毎年、3月の初めになるとさくらの開花予想がニュースなどで流されます。この発表を聞いて、お花見や旅行のプランを立てる人も多いことでしょう。気象庁では、さくらのほかにもかえでやイチョウが紅葉日や、鶯やアブラゼミの鳴き声を初めて聞いた日なども調べているのです。

 日本では、ことわざなどに見られるように、生物の状態の変化を天候や季節の指標としてきました。猫が顔を洗ったら雨、渡り鳥の早く来る年は雪が多い、といったことわざを聞いたことのある人もいるでしょう。とりわけ、季節の変化に敏感だったのは農家で、自然の有様を見て農作業の目安にしていました。例えば、東北などではこぶしを田打ち桜ともいい、春にこの花が咲いたときにその年の田仕事を始めました。打つというのは土を耕すことです。また、春の雪解けと共に山に現れる残雪の形を目印にした地方もありました。日本には各地に「こまがたけ」という山がありますが、こまというのは馬のことで、雪形に馬の形が出ることなどからついた山の名です。農家の人は、鳥の声にも耳を澄ませました。ほととぎすは田植え鳥とも言われ、この鳴き声を聞くと田植えをしたものです。

 私たちの自然に関する感覚はすっかり鈍ってしまいましたが、生物たちは人間よりはるかに優れた感覚で季節を先読みして動き始めます。この生きた時計によって季節を知ることで、農家の人々は農作業の目印としたのです。生物季節の観測は、今では小学校でも行われており、子供たちが自然に親しむいい機会になっているようです。花や鳥の名前さえ知らなかった子が、さくらの開花を待ち焦がれるようになり、鳥や虫の様子に心を向けるようになるからです。また永年続けることで、その鳥の気候の変化を知る貴重なデータともなります。