大分県の神社巡り旅行の最終回。

 

火男火売神社(ほのおほのめじんじゃ)の中宮、上宮に参拝した後、由布院に向かう。中宮、上宮がある鶴見岳は別府と由布院の中間にある山なので、由布院に向かうのは自然な流れである。

 

由布院行のバスを終点まで行かずに岳本(たけもと)バス停で降りると、金鱗湖(きんりんこ)という観光名所の湖まですぐ。この金鱗湖の湖畔にあるのが天祖神社(てんそじんじゃ)である。

 

由布院の神社と言えば、まず第一に後で紹介する宇奈岐日女神社(うなぎひめじんじゃ)なのであって、当社については「金鱗湖もあることだしついでに寄っておくか」程度のことだった。

 

 

 

まだ境内に入る前。当社まで歩いてきて、最初に目に入ったのが、こんな感じの絵である。かなり良さそうな神社で、意表を突かれた。

 

 

 

 

間違いなく、素晴らしい神社である。

 

御祭神は天御中主大神(アメノミナカヌシ)ほか。

 

 

 

そして、金鱗湖に浮かぶ水中鳥居が非常に美しい。

 

由布院に行った際には是非とも訪れてみていただきたい。感動した。

 

観光地にある小さな神社。しかし、評価は5点満点で4.0。一宮と同等の評価である。

 

次に本命である宇奈岐日女神社(うなぎひめじんじゃ)に向かう。ここから徒歩20分弱。

 

ついでに寄った神社が思いもかけず素晴らしい神社だったので、もしかして本命である宇奈岐日女神社が負けてしまうのではないかと、変な心配をしていた。

 

天祖神社の近代社格は村社。一方、宇奈岐日女神社は延喜式内社であり県社である。天祖神社も素晴らしかったけれども、ここは宇奈岐日女神社に格式の高さというものを見せてほしいところ。

 

 

境内入口の鳥居に立ち、まずまずの印象でほっとした。

 

 

 

参道と手水舎。手水舎の奥に由緒書が見える。

 

 

社名の読みとして「うなぎひめ」と仮名が振ってある。しかし、実は「ぎ」の文字が書き換えられた形跡がある。ウィキペディアを始めとして「うなぐひめ」神社という仮名が振られていることも多いので、以前は「うなぐひめ」だったのかもしれない。あるいは、濁らずに「うなきひめ」という読みもあるようである。

 

そして、不思議なのが、御祭神に肝心の宇奈岐日女が入っていないこと。国常立尊(クニトコタチ)以下、男性神ばかりが並んでおり、肝心の女神様がいない。

 

 

狛犬と神門。

 

この神門をくぐった後が想像を超える風景だった。

 

 

 

 

社殿と後背の社叢が放つ気が素晴らしく、そして、美しい。

 

 

 

 

拝殿。

 

拝殿へは小さな神橋を渡る。城のように周囲に堀があると言うべきなのか、島に社殿があると言うべきなのか。

 

要するに、いつもの境内社としての厳島神社や宗像神社が神池に浮かぶ島にあるように、当社の社殿は島にあって神橋を渡って行くのである。

 

これはかなり珍しい構造。同様の神社には長野県の生島足島神社(いくしまたるしまじんじゃ=名神大社・国幣中社)がある。なお、偶然ながら生島足島神社の御祭神の生島足島大神というのも実体としては当社の御祭神の一柱である国常立尊を指す。

 

 

境内社の厳島神社。本社も島にあるのだが、厳島神社はそこからさらに橋を渡った小さな島にある。

 

 

拝殿に向かって左手前からの構図。境内社、拝殿、本殿。

 

この境内社は厳島神社と向かい合って左右対称に存在しているもう1つの境内社。やはり島にあって神橋がある。

 

 

本殿。残念ながら工事中。

 

さて、御祭神の宇奈岐日女の謎に迫る。

 

なぜ、神社としての正式な読みを「うなぐひめ」から「うなぎひめ」に変更したのか。由緒書を見ても当社名称の由来はわからないが、由布院は古くから水害に悩んでおり、治水のために鰻を祀ったからとも言われているようである。もしかしたら、当社も「宇奈岐」=「鰻」と考えたのか、その説を認めたのかもしれない。

 

では、「うなぎひめ」とは誰なのか。

 

由緒書の御祭神の名前の最後に神渟名川耳尊(かむぬなかわみみのみこと)とあるのが目に付く。これは第2代天皇の綏靖天皇(すいぜいてんのう)を指す。

 

この名前の中に「ぬなかわ」と入っている点に注目である。「ぬなかわ」と言えば、奴奈川姫(ヌナカワヒメ)。奴奈川姫は大国主の妻の一人であり、タカミナカタの母親である。高志沼河姫(こしのぬなかわひめ)などとも呼ばれ、越(こし)の国出身の姫神様。新潟県糸魚川市には奴奈川神社がある。

 

この2人はペアになる神様なのである。そして、宇奈岐日女というのは奴奈川姫なのだそうである。

 

まあ、なぜ宇奈岐日女が奴奈川姫なのかという説明にはなっていないのであるが、私がうちの女神様たちに質問してこの宇奈岐日女の謎を解決するきっかけとなったのが、「ぬなかわ」という言葉からのインスピレーションなのである。

 

言葉の音や文字(漢字)に敏感になること、小さなインスピレーションを大事にすることが、こういった謎解きのコツとは言える。

 

そして、奴奈川姫は高龗神(タカオカミノカミ)と同一である。つまり、水の神様である。

 

最初に神社を創建した時に、水の神様として高龗神を祀ったわけではないのである。水害に困っており、水害をなんとかしようと鰻を祀った。それを見て、高龗神が御祭神を引き受けたということなのである。だから、御祭神は地元の人から見れば鰻の姫神様なのであり、高天原から見れば高龗神なのである。

 

当社の境内風景はいつまででも見ていたいくらい美しい。

 

実際、参拝を終えた後、神門の前で1組の参拝者が私と同じようにこの風景をずっと見ているのが印象的だった。

 

当社の評価は5点満点で4.5点。

 

この後は、更に徒歩で大杵社(おおごしゃ)に向かう。神社としてよりも、「大杵社の大杉」というのが有名である。

 

 

 

境内入口。かなり鬱蒼とした森の中にある。

 

 

参道両脇の樹木の神門と拝殿。

 

由緒書はなく、御祭神等は一切不明。

 

 

 

本殿とその左に大杉。当社はこの大杉がメインである。

 

これは本当に凄い。この大杉もずっと見ていても飽きない。

 

国指定天然記念物。根周り13.3m。大分県で最大の杉で、樹齢は推定1000年以上。

 

この杉をずっと見ていたら、後から観光タクシーのドライバーとお客さん2人がやって来た。観光タクシーなので、ドライバーは色々と説明をしている。それによると、九州本土で最大の杉とも言われているようである(つまり離島の屋久杉等は除く)。そして、中には畳3枚分の空洞があり、裏に回るとそれが見られるという。

 

空洞の話は実は案内板に書いてある内容なのだが、ろくに読んでおらず、この時点では知らなかった。しばらく大杉を見て、そのうち帰ろうと思っていたのである。

 

知らずにそのまま帰るところだったが、その一団が帰った後、言われたとおりに裏に回ってみる。

 

 

 

 

裏はこんな感じである。

 

柞原八幡宮の樹齢3000年の大楠も凄かったが、当社の大杉ももの凄い。今回の旅行では2本の素晴らしい御神木を見ることができた。

 

当社の評価も5点満点で4.5。無名の神社(神社マニア等には知られているが)としては異例の評価である。由布院に来た際には大杵社にも是非立ち寄っていただきたい。

 

当社の後、もう1社、若宮八幡社に参拝して由布院の神社巡りを終了した。それぞれの神社の基本情報等は以下を参照していただきたい。

 

現代神名帳 天祖神社

現代神名帳 宇奈岐日女神社

現代神名帳 大杵社

 

現代神名帳 若宮八幡社

 

-----

過去記事はこちらからどうぞ。

記事目次 [スピ・悟り系]

記事目次 [神社巡り]