・・・それからしばらく経った後
茂みの奥深く爛々と光る6つの目がピカリと輝いたその瞬間・・・
Mr.プラム
『たぬったぬたぬ~!』(兄貴!あんガキが来やしたぜっ)
Mr.バンブー
『たぬたぬたぬっ!!』(黒崎はいないな?よっしゃ~確保だ~!)
Mr.パイン
『たぬたぬ~~』(おらっ!弁当寄越せや~)
ぽふっ
新の顔面に一際体の大きなタヌキが張りつくと自慢の肉球でぽかぽかと連打しました。
ぽかぽかぽかっ
「わあっ!イテッ・・・痛て~よ・・離せ!・・またお前らかっ!?ああっ・・こらっ!返せ~~!俺の弁当~~!!」
その日以来・・・新は遭遇した見た目だけはキュートな兇悪タヌキトリオに弁当を狙われるようになってしまったとさ・・・
めでたしめでたし
「う~~んっ・・・う~~ん・っ・・・」
「・・・らた!・・・新!」
柔らかく揺さぶられた新は、はっと正気にかえった。
「・・・・黒崎・・・さん?」
目を開けると壱哉が心配そうな面持ちで自分を覗きこんでいた。
「どうした?・・・随分うなされていたようだが・・・大丈夫か?」
不安そうな面持ちの壱哉に、未だ寝ぼけ眼のまま新はなんとか頷きかえした。
「あ・・うん、平気。・・・・心配かけてごめん」
夢見が悪かっただけなのに、壱哉を心配させてしまったことを申し訳なく思いながら、謝罪する新に壱哉はやっと微笑んでくれた。
「なんだか狐につままれたような顔をしているぞ?」
(『狐』じゃなくてホントは『タヌキ』だけどな・・)
内心突込みをいれた新の脳裏に夢で見た光景がまざまざと蘇った。
(しかもな~んかメルヘンつーか・・・!・・・そういえば・・なんか悪魔っぽいヤツも出てきたけど・・・あれってもしかして)
新は以前、壱哉の背後に垣間見た『悪魔』・・ネピリムというのだと後で壱哉から聞かされたのだが――を思い出した。
!!!
その瞬間、ゾワリと怖気が振るった。
『・・・まったく、新を襲うとは不愉快な連中だ・・・犬畜生にも劣るヤツらだ・・思い知らせてやる』
そう一人ごちた壱哉の声の残響を思い出した新はごくりと生唾を飲みこんだ。
(もしかして・・黒崎さん・・・マジであいつらを『タヌキ』にしちまったんじゃ・・・)
「新?・・・どうしたんだ呆けて・・やっぱり変だぞ?」
!!
(怖くて聞けね~よっ)
しばし逡巡した後、新はおそるおそる切り出した。
「あのさ・・・黒崎さん・・・タヌキのことなんだけどさ・・」
すると壱哉は少し驚いた顔になった後、不敵な笑みを浮かべた。
「なんだ、勘のいい奴だな。もう気付いたのか。・・今朝は冷えるからな・・吉岡にタヌキ汁を作ってもらったぞ」
!!!!
「タッ・・タヌキ!?そんなもんどこで!?」
「ふふふ、それは聞くのはヤボというものだぞ?はははははは」
高笑いする壱哉を前に固まる新に成す術はなかった。
「さあ・・冷めないうちに吉岡特製『タヌキ汁』をたんと食え」
!!!
「ひぃっ・・・・うきゃ~~~~!!も、タヌキは勘弁してくれ~~~」
目の前に差し出されたモザイクの掛かったお椀の中身を覗き込んだ新は絶叫した。
「う~~んっ・・・う~~ん・っ・・・」
!!
そして新は自分の絶叫に驚き目を覚ましたのだった。
汗だくで隣りを見ると、平和そうに眠る壱哉の姿があった。
「はあっ・・・・なんだ夢かよ・・朝っぱらから疲れる夢だぜ・・それにしてもタヌキ汁はないよな・・・へへ」
あまりの馬鹿馬鹿しさに笑いを漏らしたその時、壱哉がぼそりと呟いた寝言を聞いた新は一瞬で固まった。
「・・む~~成敗・・成敗だぞ・・ネピリム・・ムニャ・・」
「・・・・・・・・・・・」
(成敗って・・・黒崎さん。やっぱあんたって・・・)
「あ・・・も、いいや・・知りたくねぇ・・」
聞かなかったことにした新の中でまた新たな『壱哉のぽんぽこぴー伝説』が追加されましたとさ・・・
おしまい