私が住んでいる町には、からくり人形を乗せたお祭りの山車がたくさん残っています。そのほとんどが江戸時代に作られた貴重な物で、市の文化財にも指定されています。お祭りの日には、華麗な人形の舞いを一目見ようと数多くの見物客で賑わいます。 

 からくりというのは、糸を操ったり、ぜんまいや歯車を組み合わせたりして動くようにした仕掛けのことをいいます。精巧な人形になると、手に持った筆を墨の入ったすずりにつけ、漢字を書くという動きをするものまであります。しかも、字を書いている途中に首を少し傾けるという仕草までするから驚きです。コンピューターやセンサーはおろか、電気も無かった時代に作られたものとはとても思えません。動力には、鯨のひげがぜんまいとして使われています。弾力性のある素材としてこれが最適だったからです。愛知万博では、同じ頃に作られた一度ぜんまいを巻くと、一年間動き続けるという万年時計も紹介されて話題を集めていました。

 からくりは、平和な時代の遊びの中に生まれた単なるおもちゃのようなもので、残念ながらこれらの技術を利用して、ヨーロッパのような産業革命は起こりませんでした。と言うのも、新しい技術を使って道具を作ることを幕府によって禁止されていたからです。知恵を競い合うことが発展の力になると考えられている現代から見ると、とても考えられないことです。江戸の技は、明治になってようやく西洋の技術と合わさって、ついには日本を技術先進国に発展させました。

 現在この地域は、ロボット開発の先進地として知られています。ある自動車メーカーでは、今後、家庭で家事を手伝ったり、介護や医療を支援したりするロボットを開発していくそうです。からくりの技と心は、形を変えて現代のエンジニアにも受け継がれているのです。