もないですよ、ローンもあるし。』
『いくらなら払うのよ』
『２５０万くらいなら分割でお願いします』
『無理だね、いいよ裁判でも負けることは
ないし、貴女の事務所にもバレるかもね。』
『会社は困ります、２５０万じゃ無理ですか？』
『無理でしょう。』
『・・・・・・』
『いくらなんでも虫が良すぎるでしょ。
親にでも支払ってもらいますか？』
『・・・・・・』
話は小康状態になりつつある
『そういえば、たまに出張されてますよね
会議ですか？』
『・・・・・・はい？』
『へぇ～いい身分ね、目的は仕事以外
うちの夫は知っているのかしら』
『・・・なにかご存知ですか？』
『？何をですか、知りませんよ』
・・・・・・・続く
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