成績 A
設問1
1 捜査①
(1)本件の撮影は無令状で行われているところ「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但し書、以下法令名略)に当たるなら、令状主義(憲法33条、35条等)に反し違法となる。
では、「強制の処分」か。強制処分は令状主義と強制処分法定主義の両面から厳格な法的制約に服させる必要があるものに限定されるべきである。そして、相手方の承諾がある場合は権利利益の制約は観念し得ないため、相手方の意思に反することが前提となる。そこで「強制の処分」とは相手方の意思に反し、重要な権利利益を制約する処分であると考える。
(2)本件の撮影は甲が事務所から出てきた際にされているのだから、建物の外から見える姿を撮影したに過ぎない。建物の外においては自己の姿を晒して行動するのが通常であるので、プライバシー権への期待は減退していると言える。また、撮影時間も20秒間にとどまり権利制約の程度も弱いと言える。ゆえに、重要な権利利益の制約はなく「強制の処分」ではない。
(3)任意処分であっても捜査比例原則より(197条1項本文)必要性、緊急性を考慮して相当な範囲でのみ許される。
本件の事件は被害額100万円の詐欺事件であり重大事件である。また、被害者Vは犯人がA工務店と書かれたステッカーが貼られた赤色の工具箱を持っていたと供述しているのだから、犯人がA工務店の関係者であると疑うに足りる理由がある。加えて、本件の撮影では中肉中背の男が対象となっているところ、Vは犯人が中肉中背の男であると供述しており、特徴が一致している。さらに、犯人は赤色の工具箱を所持していたとVは供述しているため、工具箱が事務所にあるかを確認するのは証拠収集としての必要性が高いといえるところ、公道からは事務所内を見ることができなかったのだから、本件の撮影の必要は高い。そして、Vは犯人の顔はよく覚えていないと供述しているところ、本件の撮影で撮影された人物をVに示せば犯人の顔を思い出す可能性もある。ゆえに必要性は高い。
そして、撮影は外に出た姿を対象に行われており、撮影時間も20秒間と短時間であるので権利制約の程度も低い。
以上より、相当な処分といえ適法である。
2 捜査②
(1)「強制の処分」か。前述の基準で判断する。
確かに、事務所内の工具箱を撮影していることからプライバシーへの期待は減退しているとはいえないとも思える。しかし、工具箱は向かい側マンションの二階通路にあがったところ小窓を通してみることができた。すると、マンションの通路という誰でも立ち入り可能な場所から見ることが可能な位置に工具箱は置かれていたのだから、ある程度他人に見られることは想定されていたといえる。ゆえに、やはりプライバシーへの期待は減退しているといえる。加えて、撮影時間も5秒間にとどるのでプライバシー制約の程度は強くない。ゆえに重要な権利利益の制約はなく「強制の処分」ではない。
(2)任意処分として適法か、前述の基準で判断する。
まず、本件事件は100万円の詐欺事件であり重大事件である。また、PがVに捜査①で映された映像を見せたところ、Vは犯人に似ているような気がしますと述べているのだから甲が本件の犯人である疑いは強まっている。また、Vは犯人はA工務店と書かれたステッカーが貼られた赤色の工具箱を持っていたと供述しているところ、事務所内にその工具箱があれば甲の嫌疑を基礎づける有力な証拠になる。しかし、公道からは事務所内の様子をみることができなかったのだから小窓からの撮影の必要が高い。
そして、向かい側マンション通路という誰でも可能な場所から小窓を通じて見える位置に置かれた工具箱を撮影したにすぎないし、撮影時間は5秒間と短時間にとどまりプライバシー制約の程度は強くない。加えて、向かい側のマンションの管理人の承諾も得ており他者の権利への配慮もある。また、望遠レンズでの撮影と肉眼での目視ではプライバシー制約の程度に違いがあるとも思える。しかし、それでもマンションの通路というだれでも立ち入り可能な場所から見える位置に置かれた物を撮影したにすぎずやはりプライバシー制約の程度は強くない。
ゆえに、相当な範囲でされており適法である。
設問2
1 小問1
(1)本件メモが伝聞証拠として証拠能力が認められないことになるか(320条1項)。
伝聞証拠の趣旨は、供述証拠の知覚、記憶、表現、叙述の過程で誤りがあるかを反対尋問によりチェックする必要があるためである。そこで、伝聞証拠とは公判廷外供述を含む供述証拠であり内容の真実性が問題になるものをいう。内容の真実性が問題になるかは要証事実との関係で決まる。
本件では、Vが本件メモに甲からメモ記載の文言を実際に知覚してそれをきちんとメモに記載したのであれば、立証趣旨たる甲がVに本件メモ記載の文言を申し向けたことが推認される。ゆえに内容の真実性が問題になり伝聞証拠である。
(2)では、伝聞例外に当たるか。
本件メモは「被告人以外の者」たるVが作成した「供述書」である(321条1項柱書)。そして、裁判官の面前でも検察官の面前でもされておらず、「前二号に掲げる書面以外の書面」である。
そして、Vは脳梗塞で倒れているところ、担当医師はVの意識が回復する見込みはないし、回復しても記憶障害が残りVの取り調べは不可能であると述べているのでVは身体に故障があるといえる。
「その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができない」とは伝聞証拠の採否が事実認定に著しい差異を及ぼす場合を指す。本件でVは脳梗塞になり、意識の回復の見込みもなく取り調べも不可能である。(Vは供述調書の作成を断念しているという事実は書いたような書かなかったような・・・)すると、甲がVに本件メモ記載の文言を申し向けたかを立証するには本件メモによるしかなく、本件メモの採否により事実認定に著しい差異が生じる。よって、「その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができない」と言える。
絶対的特信情況があるか。WはPに提出したメモは昨夜母が私の目の前で記載したものです、メモに書かれていることは母が私に話した内容と同じですと述べている。また、本件メモは平成30年1月10日午後7時に作成されており、甲がVを訪問してから7時間後に作成されており記憶条件も悪くない。ゆえに、絶対的特信情況もある。
よって、同条項同号により証拠能力が認められる。
2 小問2
(1)本件領収書が伝聞証拠か
まず、弁済もないのに領収書が交付されることはあり得ないことから、領収書が交付されたという事実自体から弁済の事実すなわち、甲がVから100万円を受け取ったことを推認できる。ゆえに、領収書が存在するという事実自体を要証事実と捉えれば非伝聞である。
次に、Vが受け取った額が100万円であることを立証しようとするなら内容の真実性が問題になるので伝聞である。
そして、本件領収書は甲という被告人が作成し、不利益事実の承認を内容としており、署名押印もあるので322条1項により証拠能力が認められる。
<感想>
設問1
ビデオ撮影は答練や模試でも何回も書いてきたので驚きはしなかった。しかし、適法、違法の結論にめちゃくちゃ迷ってペンが進まなかった。書けば書くほどどちらとも言えそうな気がしてきて書きにくかった。
事実の拾い漏らしが2つくらいあるので点数伸びるかは微妙か。悔しい。
設問2
本件メモは最初非伝聞かと思ったが、伝聞例外に使えそうな事情が転がってるし、27年の司法試験過去問でもよく似たような問題が出てて、そこでは伝聞とされてたから、今回も伝聞にした。理論的にどうなるかとか知らん。
本件領収書はよくわからなかった。とりあえずまあ伝聞になる場合と非伝聞になる場合を場合分けすることくらいはほかの人たちもしてきそうだからそうしといた。理論的なことは知らん。
捜査で時間使いすぎて証拠の時間が少なくなって厚い論述はあまりできなかった。322条1項の当てはめとかごみすぎると思う。けどたぶん大丈夫かなと思う。伝聞、非伝聞の区別は周りの出来も悪いはずだから。いやまあ知らんけど。
なんとかBはきててほしい。![]()
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