深山の桜
宝島文庫 刊
神家正成 著
日本から約一万二千キロ、アフリカ大陸国際連合南スーダン派遣団の第五次派遣施設隊内では
盗難事件が相次いでいた
定年間近の自衛官・亀尾准陸尉と杉村陸士長が調査に乗り出すが
さらに不可解な事件が連続して発生する
謎の脅迫状
そして小銃弾の紛失
相次ぐ事件は何を意味するのか
日本から特別派遣されてきたちょっとオネエなキレ者
植木一等陸尉も調査に加わり
連続事件の謎に挑む
2015年第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作
「このミス」優秀賞だから推理ものかと思いきや見せ場は戦闘&自衛隊の日常
クライマックスの戦車を含む反政府軍
との戦闘シーンは迫力があり
PKOというやや特殊な状況下ではあるものの
自衛隊の日常の細かさは元自衛官ならでは
ただし、少々微妙なところもあるのは御愛嬌
そう言った意味では上記の内容紹介では不適切だ
と思ったのは私だけでしょうか
そしてこの著者が本当に言いたかったのは「深山の桜」のように人知れず黙々と任務を果たす自衛官の姿だと思いました
政争の道具に使う政治屋
や自分たちの得点稼ぎの駒としか見ない害務省
(あえての漢字です)の役人
そんな輩に翻弄されながらも淡々と任務を遂行する自衛官
登場する自衛官の中には官僚みたいな人物もいますが
そんな人はごく一握りだし出世はしないものだと信じたい
自衛官の服務の宣誓はご存知ですか
「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、(中略)事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」
これだけの内容を宣誓するのは自衛官だけだそうです
そして本文中にも出てきますが時の首相吉田茂氏が防大の卒業式訓示で語った「日陰者」発言
私も知り合いに「自衛隊が忙しくなったら日本は大変ですよ」と言ったことがあります3.11以降入ってきた自衛官にその覚悟があるのかは少々疑問ではありますが
自衛隊は最後の砦だと思います表舞台でスポットライトを当ててくれとは言いません
自衛隊員が心置きなく活動できるだけの法制度を整えてください
「あれを見よ 深山の桜 咲きにけり 真心尽くせ 人知らずとも」詠み人知らず
日本の独立と安全についてしっかり考えてくれる方が1人でも増えてくれることを願います