今回の旅行の締めくくりは、兵庫県宍粟市(しそうし)にある伊和神社(いわじんじゃ)。播磨国の一宮である。延喜式内の名神大社でもあり、近代社格は国幣中社。

 

おおまかな位置は、姫路から北北西に約30km。鉄道の通っていない場所である。極端に行くのが難しい神社ではないとはいえ、参拝に行くのはそれなりに大変である。

 

今回は姫路から神姫バス山崎行に乗った。所要時間1時間7分、終点の山崎バスターミナル下車。ここでバスの乗り換えが必要になる。ここから同じく神姫バスの原行、横山行、皆木行、エーガイヤちくさ行等のいずれかに乗り18分、一の宮伊和神社バス停下車でようやく到着である。

 

中継地点の山崎には神戸三ノ宮からもバスが出ており、そちらの方が本数が多い。

 

 

境内入口の社号標。

 

 

道路の反対側からも写真を撮る。社叢が凄そうで、なかなかの好印象である。期待が高まる。

 

 

正面から参道を望む。素晴らしい。この入口付近で写真を何枚も撮り、かなりの時間を使った。

 

さて、この参道両脇に2本の柱を立てて注連縄を渡したもの、これおわかりだろうか。

 

私は神社参拝歴が7年半くらいあるから、さすがに、これが鳥居と同じ意味のものであることは知っていた。しかし、名称は聞いたことがなかったのである。

 

今回この記事を書くにあたってネットで調べたのであるが、あまり明快な回答は見つからなかった。どうも、統一的な用語は無いようである。神社によっても呼び方が異なるらしい。

 

一応、黒門(こくもん)が多い呼び方のようである。ほかには、黒門鳥居、神門など。とはいえ、「黒門 こくもん」で検索してもたいした情報は見つからなかった。

 

この黒門というのは、鳥居が現代の形になる前の古い時代の鳥居ということらしい。

 

だから、特定の地域だけで見られるものではないと思うのだが、それでも私の参拝経験上では広島と山口で多く見たように思う。そして、ここは兵庫県。つまり、山陽道に多く見られるのではないだろうか。

 

 

広島県安芸郡にある安芸国総社の多家神社(たけじんじゃ)。ちなみに、私が好きな神社であり、お奨めである。

 

 

広島県広島市にある県社の饒津神社(にぎつじんじゃ)。

 

 

山口県防府市にある県社の防府天満宮(ほうふてんまんぐう)。

 

 

山口県岩国市、錦帯橋近くに鎮座する県社の白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)。

 

偶然かどうかは不明だが、社格が高い神社が多かった。こちらの方が普通の鳥居よりも費用的に安くできそうな気がするが、社格の低い神社ではあまり採用されておらず、社格が高い神社で採用されている。

 

ただし、山陽道で多く見られるといっても、少数派ではある。普通の鳥居の方が圧倒的に多いので、その点は近江形式の拝殿とは異なる。また、黒門のある神社でも普通の鳥居と混在していることが多い。

 

 

 

 

圧倒的である。この社叢、参道に心の底から感服したと言ってよい。しばらく、ここに佇んでいたいくらいの素晴らしさ。

 

過去記事の椿大神社の紹介でも書いたが、この参道をスタスタ歩いて行ってしまうのはもったいない。じっくり味わいながら、時に立ち止まって、すぐに拝殿に着いてしまわないように、ゆっくり歩を進める。

 

ここで、いつもの5点満点の評価で5.0(満点)を付けようと思った。

 

 

社叢の中にある神門。

 

 

 

社叢の中にある手水舎。そして、拝殿を望む。

 

 

社叢を抜けて拝殿前へ。

 

社殿右手の御神木や周囲の社叢が素晴らしく、清浄で力強い一宮らしい気を発している。

 

ただ、その前の社叢、参道が素晴らしすぎたため、個人的な印象としては、ややトーンダウンである。ここだけ見れば評価4.5くらい。

 

 

 

 

拝殿。入母屋造(いりもやづくり)。

 

入母屋造は寄棟造(よせむねづくり)の上に切妻造(きりづまづくり)を乗せた建築様式。

 

入母屋造には屋根に破風(はふ)と呼ばれる装飾が付くことがある。三角形の破風が千鳥破風(ちどりはふ)。湾曲した破風が唐破風(からはふ)。

 

 

本殿手前の大きな社殿を見ていただきたい。これはかなり珍しい、独立した幣殿(へいでん)である。

 

幣殿は神様に神饌(しんせん)・幣帛(へいはく)をお供えする社殿。過去記事「神社巡り 賀茂分雷神社」にこれらについての説明があるので、参照していただきたい。

 

通常は拝殿と本殿の間にある通路のような社殿の一部分を幣殿と呼ぶことが多く、ほとんどの場合、独立した社殿にはなっていない。

 

 

本殿。

 

拝殿と同じく、幣殿も本殿も入母屋造である。そして、注目は切妻の向き。拝殿と本殿は横が切妻。幣殿は正面(参拝者側)が切妻である。

 

そう、入母屋造には正面が切妻の場合と、横が切妻の場合が混在しているのである。神社の社殿の場合には横が切妻の場合が多いが、どちらのケースもあるということである。

 

そして、ここでは拝殿、幣殿、本殿と入母屋造で揃えているが、一般的には必ずしも拝殿と本殿の建築様式が同じとは限らない。

 

 

 

 

社殿左手にある境内社群。

 

連棟社の説明には「播磨十六郡神社 東八郡」とある。これは播磨国のすべての郡の代表神社を祀ったもので、実は播磨国総社である姫路市の射楯兵主神社(いたてひょうずじんじゃ)に同じものがある。

 

同じものがあるというよりも、それは総社的なものであるから、射楯兵主神社に存在しているのはわかるのであるが、一宮である当社にこういったものがあるのが、むしろ特筆すべきことと思う。

 

総社(そうしゃ)というのは、昔の国ごとに存在する、一宮、二宮、三宮・・・の全てを祀る神社のこと。総社に参拝しただけで、その国の一宮以下の全ての神社に参拝したことになる。場所としては国府(こくふ)にあり、愛知県の国府宮(こうのみや)という駅名は尾張国総社である尾張大國魂神社(おわりおおくにたまじんじゃ)にちなむものであるし、同じ名鉄本線には国府(こう)という駅もあり、こちらは三河国総社である三河總社(みかわそうじゃ)による。また、神奈川県の国府津(こうづ)という駅名は相模国総社である六所神社にちなむものである。

 

ただ、総社ではあっても、国内の全ての郡の代表神社を祀るというのは珍しく、ましてや、それが一宮にあるというのが珍しいのである。

 

 

社殿の右手。こちらの連棟社が「播磨十六郡神社 西八郡」。

 

 

神門から外へ出る。

 

 

振り返って石段を見ると、なかなか味わいのある雰囲気。

 

 

境内社を発見。

 

 

嫌な予感。

 

 

またしても市杵嶋姫神社。宗像三女神ではなく、市杵嶋姫(=さくや姫)単独。本当にどこにでもいる。そして、いつも通り、神池があって、橋があって、島があって。豪華な境内社である。造るのにお金も土地の面積もかかるというのに。

 

 

社叢内の小径を一周してきて、最後に社叢内から拝殿方向を望む。

 

以上で参拝所要時間は40分程度。評価5.0の素晴らしい神社だった。

 

伊和神社は姫路からバスの乗り換えを含めて1時間30分以上かかるような場所にあるが、神社の向かいに道の駅と併設レストランもあるし、バスの中継地点である山崎にはそれなりにお店もたくさんある。

 

最後にその山崎で参拝した神社を簡単に紹介して終わりたい。全てバスターミナルから徒歩圏内にある。

 

 

 

県社の山崎八幡神社。

 

山崎で最も大きくて社格の高い神社。伊和神社参拝の際には是非当社にも訪れたい。画像のように社殿を含めて威風堂々とした印象、恵まれた社叢から放たれる強い場の気が素晴らしい。

 

社殿に向かって右手方向に、ここでも弁天(=さくや姫)社があり、池や藤棚もあるので見逃さないようにしたい。かなりの境内規模を誇っており、ゆっくりするなら本来30~40分くらいほしいところである。

 

 

山崎八幡神社の近くにある埴尾神社(はにおじんじゃ)。

 

 

大歳神社(ださいじんじゃ)。千年藤があり、毎年藤祭りが開催される。ちょうどゴールデンウィークで藤祭りの開催期間中だったのだが、例年よりも開花が早く、既にかなり散ってしまっていたのが残念だった。

 

伊和神社および山崎にある各神社の基本情報と全ての画像は以下をご覧いただきたい。

 

現代神名帳 伊和神社

 

現代神名帳 山崎八幡神社

現代神名帳 埴尾神社

現代神名帳 大歳神社

 

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過去記事はこちらからどうぞ。

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