以前の空想特撮映画「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」同様、発表時は奇をてらわずに素直にその姿を見せてくれるとは思っておりましたが…。
まさかここまで惜し気も無く、主演「池松 壮亮」氏を初めとする基本スタッフィング、しかも「サイクロン」まで見せてくれるとは。
逆に言うと「シン・ウルトラマン」では科特"対"関係のマシン・ビーグルは出なさそうっスね…あと公開は2022年3月だと思う(実際は5月でしたね)。
【鑑賞中】
これアレよね?藤岡 弘、氏リスペクトで、歌ってるの池松氏本人だよね。それにしても音楽はまんまオリジナル音源使ってんのかな?現時点では鷺巣 詩朗 氏の圧が全く感じられないぞ…。
…って、あれっ?この「四つ目」のサイクロンって…(※画像はイメージ)
ってオイオイオイ?!何シレッとオリジナル同様ライダーアクション時に「通常サイクロン」紛れ込ませてんのよ!使用バイク増えるのは、もう単純に嬉しいって!!
【鑑賞後】
…取り敢えず、だ。今すぐ本作において「仮面ライダー」と言うキャラクターを表すための「ガジェットデザイナー」を教えてくれよ!
えっ?「シン・仮面ライダー 対 庵野秀明展」合同記者会見…何それ。直近の「庵野秀明展」の方が俄然気になっちゃうじゃん…よし、こっちもチェック!
【鑑賞中】
…そっか。つまりこーゆー事っスね?
・前田 真弘 氏 …主に仮面ライダーのデザイン
・山下いくと氏…主にサイクロンのデザイン
・出渕 裕 氏 …主に怪人の基本デザイン
この3名共同体制でガジェットデザインは進行して行く、と…所々感じたデジャブー、やっぱそうだったんじゃん!これ「対 仮面ライダー」としては、庵野班の取り得る最強布陣なスタッフィングだよっ?!
【鑑賞後】
…ふう、面白かった。さて、早速今回諸処見た感想を纏めてみようと思うのですが…。
まずは微妙なニュアンス差を明確化するために、以降以下のように仮言霊を設定してみます。
▪️元となる作品の設定以降の「全て」を一から作り直す事…【リメイク】
▪️過去作品では再現できなかった「表現」を現代の技術で演出・解釈し再構築する事…【リブート】
この分類は似ているようで、実は全く意味合いが異なります。この微妙なニュアンスの違いだけはキチンと明確化しておかないと、以降語る事が出来ないのです。
んで、本作の立ち位置としては明らかに後者の【リブート】となる訳ですが、それに対する仮面ライダーの【リメイク】例として、実は最高の事例が既に存在しています。
尤も「シン・仮面ライダー」にしても、多かれ少なかれ【リメイク】要素もブチ込んでいかないと「今の時代」に造り出す意味そのモノが無くなってしまいます。
そして庵野監督がおっしゃられている「ノスタルジーは捨てたくない」との言は、一重にこの【リメイク】要素投入の「さじ加減」の事と邪推・愚考する事が出来ます。
ではその「さじ加減」の塩梅は?と言うと、これまた絶妙な事例が別キャラクターコンテンツに存在していたりします。
それが、仮面ライダー初放映のわずか3年後に放映された「宇宙戦艦ヤマト」(1974)の【リブート】作「宇宙戦艦ヤマト2199」(2012)です。
では「A/B」の違いとは何か?
「A」が極力何も足さない純粋な【リブート】だとすると、「B」は庵野監督なりの(「2199」的手法で)良い塩梅での「さじ加減」で【リメイク】して見せた物として捉える事が出来ます。
庵野監督は先にこの2つを世に提示する事で、まずは【リブート】の持つ功罪…「過去作品を知る世代」と「リブート作品で初めて体験する世代」との間に生じる「認識の隔たり」を、世間に認識させたかったのではないでしょうか。
そしてその上で、世論の反響を肌感覚と集計データから察知し、その「さじ加減」の良い塩梅を模索する指針(アンテナ)としているのではないか?と推察しています。
更に、理論上なモノのみに留まらず、非理論=感覚的な処にまで徹底的な熱量を以て踏み込み「認識の隔たりを無くす」という、ある種の決意表明をも示しているのではないかと思うのです。
ちなみに、先に「良い事例」として上げさせて頂いた「THE FIRST」&「2199」の2シリーズには、本作にもガッツリと関われている「とある」キーパーソンが存在します。
それが、怪人その他のガジェットデザイナーの1人「出渕 裕」氏 。
・機動戦士ガンダム0080(1989)
・仮面ライダーアギト(2001)
・仮面ライダー THE FIRST(2005)
そして、宇宙戦艦ヤマト2199(2012)。
何しろ庵野監督よりも先に、片っ端からキャラクターコンテンツの【リブート】物件(はおろか続編まで)に手を付け、10中8・9文句無しの「良い仕事」をこなしてきているからです。
なお庵野監督自身の【リブート】(そしてリメイク度合いのさじ加減)を推察するに辺り、今こそ「ヤマト2199」関連物を全て見直す時。
特に、2013年1月22日に開催された「ヤマトーク」における、出渕監督(当時)と庵野監督の丁々発止のやり取りはメチャクチャ面白いので、時間がありましたらぜひ色々ググって「ヤマト→仮面ライダー」に置き換えて読んでみて下さい(※)。
※…「OPに"とある"有名アニメの手法を持ち込んだ事」「そのOPの出来に全くもって納得いってない事」「島本 和彦 氏とのやりとり」等々(※※)
※※…あと「老後の楽しみにって言ってたのに、ガンダムもヤマトも仮面ライダーもやってズルい!」そして…「ゴジラとウルトラマンをやったら、グランドクロス達成ですよw」の一言には、今見るとハッとします(※※※)。
※※※…なお今回視聴させて頂いた中で、庵野監督が「前田 真宏」氏の以下歴代参加作品
・平成ガメラシリーズ(1995)
・シン・ゴジラ(2016)
・シン・ウルトラマン(2022?)
・シン・仮面ライダー(2023?)
(あと2012年、特撮博物館の「巨神兵東京に現わる」もそうですね)
についてタイトル名までキッチリと紹介されているのですが…コレ全部何かしらの理由で自分が参加してた作品群じゃん?さりげに出渕 氏に当て擦ってない?!と思ったのはナイショ。
処で、今より遥か前の1980年代において、何故かどっちも特撮のプロでは無い、しかし異様に出来の良い「仮面ライダー」そして「ウルトラマン」の【パロディ】作品があったのをご存知でしょうか。
それが、当時最先端のお笑いニューウェーブ「とんねるず」の「仮面ノリダー」(1988)と、これまた当時最先端のサブカルチャーたるガレージキットメーカー「ゼネラルプロダクツ」の庵野版「帰ってきたウルトラマン」(1983)。
片や"大人にも子供にも笑ってもらえる"「おふざけギャグのために」全力で真面目な画作りに取り組み…(※)。
※…【リブート】の持つ功罪「認識の隔たり」を【パロディ】=「お笑い」という手法を以てあっさりクリアしていた事が「仮面ノリダー」の凄い処。当時の第二次バイクブームの一台「GAG50」サイクロンもまた最高でした。
※…それにしても「バラエティー番組の1コーナー」とは言え、あの狂乱なバブル景気の圧倒的勢い&財力で"製作されて"しまった「仮面ノリダー」に対し、庵野監督は当時どう思っていたのでしょうか…ちょっと気になりますね。
共に(当時こんな言語化はされていなかったけれど)どちらも「シリアスな笑い」を生むために必要な「入念な画作り」に妥協しなかった処は(度合いとベクトルは違えど)奇妙な共通点だと思うのです。
それを共に支えていたのは、どちらも原典に対する「多大なリスペクト」…これはもう立派な【リブート】作品だと思います。そしてそれは、実際にその身を以て影響を受けた者でしか体現出来ない物という証明にもなっています(※)。
※…ちなみに、両作品とも後日無事に版権元に認められた点も共通化しています。
何故こんな話をしたかと言うと…アメリカが既に果たした「子供向けキャラクターコンテンツ」の「大人の鑑賞に耐え得る」メジャー作品化。
これを、庵野監督による「シン・~」化で「日本での初実現化」を成し遂げてくれるのでは?と言う「希望」を持っているからです。
日本にキャラクターコンテンツと言う概念が生まれたのが「鉄腕アトム」(1963)のテレビ漫画化をきっかけとするのなら、アメリカのそれは「ミッキーマウス」(1928)なら約30年・「スーパーマン」(1941)なら約20年の開きがあります。
映画「スーパーマン」(1978)で初めて「大人の鑑賞に耐え得る」メジャー作品となったとするのなら、キャラクター先進国のアメリカにおいて「子供から大人まで」楽しめるコンテンツになるまで約40年(37年)の歳月を費やした事になります。
ここでようやくさっきの話に戻りますが…これを実現させるために必要な最低条件こそが、製作者側が「子供向けキャラクター」とバカにせず「多大なリスペクト」を以て作品化する事と思うからなのです(※)。
※…逆接的に言えば、もしキャラクターを「子供向け」と言うだけでバカにしているような人には、この段階でメジャー化へのプロデュース&ディレクションはとても望めません(※※)。
※※…なぜなら、この「大人から子供まで楽しめる」ハードルすら越えられなければ「全世界のヒーロー・アイドル」を目指す事足り得ないからです…ディズニー一連の作品や「アベンジャーズ」「ジャスティスリーグ」のように。
「ウルトラマン」(1966)・そして「仮面ライダー」(1971)が「シン・~」化する事で「子供から大人まで」楽しめる作品となった場合、約50年の歳月を経てようやく日本でも「大人から子供まで楽しめる」キャラクターコンテンツに成長・成立させた実績を持つ事になります。
そうなると、次は日本のキャラクターコンテンツの「全世界のヒーロー・アイドル」化。日本のキャラクターコンテンツ製作事情の衰退化を憂う庵野監督が目指しているのは、実はこれなんじゃないか?とも思うのです(※)。
※…「ゴジラ」(1954)は初出からして、娯楽映画の皮を被った社会派映画として評価されていた事。また海外展開も日本主体とはあまり思えないため、ここでは除外しています。
まあ何はともあれ、無事「EVA」も終わらせてくれた事ですし、周りの人達だけでなく自身も存分に楽しみながら、今でも大好きなキャラクター作品を存分に作ってくれれば良いな…。
と言う事で「シン・仮面ライダー」製作発表についての感想まとめでした。
p.s.その1.
p.s.その2.(10/10追記)
※…シン・ゴジラの中の人みたいな売込み方なんでしょうね、きっと。とか思ってたら、1/1に発表されました。
p.s.その3.
1960年代に流行したカフェレーサーのフルカウルスタイルを基本とし、迫力ある6連マフラー&跳ね上がったリアカウルでのみ最低限のキャラ付けを実施。
そして「運動性」が要求される際は、カウルが仕舞われるギミックを先に見せる事でサイクロン自体が「変身」する事も示唆。
つまり「実車以上、スーパーマシン未満」な、意外と地に足の付いた改造人間向けな「ハイパーチューニングマシン」という設定。その絶妙なさじ加減が「初代サイクロン」の他には無いイケてる処でした(※)。
※…この方向性の特撮バイクと言えば、あとは同原作者・別タイトル「人造人間キカイダー」に登場する「MACH3 サイドマシン」位なモノでしょうか…。
なお「新サイクロン」以降は「スーパーマシン」化が進行。今日まで続く「ライダー」のマシンイメージはここで定着してしまったので、中々こうは行かなくなってます。