すやすやと眠る赤ちゃんを抱きながら、お母さ んが優しく子守唄を口ずさむ光景は、人を穏やかな気持ちにさせるものです。中には、そんな場面を眺めているだけで、目を細めてしまう人もいるでしょう。それほどお母さんの子守唄は心地よいのです。多少音が外れていようと、かすれ気味の声であろうと問題は無いようです。ではどうして子守唄を聞くと人は眠くなるのでしょうか。
確かに「親に抱かれて声を聞けば安心する」という意見にも一理あります。赤ちゃんは胎児としてお腹の中にいる間もずっと、誰よりも近くでお母さんの発するさまざまな声に慣れ親しんできたのです。だから、その響きに安心感があるのは当然でしょう。しかしそれだけなら、何も子守唄に限る必要はありません。理論的には歌謡曲などでもいいはずなのですが、現実はなかなか難しそうです。
その理由の一つに、子守唄独特のテンポがあります。ためしに、自分がお母さんからよく聴かされた子守唄を思い出してみてください。ほとんどは、とてもゆったりしていて、しかも一定のテンポを保っているはずです。どうやらここが肝心なようです。人間の脳は、同じ速度で弱い刺激を連続的に与えられると眠くなるという性質があります。電車の揺れがいい例です。逆にリズムが不規則だったり、あまり速い曲では、どんなに大好きな母親の子守唄でも赤ちゃんは眠れないということになります。