大分県に神社巡り旅行に行ってきたので、その中から良かった神社を紹介したい。

 

もちろん、この旅行の一番の目的は今回紹介する宇佐神宮への参拝である。長い間行きたいと思っていた神社であり、今回、念願叶っての参拝である。

 

宇佐神宮は豊前国の一宮。ただ、現在の大分県はおおよそ豊後国に相当し、福岡県に近い宇佐を含む一部地域が豊前国という感じのようである。

 

従って、当然ながら豊後国の一宮というのもあり、柞原八幡宮(ゆすはらはちまんぐう)と西寒多神社(ささむたじんじゃ)がそれに当たる。これらの一宮については別の記事で紹介する。

 

基本の基本からおさらいすると、宇佐神宮は全国に4万4千社(境内社含む)くらいあると言われる八幡宮の総本社である。主祭神は色々なパターンの組み合わせがあり、詳細については後述するが、基本的に八幡宮というのは第15代応神天皇(おうじんてんのう)を祀る神社である。別名が誉田別尊(ほむたわけのみこと)。3~4世紀くらいに実在したとされる天皇である。

 

参拝は8月9日金曜日。お盆休み前の微妙な平日。最寄りの宇佐駅からバスに乗るのであるが、宇佐駅は特急停車駅であるのに周辺にはほとんど何もない田舎駅であり、宇佐神宮方面のバスもそんなに本数はない(タクシーはたくさん待機していたので、安心していただきたい)。その貴重なバスに合わせて旅程を立て、8時47分に宇佐八幡バス停に到着。同バス停では私のほかに1人が降りた。

 

 

バス停から徒歩1分くらいですぐに表参道。拍子抜けするほど誰もいない。同じ日時の条件であったとしても、伊勢神宮の内宮や厳島神社なら多くの人でごった返していることは間違いない。

 

なお、この表参道沿いには商店街があり食事等もできるので、そういう時間帯に参拝する人はそれも含めたプランにしてもよいと思う。

 

 

宇佐神宮の境内はかなり広い。実は1時間40分用意していた参拝時間が足りなくなってしまって急遽予定変更をしたほどである。過去の私の経験では、内宮の参拝時間が1時間30分、外宮は1時間10分ほどであったから、少なくとも内宮・外宮と同等くらいに広いと考えていただいて構わない。

 

その広い境内なのであるが、境内参道の半分くらい進むまではほとんど独占に近い状態で、稀に人を見るくらいであった(神社の人は清掃などをしていたが)。

 

 

 

社号標と鳥居。

 

さきほどまでの参道沿いには商店街があったが、ここからは神域内ということになる。

 

 

参道左手に蒸気機関車。

 

戦前には宇佐参宮線というものがあったそうだが、昭和40年に廃止。神社参拝用の鉄道等が廃止になった例は全国に見られる。出雲大社参拝のためのJRの大社線、白山比咩神社参拝のための加賀一の宮駅の廃止など(現在の最寄り駅は鶴来だが、もう1つ先まで鉄道が通っていた)。

 

現在は空前の神社ブームであるが、その前の時代には神社関係の鉄道等が相次いで廃止に追い込まれた時代もあったのである。

 

この日の参拝者の少なさというのも、私個人の参拝には好都合であるが、少し寂しいものでもある。

 

 

 

内宮の宇治橋に相当するような神橋。

 

境内の造りが内宮・外宮に少し似ていると言えば似ている。

 

 

 

具体的に似ているところの1つが、この幅の広い参道。

 

広大な境内地の大きな参道を歩いていると、非常に気分が良いのである。

 

せせこましさがなく、心が広くなった感があるわけである。

 

それにしても誰もいない。このまま最後まで自分一人で独占したいのだが、さすがにそうはいかなかった。当たり前ではあるが。

 

 

 

参道右手に黒男神社。読みは「くろおじんじゃ」かと思っていたのであるが、「くろどんじんじゃ」とも読むようである。地元では「くろどん」なのだろうか。

 

御祭神は武内宿禰(たけのうちのすくね)。宇佐神宮の御祭神である応神天皇を含む5代の天皇に仕えたという伝説の忠臣である。全国の八幡宮の中には御祭神のうちの一柱としている場合もあり、人間関係として応神天皇にかなり近い存在であると言える。

 

まあ、わかると思うのであるが、神様でもある。そして、武内宿禰よりももう少し知られた名前も持っている。ここでは正解は書かないが、興味があれば考えてみていただきたい。

 

 

 

大鳥居の先、右手には宝物館がある。今回は立ち寄ることができなかった。

 

さきほど紹介したように、食事や休憩ができるようなお店もあるし、この宝物館もある。周辺には境外社や関連神社などもある。ゆっくりするなら宇佐神宮周辺だけで半日から一日くらい見ておいてもよいくらいなのだが、行きたい神社がたくさんありすぎて、宇佐神宮のために用意していた時間は1時間40分であった。これが足りなくなってしまうのである。

 

 

 

 

 

さらに参道を進む。この間、数人とはすれ違っているのであるが、やはり誰もいないかのような事実上の独占状態である。それも相俟って、なんとも清々しい。

 

ここから先の参道は社叢の中を通るので、ここで雰囲気が変化する。これも内宮に通ずるものがある。

 

 

 

参道右手に春宮神社。春宮神社と書いて「とうぐうじんじゃ」と読むのだそうである。御祭神は菟道稚郎子命(うじのわきのいらつこのみこと)で、応神天皇の御子であり、第16代仁徳天皇の弟(異母)。

 

素晴らしい雰囲気の境内社であり、正直に言えば、宇佐神宮で最も気に入った場所である。

 

深遠で静謐な雰囲気を漂わせている。

 

 

 

奥の突き当りに祓所(はらいじょ)。

 

この舞台のような部分には立ち入りできないようになっており、一般参拝者が何かできる場所ではないようである。

 

画像では見にくいのだが、一番奥には滝があり、ここも気が良い場所である。しばらく滝を眺めてから次へ。

 

 

祓所の左手で「上宮」への参道と、「下宮」への参道に分岐する。まずは、「下宮」に参拝する。正式な参拝順序もあるかもしれないが、知らないし、とりあえずは気にしない。

 

「下宮」の由緒書に「げぐう」と仮名が振ってあった。「上宮」の方は確認が難しかったのであるが、英語表記の案内板によって、「じょうぐう」であることが判明した。

 

「上宮」「下宮」は現地に来るまで「かみのみや」「しものみや」と勝手に推測して読んでいたのだが、当たらない。神社によって読みが異なる用語なども多いのだから、神社の世界の一般論としては、全てにおいて正式な読み仮名を振っておいていただきたいとも思う。

 

 

下宮の神門。

 

 

 

下宮の御祭神は上宮と同じ。

 

一之御殿に応神天皇、二之御殿に比売大神(ひめおおかみ)、三之御殿に神宮皇后を祀る。

 

左から順に一之御殿、二之御殿、三之御殿となっているのが私としては謎である。なぜ真ん中をメインの応神天皇を祀る一之御殿にしないのだろうか。理由はわからない。

 

ここで八幡宮の御祭神と比売大神(ひめおおかみ)について説明する。

 

何度も言うように、八幡宮のメインの神様は応神天皇である。全国の八幡宮ではそのほかに二柱の神様を祀ることが多い。そして、応神天皇の母親である神功皇后もほぼ固定である。

 

残る一柱の神様にはさまざまなバリエーションがある。

 

さきほどの黒男神社に祀られていた応神天皇を含む5代の天皇に仕えたという武内宿禰(たけのうちのすくね)の場合、応神天皇の父親である第14代仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)の場合、応神天皇の皇后であった仲姫命(なかつひめ)の場合、玉依姫の場合、比売大神(ひめおおかみ)の場合などがある。

 

神社に一緒に祀られるというのは、結局のところ、高次元の世界で人間関係が近いか、地上での世界で人間関係が近かったという例が多いものである。色々なバリエーションがあるのも、そういう理由による。

 

比売大神となっているほかに、もしかしたら、「姫神」のような場合もあるかもしれない。これは意味が異なるのである。

 

単に「姫神」と言った場合は、一般名詞であり、名前を伏せているという意味合いが強い。そして、名前は隠されているものの、実はこの場合の「姫神」は玉依姫を指すのである。

 

ところが、八幡宮の世界において、少なくとも宇佐周辺における比売大神(ひめおおかみ)というのは固有名詞なのである。そして、これは宗像三女神が正体なのである。

 

奈多宮(なだぐう=県社)という神社がある。ここが比売大神発祥の地と言われている。大分空港から数kmほど南下した海岸沿いに立つ神社であり、旅行初日に大分空港に到着した後に参拝している。

 

 

 

海側からの正面参道があり、海に面して建つ鳥居と海鳥居が印象的な神社である(ただし、それ以外はやや荒廃気味でいまひとつ)。

 

この神社の由緒書では比売大神が誰を指すのかは特に言及されていないようであるが、私はどこかで比売大神の正体を読んだ記憶がある。

 

それが、奈多宮の前に参拝した、やはり大分空港から近い場所にある椿八幡神社(つばきはちまんじんじゃ=県社)である。ここでも御祭神は応神天皇、比売大神、神宮皇后となっており、由緒書には比売大神が宗像三女神を指すことがはっきりと書かれている。

 

そういうことで、奈多宮だけではなく、宇佐神宮でも、椿八幡神社でも、その他の宇佐周辺の八幡宮においても、比売大神というのは宗像三女神を三位一体の神と考えての名称ということになるのである。

 

ただし、宇佐周辺の八幡宮では明確に比売大神を宗像三女神として祀っているのに対して、これ以外の地域で「比売大神」としていても、それは単に名前を伏せているか名前がわからない女神として扱っていることが多く、「比売大神」を一般名詞の「姫神」と同じ意味で使っていることが多い。うちの女神様たちによれば、この場合は「比売大神」となっていても、実際に御祭神を担当しているのは玉依姫になるということである。

 

さて、宇佐神宮の下宮の話に戻る。

 

宇佐神宮においては上宮と下宮はセットであって、必ず両方に参拝すべしと言われている。どちらか片方にしか参拝しない(ほとんどの場合、上宮にしか参拝しない)ことを地元では片参りと言って嫌うのだそうである。

 

だが、下宮も参拝者は私一人である。この後、当然ながら上宮に参拝しているが、そちらではそれなりに人はいたのである。

 

ということは、ほとんどの参拝者は片参りではないか。皆さんが参拝する時には片参りにならないよう、注意していただきたい。

 

 

これは下宮を横から見たところ。

 

当社では八幡造(はちまんづくり)という珍しい社殿の建築様式を見られるのかと楽しみにしていたのだが、残念ながら下宮は八幡造ではなかったのである。

 

上宮では珍しい八幡造を見ることができるだろうか。

 

非常に長くなったので、次回に続く。

 

-----

過去記事はこちらからどうぞ。

記事目次 [スピ・悟り系]

記事目次 [神社巡り]