じょんのび通信 No.9
「フォルトネットの冒険」
~未来を担う子どもたちへのつながり~
門脇庸子
十日町にまたひとつ、新しい運動が誕生した。それは、ひきこもり経験者たちの親の会「フォルトネット」だ。少し変わったこの名前は、「未来」という意味のフォルターナというイタリア語と、ネットワークという英語を合わせた造語で、義務教育を終え、現在どこからも支援体制のない若者たちの社会参画をサポートしようと、色々な取り組みに奔走している。
会員はいまのところ約10名。ほとんどがひきこもり体験者の親たちだが、会に賛同し協力者となった会員も増えてきた。
社会との交流から遠ざかり、部屋に閉じこもる若者たちを支えようと、行政や教育の現場では、ともすると指導計画をきっちり立てたり、上からの目線で意見をしたりしがちだが、フォルトネットの活動は、ひと味違っている。
毎月開催される【お茶にしようじゃねぇ会】は、参加費1回300円(会員200円)。中央公民館を会場にして、第1土曜日午後の講習会と、第3水曜夜のお楽しみ会の2本立てで、勉強と息抜きタイムをセッティング。講習会では、市の教育センター相談員などの講話で勉強し、お楽しみ会では、友人に頼んだり、自分たちが講師になったりして、お茶飲みしながら、新聞紙のプレゼント入れ作りや、編みぐるみの製作、フットケア講習などを実施してきた。
ひきこもり当事者の親の会が自分たちで立ち上がり、会の運営も行っているところは例がなく、フォルトネットは、市内外から注目を集め始めている。
開催チラシにも書かれているように、「現実を認めて、無理を強いるわけでもなく、各々のタイミングで一歩を踏み出すことが大切」と、ゆるやかなつながりの場を提供している。子どもたちがひきこもることで、親たちも苦しんでいる。その親たちが自分たちの体験を話したり、話さなかったりして、安心のできる場所を手に入れる喜びは、子どもたちにも伝わり、親同士の横のつながりだけでなく、ジグザグに交差した、いろいろな関わり合いが、不思議な波及効果を呼び起こしていて、将来の活動のアイディアも、次々に湧き上がってきているようだ。
まずは、先進地に学ぼうと、4月には秋田県藤里町社会福祉協議会への視察を企画中。ここは、「ひきこもり町おこしに立つ」という本でも有名だが、社協が中心となって、若者たちの社会参画をすすめ、めざましい効果を上げている地域だ。
豪雪地で冬の活動が停滞する、日照時間が少ないなど、十日町の不利な条件をどう逆手に取って、皆が育っていくか、視察の結果報告とともに、とても楽しみにしている。
誰だって、今、この時が一番新しい、自分のいのちの始まりの日。何年か前の自分は、年は少なくても、すでに遠く、古くなっている。積算年齢は違っていても、生きていれば、毎日のスタートラインは、だれでも同じ。いのちは一直線に、横につながっているのだと考えてみたことはありませんか?