今回は相模国一宮である寒川神社(さむかわじんじゃ)を紹介することにする。

 

相模国というのは現在の神奈川県のうち、横浜市と川崎市を除いた地域に近い。横浜市と川崎市は武蔵国である。

 

そういった歴史的背景があるせいか、実は横浜市と川崎市という多数の人口を抱える地域は、神社の世界的には空白地帯なのである。横浜市・川崎市には格別有名な神社というのは存在していない。神奈川県で初詣で有名な寺社となると、川崎大師あるいは鎌倉の鶴岡八幡宮となる。

 

横浜市で一番の神社となると、おそらく県社・別表神社の伊勢山皇大神宮(いせやまこうたいじんぐう)だろう。

 

※ 本稿とは全く無関係であるが、伊勢山皇大神宮は神社本庁傘下の神社で初の破産宣告を受けたという事件を引き起こしている。詳細は現代神名帳 伊勢山皇大神宮を御覧いただきたい。

 

川崎市で一番の神社に至っては、川崎市で生まれ育った元川崎市民の私でも分からない。現在の私の神社知識をもって答えを探せば、郷社・別表神社の稲毛神社(いなげじんじゃ)ということになるのだろう。しかし、横浜・川崎には官幣社・国幣社クラスの神社は存在しないのである。

 

現在の神奈川県での有力神社というのは、湘南地域にかなり集中している。

 

当社は茅ヶ崎からJR相模線で4駅の宮山が最寄駅。比較的近くには、相模国四宮である前鳥神社(さきとりじんじゃ)、県社・別表神社であり公式には認められていないが相模国五宮とも言われる平塚八幡宮、相模国十三社(相模国には式内社が13社ある)の1つである宇都母知神社(うつもちじんじゃ)などが存在する。

 

また、JR東海道本線で少し小田原、静岡寄りの二宮を最寄駅とする神社には、文字通り相模国二宮である川勾神社(かわわじんじゃ)、相模国総社である六所神社(ろくしょじんじゃ)がある。

 

そういうことで、神奈川県の有力神社は私が住んでいる場所からすれば、多少遠いところに位置しており、寒川神社も片道2時間くらいかけて出かけていくことになる。

 

だが、寒川神社は4回目の参拝。かなり好きな神社である。

 

 

 

 

最寄の宮山駅からは徒歩5分。境内入口に神池橋という太鼓橋と、文字通り神池があり、これが最初の見せ場である。

 

 

 

神池には噴水があり、とても良い雰囲気である。

 

実際には参拝後に脇参道から戻って、この辺りでゆっくりするのが良いと思うが、話の都合上先に画像を載せておく。

 

 

 

鳥居をくぐった先の境内参道。整備された短い参道であるが、私は好きである。

 

 

 

先ほどの境内参道を歩くと開けた場所に出る。そこには楼門があるのだが、その前に巨大な狛犬。

 

画像で狛犬の大きさが伝わるのかは不明なのであるが、実はこれまでに見た狛犬の中でおそらく最大の大きさである。「日本一大きな狛犬」などというトピックを過去に読んだ記憶はないので、あくまでも私の過去の参拝経験の中での話であり、それも記憶にある限りに置いてであるが、少なくとも通常の狛犬よりは一回りも二回りも大きな狛犬である。

 

私の最新の電子書籍「神様と神社の世界」から狛犬の説明を引用したい。

 

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狛犬(こまいぬ)は参道の両脇に見られる、犬やライオンに似た一対の動物の石像です。

「犬やライオンに似た」というのは想像上の動物だからです。そして、実は左右の動物は種類が違います。

参道右手にあるのが獅子で、口を開けています。参道左手にあるのが狛犬で、口を閉じています。一対で「阿吽(あうん)」像となっているのです。そのため、古くは「獅子・狛犬」と呼んでいたそうで、それが省略されて現代では単に狛犬と呼ぶことが多くなりました。

 

(中略)

 

狛犬は神様の使いである眷属(けんぞく)をシンボル化したものです。見張りの役割をしています。

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ということで、電子書籍「神様と神社の世界」をまだ読まれていない方は、是非ご一読いただければと思います。

 

 

 

楼門。相模国一宮にふさわしい風格。

 

楼門のような神社のシンボル的存在は、人が入らない写真を撮影することが難しい。

 

この日は平日の午前10時過ぎの参拝。「なんだ、全然参拝者がいないじゃないか」と思うかもしれない。しかし、それは事実とは大きく異なっている。参拝者は到る所にいたのである。実は平日の午前中なら人が少ないかなと思っていたのであるが、過去の参拝経験における休日の同じ時間帯と参拝者数は同じくらいであった。「平日の午前でこんなに人がいるのか」と思ったのである。

 

だから、画像で人が少ないように見えたとしても、それは私がタイミングを待って撮影しているから、あるいは単に私の運が良いからというのが理由である。参拝者はそれなりにはいると思っていただきたい。

 

 

 

楼門をくぐって瑞垣内へ。

 

私的には、当社の魅力はここに凝縮されていると言ってよい。この瑞垣内の素晴らしい雰囲気が好きだから、また当社に参拝に来たのである。

 

 

拝殿。美しく、力強い。とにかく青空に映える。日本全国の神社の拝殿の中でトップクラスの拝殿である。

 

美しく素晴らしい拝殿ということで思い出す神社は、当社と長野県の穂高神社(ほたかじんじゃ=信濃国三宮)である。

 

当社は本殿に近づく周回路は存在しないので、一般参拝者が入れるのはここまでである。

 

御祭神は寒川比古命、寒川比女命。寒川(さむかわ)は地名であるので、御祭神の本当の固有名詞ではない。本来の固有名詞が菊理媛神(ククリヒメ)である女神様を白山比咩(シラヤマヒメ)と呼ぶようなものである。

 

当社は全国唯一の八方除(方位などに起因する災難を避ける)の神社であると称している(実際にはほかにも存在する)。

 

また、特筆すべきなのが、御祈祷の件数の多さである。実は前回の参拝時には御祈祷を受けたのであるが、待合室に置いてあった案内に興味深いことが書かれていた。それによると、当社の御祈祷は年間30万件以上で日本一なのだそうである。

 

ただし、本稿執筆時点でウィキペディアに「日本一御祈祷者が多い神社とされたことがあり、その数は年間約30万件で、2番目に多い神社の年間約3万件の10倍以上にも及ぶ件数の御祈祷が行われている」と書かれているが、実感としてそれ(2位の10倍以上)は絶対にありえない。

 

お隣の武蔵国一宮である大宮氷川神社も御祈祷の件数が当社と並んで非常に多いからである。どちらの神社も平常時でも数十人同時の御祈祷である。大宮氷川神社は30分毎の御祈祷。当社は知らないが、同じようなものであろう。

 

なお、御祈祷を受けると、神嶽山神苑(かんたけやましんえん)の入苑券をいただくことができる。逆に、御祈祷を受けない限り神苑に入苑することはできない。前回参拝時には時間の都合で入苑できなかったが、後日でも入苑券は使用できるとのことである。ただし、冬期は閉苑となっているので、今回も入苑できなかった(調査済みのうえで今回参拝)。またの機会にゆっくりしてみたいと思う。

 

当社は御祈祷件数が多いことを見ても、平日の参拝者がそれなりに多いことを見ても、地域の人たちとの関係が良好であるように思われる。神社側でも色々な配慮や工夫をしていることが見て取れるのである。

 

一般参拝者用のトイレはお隣の武蔵国一宮である大宮氷川神社とは雲泥の差であり、非常に清潔で整備されたものである。

 

そして、神社の境内に軽食が食べられる出店がある。お茶やお酒も飲めるし、八方除に由来した八福餅というのも売っている。レストランも併設されている。参拝者サービスというものができていて、神社そのものとは別の意味でも「また来たい」と思わせるのである。

 

 

 

前回参拝時の出店・売店の画像。

 

そういえば、御祈祷の際の初穂料も前回参拝時の時点では下限が3000円から(七五三などの一部例外を除く)であった。これも御祈祷件数が多いこと、地域密着で多くの信仰を集めていることと関連しているであろう。大宮氷川神社も少し前まで3000円からであったのが、現在は5000円からになってしまったのは少し残念である。

 

さて、本殿には近づけないし、神嶽山神苑には入れないので、当社はここで終わりと言えば終わりである。何か気が付いたことはあるだろうか。

 

そう、ここまで境内社が1つも出てきていないのである。

 

ウィキペディアで調べると、神嶽山神苑の中に1社ある。そして、もう1社が道を挟んだ反対側にある宮山神社(みややまじんじゃ)。

 

 

 

 

誰でも入れる場所にある当社の唯一の境内社である。近隣の神社を合祀したものであるとのこと。

 

なかなか素敵な境内社であるので、こちらにも忘れずに参拝しよう。

 

この宮山神社の隣にはレストランがあるのだが、この日は遅い朝食をとっていたため、そのまま次の神社に向かった。

 

当社の基本情報等は以下を参照していただきたい(画像は過去参拝時のもの)。

 

現代神名帳 寒川神社

現代神名帳 宮山神社

 

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過去記事はこちらからどうぞ。

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