「あなたの夢は?」

いつからだろうか、そう聞かれて言葉を濁すようになったのは。


ここ数年、いやもしかすると司法試験の勉強を始めてからずっとかもしれない、人からあなたの夢は?とか目標は?とか聞かれたときに、はっきり「弁護士目指してます」と答えることが出来ないでいた。

むろん、なりたい気持ちはある。自分が法廷に立つ姿を何度想い描いたか分からない。

しかし、司法試験は俺の想像より遥かに高いハードルだった。

予備試験は三回受けて全て不合格、成績も箸にも棒にもかからないものだった。

ロースクール受験でも何校も落とされた。

そして昨年度の司法試験にもあっさり不合格。

だから、そんな自分が本当に司法試験に合格して弁護士になるなんて現実味がなくて、弁護士目指してるなんて恥ずかしくて言えなかった。



けれど、今年は少し違う。

今年は、今までの勉強期間の中で一番まともに試験に向き合ってきたつもりだ。もちろん去年までが向き合っていなさ過ぎただけなので客観的にみると大した努力ではないのかもしれない。

それでも自分の中ではなかなかよくやったと思うし、模試ではあるが去年より成績は上がっている。なにより合格ラインの感覚、そういったものが去年よりは身に付いていると感じる。

過去の自分を振り返って、実力的には今が最も高い水準にあると言い切れる。

そんなわけで、けして叶うことのない夢のはなしであった自分の合格、そのことの現実感を少しだけではあるが確かに感じている。

司法試験の勉強を始めてから、そして去年の試験以降ずっと見続けていた夢、その夢が少しだけ、ほんの少しだけクリアになってきたような気がする。

失われていた現実感を少し取り戻すと同時に、俺が弁護士を志して勉強を始めた頃のピュアな気持ちも少し蘇ってきた。

法廷に立つ弁護士の姿、弱い人の味方として懸命に働いている姿、メチャクチャ格好よかった。

そうだ、あの姿に憧れてたんだ、あんな仕事をしたくて俺は弁護士を目指したんだ。受験生活が長引いて危うく忘れるところだった。

そんな感じで、最近になってようやく自分の気持ちを再確認できた。だから、今ならためらうことなく言える。





俺の夢は弁護士になることだ。









うん、言えた。



てことで、行こう。自分の夢を叶えに。





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