東野圭吾は本当にすごいなと思う。

これだけ作風の違う作品をよくもまあ何作も書けるものだなあと感心してしまう。

手紙」もそんな一作です。

弟思いの兄(剛志)が弟(直貴)を大学に進学させてやりたいという動機から強盗を犯し、そしてその家の老夫人を刺殺してしまうところから物語は始まります。

「兄さんのことは隠しておこう。おまえのことは突然両親が亡くなった。・・・」「嘘をつくのは嫌だろうが世の中には隠しておいたほうがいい・・・」「面会には行ってやってるのかい?」「いや・・・・」「よくねえな」「恨んでんのかい、兄貴のこと」

『前略、元気ですか。この前は手紙をありがとう。直樹から手紙をもらうのは久しぶりだったから、うれしかったよ。・・・』

事件を起こした当人とその家族が立たされる環境と心境の変化を刑務所のなかの兄との間で交わされる手紙を挿入することで絶妙に描き出しています。

僕は直樹が働いている会社の社長が直樹に向けて語るところが気に入っています。
「君はこう思っているだろうね。差別されている、と刑務所に入ったのは自分じゃないのに、どうして自分がこんな扱いをうけなきゃならないんだ、と」「差別はね、当然なんだよ」「・・・君は自殺については容認派かね」「・・・人には繋がりがある。・・・それを無断で断ち切ることなど誰もしてはならない。だから殺人は絶対にしてはならない。そういう意味では自殺もまた悪なんだ。・・・社会的な死を選んだわけだ。・・・君のお兄さんが犯した罪なんだ」

ここから先の展開には涙が止まりませんでした。殺人犯とその家族、その家族が負う社会的な差別、殺人犯にとっての更生とはなにか?兄と弟が交わす最後の手紙。ぜひ最後まで読んでほしいと思います。


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