一定時刻に為替相場が特定の条件を満たすかどうかを予想する「バイナリーオプション」を取り扱う外国為替証拠金(FX)取引会社が相次いで取引実績を公開している。今春にも導入される自主規制で、投資家への商品説明の徹底が求められるためだ。
バイナリーオプションは判定時刻の相場が投資時点より高いか安いかなどを二者択一で予想する商品だ。予想が当たると投資額に一定の倍率を乗じた金額が払い戻される。FX取引よりも単純なルールが個人投資家の人気を集めている。
ただ単純な仕組みばかりに投資家の目が向きがちで、業界の内外から「誰でも簡単に収益を得られるとの誤解を招く」との指摘が出ていた。FX各社は透明性の向上に取り組み始めた。
取引実績を開示したのは4社。昨年12月に取引のあった全口座のうち、月間を通じて損益がマイナスになった口座の割合は67~78%だった。つまり利益を出した投資家は2~3割にとどまる。
もっとも「最初に損失が出た時点で取引をやめる投資家が多い」(FX会社)ため、損失を抱えた口座が多めに表れる。
各社とも取引手数料を無料にしているが、隠れた取引コストもある。例えば払い戻し倍率が1.8倍の場合、1000円の投資を10回繰り返して予想が5回当たっても払戻額は9000円。総投資額の1万円に対して、1000円の「損失」が発生する。
言い換えれば、投資額の10%の取引コストがかかる計算だ。投資家の勝率が平均で5割なら、総投資額の10%はFX会社の収益となる。
実際は95%前後が予想を当てた顧客に払い戻されている。あるFX会社は「相場観を磨いた投資家も多く、実際の勝率は5割よりもやや高め」と打ち明ける。
各社はホームページなどで商品の仕組みをより詳しく説明している。投資家側もリスクをよく確認したうえで取引に臨む必要がある。
(日経QUICKニュース)