今回当ブログが取り上げるのは久々のバンダイ ガンプラシリーズもとい、ついにマクロスシリーズ初の「HG」シリーズとして発売された、OVA「マクロスプラス」(1994)の主役「イサム・ダイソン」の駆る「かわいコちゃん」こと、待望の「1/100 YF-19」と相成ります。
確かに航空機プラモメーカーとして名高い「ハセガワ」から1/72&1/48で飛行機形態「ファイター」でのプラモ化は成されていましたが、「バトロイド」に関しては「VF-1」と「VF-0」止まり。
なので、他キャラクターアイテムと「並べて楽しめる」スケール的にドンピシャな「YF-19バトロイド」が手に入るってだけで、今回の「HG 1/100 YF-19」は個人的にマストバイアイテム!その発売日を今か今かと楽しみにしていたのです。
という訳で現物を手にニコニコしながら帰ってきた訳ですが、改めてパッケージを見直してみると…このボリューム感って、まんま「プレバン」専売の「サーバイン」とか「バイファム」「ドラグナー1」だよね?
流石は「マクロス」タイトル、かつ2019年5月に放映された「発表!全マクロス大投票」で登場メカ部門1位に輝いたのは伊達じゃない!ってトコか。
よくもまあ、一般販売で店頭に並ぶ事が出来たなあ…と感慨しきり。
関係各位に感謝しつつ、早速いつものルーチンに沿って造り始めていくとします。製作中に流すヘビロテ用映像は、もちろん「マクロスプラス MOVIE EDITION」。
そして、菅野よう子氏によるBGMからスパロボでもお馴染み「Dog Fight」(羽田健太郎氏による初代マクロスの名BGM「ドッグ・ファイター」に敬意を表したかのようなタイトルがグッと来ます)&ドライブ中に聞くとハイテンションなトリップ度合がヤバい「Information High」&「SANTI-U(Version 1)」を迷わずループチョイス。
今回は面積的にマーキングシール率が高いためツヤ消クリア吹きも敢えて無。「パチ組・ガンプラマーカー」な何時ものお気楽極楽対応で、サクッと作成していく事に致しましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――――
…さて。ここからはまたも何時も通り、作成の合間に「マクロスプラス」発表当時の状況やら何やらを、当時ただの一某玩具メーカー社員だった自分の素直な視点による「極めて個人的な備忘録」として語ってみようと思います。
純粋なキットレビューのみをご所望の皆様には誠に申し訳ない気持ちで一杯なのですが、こんな有様ですのでブラウザバック推奨。このまま読み続けるにしても「―――」まで飛ばして頂けますとこれ幸い。備忘録だから仕方ないね。
何しろ当に完結した本作ですので、ネタバレ前提・当時のライブ感を直接お届けすべく敢えて何時もの裏付け無・特定個人&団体への非難の欠片も無い、愛故のお気楽極楽与太話。
それでも知ってもらう事で見方が変わり、より「素晴らしく(カッコ良く)」見る事が出来るかも?だといいな。
という訳で、時間のある方は何卒寛容にお付き合い下さい…それでは、どうぞ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「マクロスプラス」が発表された1990年代。個人的には「あの」バブル時代の残照として、主にアナログ電子機器「AV(オーディオ・ビデオ)」最盛期(そしてデジタル技術への急速な転換期)として捉えています。
ハード的には、「MD(ミニディスク)」(1992)&「DVD」(1996)の登場。既に普及していた「ポケベル」から「PHS」(1995)への転換。そして何よりゲーム機が「プレイステーション&サターン」(1994)に次世代進化した時代。
学校or会社帰りに「GEO」や「TSUTAYA」に直行して新ソフト探し。帰ってからタイマー掛けといた「TVの深夜番組(※)」(深夜アニメでは無い)を流し見した後、レンタル品を楽しむ。ついつい億劫になり期限過ぎに返却すると追加料金にビックリ!
※…「やっぱり猫が好き」「カノッサの屈辱」(1991)等、主にフジテレビを主とした深夜番組全盛期でもありました。
…なんていう日常が繰り広げれていました。つまり「遊びの幅」が広まった事で、各々の「AV(オーディオ・ビデオ)」に関係する各メディアによるユーザーのシェア獲得争いが激化。
その結果、様々な「ソフト(作品)」が大量に量産されては消費されていくという、中々に刹那的な状況が起きていたのです。
特に先に話の出ていた「ビデオレンタル」に関しては、ただそのためだけの映像作品が制作されるという「TV&映画を食う」ような状況すら既に起こり始めていました。
俗に「Vシネマ」と呼ばれたこのムーブメントに対し、元々「OVA(オリジナルアニメビデオ)」というジャンルを持っていたアニメ業界もそれに便乗します。
というのも「TV&映画」ではニッチかつ規制が厳し過ぎ、次第にシェア確保が出来なくなりつつあったからです(※)。
※…夕方の再放送枠が縮小され、4クール1年から2クール半年放映がデフォとなりつつありました。90年代後半には、一気に深夜枠に追いやられるのを目前に控えていた時期だったのです。
よって当時のOVAでは、ある程度の集客が見込める「かつての人気作のリメイクor続編」が続々と発表される事となりました。「ロボット物」という括りの中で数例を挙げると…
・機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY(1991)
・ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日(1992)
・マクロスプラス(1994)
・真ゲッターロボ 世界最後の日(1998)
・マジンカイザー(2001)
※「新世紀エヴァンゲリオン」(1996)
って、何?2020年代現在においてですら、バンダイ&グッスマからこの当時の新製品が続々と発売されてるというこの異常事態は!!
その2作品こそ、TV番組「マクロス7」とOVA作品「マクロスプラス」。処が盛り上がったファンの心情とは裏腹に、結果だけで言うと本2作品についてはどちらも商業的には失敗に終わってしまったようです(主力商品玩具たる「完全変形 1/72 ファイアーバルキリー」が福袋の常連となった事・その後 長らく続編が発表されなかったから事等から)。
尤も、アミノテツロー氏による「熱い非戦闘主義」&渡辺信一郎氏による「大人的演出で魅せる男の意地の張り合い」演出は、確実に観る者の心の奥底に熱い炎を灯したようです。
その中でも、今回の本ネタたる「マクロスプラス」YF-19については、特に「最後の手描き最高峰の板野サーカス」の名バイブレイヤーの一つという視点から見逃す事は出来ません。という事で、その辺りを簡単に解説してみたいと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【板野サーカスという画期的な映像表現の「発明」】
太古の昔から「飛ぶ事」に憧れていた「ヒト」にとって、飛ぶ事の出来る道具「飛行機」は、ただそこにあるという「存在」だけで充分魅力的なガジェット「ビーグル」の1つです。
ただ、その「飛ぶ事」の気持ち良さ・カッコ良さと言った「快感」=「空戦」を「映像」で感じさせる事は中々に難しい…と言うのも「飛ぶ事」にはどうしても「速さ」&「空間把握」が必須な訳ですが、ヒトの認識能力自体に限界があるからです。
特に地上から見た「定点カメラ」からだと(当たり前ですが)「近くだと速過ぎ」て目で追えず、「遠くからだと遅く、小さく」見えてしまい、その魅力が「映像」では全く伝わってこないからです。
これを防ぐためには「①被写体(自機)を中心に置き、背景を流して撮影」するか「②被写体(自機)自体にカメラを置く」ガンカメラ方式でしか対処する事が出来ません。
①は背景・②は敵機という「自機に対しての比較対象物」がある事が共通項ですが、前者①は「遠大な背景の準備」、後者②は「被写体(飛行機)自体が見えない」という、各々デメリットが発生します。
しかも①②どちらも「ヒトの認識能力」範囲内で派手なドッグ・ファイト「空戦」を行おうとした場合、約2〜300km/h前後が限界。これは第一次世界大戦前後の戦闘機や、現在のF1やMotoGP等の車・バイクと大体同じ速度域となります。
つまり「映像」にCGが使われるようになる1990年代まで、音速に近い現代の「ジェット戦闘機」のドッグ・ファイトを「映像」で魅力的に伝える映像手法は「ほぼ無かった」と言っても過言では無かったのです。
CGの無い1990年代以前のこの時代にそれを行うには「実機にガンカメラを積んで撮影する(例:ファイナル・カウントダウン&トップ・ガン等)」か「SFXを駆使する(例:スター・ウォーズ等)」位しか方法はありませんでした(※)。
※…「スター・ウォーズ」では、敢えて認識し易い第一次世界大戦中の戦闘機のガンカメラ映像を参考とし、SFXを駆使した映像作りを行ったそうです。
しかしそのどちらもべらぼうに予算を食うため、ハリウッド映画のごく一部位でしか実現化する事は出来ませんでした。
それでも「テレビ漫画」と揶揄されていた各映像作品において、魅力的な「飛行機」という「ビーグル」に何とか魅力的な「空戦」させようと、当時のスタッフも様々な努力・工夫を凝らします。
アニメなら膨大な手間をかけた「背景動画」を。特撮なら狭い撮影所内で出来る限り広大な「ホリゾント」を。
でも少ない予算をやりくりし出来上がってくるのはほんの数秒…これではとても間が持ちません。なので「空戦」以外の別のシチュエーションで「飛行機」を魅せる対処を施す事となりました。
その策こそ「発進シークエンス(例:サンダーバード等のITC作品)」であり「すれ違い様の一斉射撃&やられメカとしての爆発シーン(例:東宝&円谷等の日本特撮)」であり「体当たり(例:科学忍者隊ガッチャマン&宇宙戦艦ヤマト等の日本アニメ)」等の当時多用された定番演出だったのです(※)。
※…(あくまで個人的に)空を「飛ぶ事」という「状況(シチュエーション)」に酔っていただけで、真の意味で派手なドッグ・ファイト「空戦」を楽しませてくれた映像先品は、ここまで殆ど無かったのです。
そんな最中、よくある一玩具販促アニメにおける「とある」一描写が、一部マニアの間で話題となります。
これまで直接的かつ瞬発・単発的な爆発演出としての「決め技」としてしか使われていなかった「ミサイル」。
これを「背景動画描くのが大変なら、手前と奥に同じ速さでミサイル飛ばしゃいいじゃん」とばかりに「自機と共に動く複数の比較対象物」として描く事で「どんな視聴者にも速さと空間把握をさせる」事に成功(※)。
※…もちろん誰もが出来るような代物では無く、むしろ類稀なる圧倒的センスが必要不可欠。
その後、1982年の「超時空要塞マクロス」の主役メカにして河森正治氏による名デザイン「VF-1バルキリー」という「名優」を得、この新たな映像表現により、派手なドッグ・ファイト「空戦」を視聴者全員に「体感」させる事となります。
この新たな映像表現は、いつの間にか「板野サーカス」と呼ばれるようになり「劇場版 超時空要塞マクロス〜愛・おぼえていますか」(1984)を以て一つの頂点へと達します。「これ以上の板野サーカスは流石に無いだろう…」と思われていたその10年後。
―――――――――――――――――――――――――――――――
この「マクロスプラス」における「YF-19」&「YF-22」の試作機競合という「燃える」シチュエーション自体、アメリカ空軍の先進戦術戦闘機計画(ATF)を元ネタとしている事は明白。
そんな「YF-19」がついに完成。早速、差替変形による3段階変形に準じて見て行くこととしましょう。まずは「ファイター」形態から。
ここだけは透明パーツにしてほしかった…ここの質感が違うだけで、高級感がグッとアップするからです。今回はメタリックレッドで誤魔化しましたが、何れはおゆまる等を使って透明キャストに置き換えてみたい処。
今回のHGに関しては、ハセガワのファイタープラモと比較しながら作ってみると、その表現解釈の違いが判って凄く面白いです。例えば翼面比較してみると、全く違う解釈で製作されている事が一目瞭然。
そして最後に本目的たる「バトロイド」形態。1/60で言うと、
② 最も劇中イメージに近いボリューム感が魅力の「アルカディア版」
③ 最も後発故に、その完成度が光る「バンダイ」版
この中で②「アルカディア」版に最も印象の近い、ボリューム感のあるマッシブなフォルムとなっています。
それはさておき「群雄」と同じ頭部サイズだとすると「バンダイ1/72 完全変形VF-25メサイア・バルキリー」に流用可能という事になります。
引いては「バンダイ 1/144 ファイヤーバルキリー」とも同じ頭部サイズでも有るという事。
つまりこれは、もう一個HG「YF-19」を買って…
①何はともあれ、まずは「YF-19」の「イサムスペシャル」化
②スーパーパック搭載後、自重で崩壊してしまった前進翼版「メサイア改」のリベンジ
③1/144 頭部を流用し、小改造での「HGファイヤーバルキリー」の実現化(※)
④「メサイア」+「YF-19」のニコイチによる「デュランダル イサム機」のセミスクラッチ
をしろって事なのだろうか…色々と思惑渦巻くHG「YF-19」レビューでした。