「え、そっちが先?!」

ちょっと驚いて聞いてみた。

 

「本物の方は味を覚えてるはず、てか、この店のバーボン全部並べられても当てられるよ」

 

「「えええええええええええええ!!」」

知らなかった、まさかそこまでガチだったか!!

 

「う~~~ん、頼もしいねぇ~~~~」

マスター、おちゃらけているのは口調だけだ、目は真剣。

というか、優しく見守ってる感じだ。マスターがはるかちゃんを大事に育てているのは知っている。

 

「師弟対決ううううううう!!」

あいなちゃんも興奮を隠せない。

 

そして、一口飲んだ瞬間、迷いなし

「違うわね、別物よ」

断言。かっこいいwww

 

そして、ベストのポケットからメモ帳とボールペンを取り出す・・・

「どうせ、本物かどうかだけじゃ、ダメなんでしょ?」

 

「おぉ~~、いいね~~、そうこなくっちゃ~~~」

 

まさか、銘柄も当てにきたのか?

マスターに、というか私達にも見えないように何かを書いて・・・テーブルの上に、伏せた。

 

「では正解を発表します!、答えは、ホンモノ、でした~~~~」

 

「えええええええええええ!裏の裏ついてきたあああああwww」

と、はしゃいでは見せたものの、いやいやこれちょっと真剣に利き酒に挑戦したはるかちゃんには酷だよな・・・

りな&あいなだけならさっきの『本物ですら思い込みで違う味に思えてしまう』がオチで十分なんだけど・・・・。

う~~~ん・・・、途中からの参戦でそこまでは気の回しようもないか・・・。

なにやらはるかちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった・・・。

 

あいなちゃんも同じことを思ったのだろう。

多分気まずさを隠そうとしてるっぽいけど隠しきれてないwww

 

はるかちゃんのフォローもしたいけど、かといってマスターに噛みつく気にもなれないw

 

ふぅ、と、はるかちゃんが深い溜息を吐いた。

いや、あそこまでマジになっちゃっただけに始末が悪い。

はわわわわああああ、どうしよーwww

 

こんな時こそママの出番・・・と思ってちらりと見たんだけど、いつもとまったく同じ様子で静かに微笑んだまま動く気配がない。

こゆとこ見逃さないはずなんだけどな・・・、

いや、あるいは、お酒に関してだけは厳しいのかも・・・

 

しょうがない、ここははるかちゃんの参加は偶発的、ということで割り切きって場をつなげるしかない。

「うーん、一口だけ飲んだ時ちょっと違う気はしたんだけどな・・・

ちょっと過ぎてわかんなくなっちゃったんだよー」

 

「いやいや、りなちゃんのその味覚は正しかったんだよ、味違うからね」

 

「えええええええええ?!?!?!」

あっ・・・、お酒も自然の産物だもんな、しかもジャックダニエルみたいな規模ならいくつもの樽から生まれるのだからその誤差みたいなものもか?

あるいはワインみたいに年代で違うとか?

 

「実はさ、これかなり意地悪な問題だったんだ。お酒って、輸出する国によってそこの好みに合うようにブレンド変えるんだよ」

 

「えええええ?!そうなのー?!?!」

 

「だから、厳密に言うと、味は違うけどホンモノ、だね。俺の個人的な感覚だけど、スコッチやカナディアンに比べてバーボンは違いが少ないんだよな、だから難しかったんだ」

 

と、いうことは、はるかちゃんの答だって完全に間違えってわけじゃ・・・

てか、はるかちゃんはメモに何のお酒を書いたんだろう・・・

 

「例えば、海外行ってお土産で買ったお酒買はもちろんだし、あとは大手のお酒の安売りとかが自社ルートでその国の代理店通さないで仕入れると日本向けじゃないのが入ってくるんだ」

 

「「ほおおおおお・・・」」

 

「聞いたことないかな、並行輸入っていうんだけどさ、このなかm・・・」

 

と、マスターの解説の途中なのに、いきなりはるかちゃんがスッとメモに手を伸ばしひっくり返した。

 

?!?!?!

思わず身を乗り出してのぞき込む

メモに書いてあったのは・・・

 

『並行輸入』

 

「ぎゃああああああああ!当たってたあああああああああああああああ!!!」

 

「んん?、お店にあるのとは違う味、って意味よ。ほかのブランドとは言ってないわ」

はるかちゃん、淡々と言ってのけるw

 

「はるがぢゃんぢょおおおおおおがっごいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

あいなちゃん泣きそうな顔でうれしさ大爆発の絶叫、カウンターをバンバン叩きながら足をじたばたさせる。

ホント素直で優しくてかわいい・・・

てか、それぐらい気まずかったんだけどねww

 

 

f~~m・・・、オチをつけるなら、

『本物が1つとは限らない』・・・ってとこなのかな

 

ママが目を閉じてクスッと笑った。

マスターは自慢気な顔ではるかちゃんを見ている・・・

 

・・・・・・・・・ん?

んんんんん?

まさかこの人たち、はるかちゃんが当ててたのも、私達が外れたと思ってジタバタしてたのも見抜いてたんじゃ・・・

 

口に出して聞こうなんて気には、なれなかった。