私はヒロカを送り出した翌日から目標であった飛行機免許に専念した。
数週間飛んでいなかったので感覚をつかむのに苦労すると思ったが、体で覚えた事は簡単には忘れないんだと実感した。
この数週間の遅れを取り戻すために1日2回、午前と午後飛んで飛行機漬けの毎日を過ごした。
Logbookによると、米国連邦航空局・自家用操縦士免許(飛行機)を取得したのは9月28日になっている。
合格後の翌日からは、試験を受けた機種がセスナ152と言う2人乗りなので4人乗りのセスナ172に乗るための練習で教官と数時間の訓練をした。
セスナ172は152に比べると一回り大きく、シートに座って座面調整を一番上にしても計器板のあるダッシュパネルが高くて前が見えない。
こんなに前が見えなくて大丈夫かと思ったのだが、離陸するときは上向きに飛ぶので空が見えれば良いわけだ・・・
着陸の時は上から滑走路を見ているのだから非常によく見える。
何の問題も無かった。ただ、操縦桿とラダー(足踏)は152より少々重かった。
セスナ172と152の一番大きな違いは、短期語学留学の女子大生を3人乗せられるか、1人しか乗せられないかだ。
これは非常に大きな違いである。
女子大生は1人では食いついてこないが3人だったら「乗せて乗せて~♪」と言う具合になるからだ。(あくまでも一般論であり、私が女子大生を乗せて飛んだと言う記録はLog Bookには無い)

免許取得後、カスミのアパートを訪れた。
アパート前にカスミの車が駐車してあったので安心した。
何故、自家用操縦士の免許を取るまでカスミに会わなかったのかは私も疑問だが、中途半端に自家用操縦士の免許を諦めたくなかったので試験に受かるまでは飛行機に専念したのだと思う。
開口一番、カスミが「ヒロカさんとヨセミテに行ってきたんだって?」
クニからの情報なのか、ナオコからの情報なのかわからないが・・・
「彼女は日本に帰ったよ」・・・・・
無言でいるカスミ・・・・・
「俺と空を飛ぼうぜ!」
「受かったの、飛行機?」
私はあの電話のあとから今日までの事を大まかに話した。
それから1週間後、私はパイロットとして初めて女性を空へ案内した。
免許取立ての訓練生に毛が生えたような奴の横に乗るのだからカスミもさぞかし不安と恐怖があっただろう。
夕方離陸して1時間弱ぐらいで着くサンタ・ポーラ空港で食事をしようと思い着陸したのだが、この空港のレストランは午後5時で閉店になっていた。
その後再び空の上に行き短い時間だが空中デートを楽しんだ。
今思えば、この飛行機でのデートがカスミの中で良い思い出になってくれていれば良いのだが・・・・・
その後、どこのレストランで食事をしたかは記憶に残っていないのだが、あのダウンタウンの綺麗な夜景を二人では見ていないという記憶とVan Nuys空港に戻って着陸した時にカスミが私の名前のあとに「ありがとう」と、一言呟いたのは、はっきりと覚えている。