中世の西洋が舞台な感じのお話です。
最後にしかデジモン出て来ないけど、デジモン小説だと言い張ってみる。
誰も幸せにならないお話。
一応書くに当たって軽く時代背景的なの(家具とか道具とか)を調べていますが、作者は頭があまり宜しくないのでふわっとした知識でふわっと話を書いてます。ご了承下さい。
ーーこれは、魔女狩りが頻発していたとある時代のお話。
むかしむかし、小さな森に青年と娘が2人で暮らしておりました。
口数が少なく物静かな青年と、綺麗な黒くて長い髪が自慢の心の優しい娘の2人です。
彼らには物心がついた頃から家族がおらず、頼れる親族もなく……幼い頃からたった2人、寄り添い合い支え合うようにして生きてきました。
2人は幼馴染にして家族、兄妹であり、そして将来を誓い合った恋人同士でもありました。
大人になっても、ずっとずっと先の未来も一緒に居よう。
花の冠と草花で作った小さな指輪。
用意した品々はお世辞にも立派なものとも言えず、参列者も立ち合いの者もおらず、正式に教会などで式を執り行った訳でもありません。
それでも2人は森の中にあるシロツメクサの花が咲き乱れる花畑の中、幸せいっぱいの春に誓いを交わしたのです。
誓いを交わしてからも2人の生活が変わることはありません。
世間では何か良くないこと、理解し得ないことが起こる度にこれは魔女の仕業だと、アイツは魔女なのだと疑われては罪のない女性、時には男性も審問に掛けられ、魔女と決めつけられては処刑されておりました。
昨日まで笑っていたはずの隣人が魔女となり処刑されることもそう珍しくはない時代……世間から離れ、たった2人、森の中で暮らしている青年と娘は貧しいながらも幸せに暮らしておりました。
朝から晩まで働き、ようやく2人で生きていける分が確保出来るような、そんな苦しい生活でしたが、それでも2人は幸せだったのです。
物心がついた時、家族は居らず。
死に別れたのか捨てられたのか……それとも元から天涯孤独だったのか。
詳しいことは誰にもわかりません。
ただ青年にはいつも、どんな時も娘が側に居りました。
娘には悲しいことも辛いことも、嬉しいことも喜びも全て、分かち合える青年がずっと隣に居てくれました。
……2人分の食事を用意出来ず、1人分のご飯を2人で譲り合い分け合って食べることだってあり、当然足りずにお腹を空かせて眠れぬ夜を過ごす日もありました。
物心がついた頃から住んでいる、正しい知識もなく何度も作っては潰れた粗末な家で、厳しい冬の寒さに2人身を寄せ合い、震える身体を温めあった日もありました。
激しい嵐に軋む家に倒壊してしまうのではないかと怯え、震えて過ごした日もありました。
ずっとずっと、2人は一緒でした。
「どんな時もそばに居てね、この手はぜったいに離さないから」
「いつだって一緒に居るよ、これから先の未来も」
青年は愛する人が居ればそれでよかったのです。
娘は大切な人が笑って居てくれるなら幸せだったのです。
ただ2人で居られたなら、それだけで彼らは幸せだったのです。
けれどーー運命は残酷でした。
貧しいながらも幸せに、慎ましく穏やかに暮らしていた青年と娘に悲劇が訪れたのです。
悲劇は抗うことすら許さず青年と娘を引き離し、2人の幸せを奪い去って行きました。
森には邪悪な魔女と悪魔が住んでいる。
いつからかそんな噂が町で流れておりました。
良くないことが起こるのは魔女が呪っているからだ。
主人が死んだのは悪魔に殺されたからだ。
あの魔女さえ、悪魔さえ居なければ。
勿論青年と娘は何の関係もありません。
しかし確実に町の人達の怒りは、負の感情は彼らへと向けられました。
当時町に働きに出ていた青年は『悪魔』の疑いをかけられ捕らえられ、連行されて行きました。
何も知らず青年の帰りを待っていた娘もまた、『魔女』の疑いがあると家を訪れた兵士達によって捕縛されてしまいました。
町の者から罵倒され、石を投げられながら町の中を引き回された青年は町の広場で兵士によって首を落とされました。
ーー娘の見ている目の前で。
やめて、彼は悪魔ではないと、私も魔女なんかじゃない、どうか信じてと泣き叫ぶ娘の声には耳を傾けることなく。
青年は最期まで愛する人を、娘の身を案じながら、どうか彼女だけでも逃げて欲しい、生きて欲しいと願い、『悪魔』として殺されてしまいました。
亡くなった愛する人に駆け寄ることも、抱き締めることも。
その遺体を弔ってやることも出来ないまま、娘もまた引き摺られて『魔女』として処刑台へと立たされます。
娘の刑は火刑でした。
逃げられないように動きを封じられ、火を放たれ。
ぱちぱち、ごうごうと燃え盛る炎に娘は身体を焼かれて行きます。
生まれて初めて味わう痛みと苦しみでした。
痛みで強制的に流れる涙は熱気によりすぐさま蒸発して、白い肌は焼けて真っ黒になり、自慢だった長い髪も短くなってしまいました。
朝も昼も晩も関係なく炎は燃えて、視界は常に真っ赤で、痛くて辛くて苦しくて。
早くこの地獄から解放されたいと願いながら、それでも何故か娘は生きていました。
娘だけでも生きて欲しいと願った青年の『呪い』なのか、それとも別の要因によるものなのか……それは誰にもわかりません。
ただ、炎に焼かれて苦しみを味わい続けることになった娘は、最初は泣き叫ぶばかりでしたが、いつしか自分をこんな目に遭わせ、最愛の人を奪っていった世界に、町の人々に強い恨みと憎しみを抱くようになりました。
自分達は森でひっそりと暮らしていただけじゃないか。
誰にも迷惑をかけてはいない。
誰かに恨まれるようなことだってした覚えはない。
青年は真面目に働いていた、娘だって青年を支えようと精一杯尽くしていた。
なのに、この仕打ちはなんだ。
貧しいものは、弱いものはささやかな幸せさえ得ることを許されないというのか。
真面目に生きているものばかりが損をして、弱いもの達は淘汰されていくのが当たり前だというのか。
そんなもの達のために、私達は魔女と悪魔にされたのか。
彼らの自己満足のために、私達は、彼は犠牲になったというのか。
こんなものが運命?
ここで死ぬことが運命だと、魔女として死んでいくことが運命なのだと、そう言うのか?
嫌だ、こんなところで終わりたくない。
彼を奪ったこの世界に、彼を殺した者達に、裁きを下すまでは……!
「ゆるさない、私は絶対にあなたたちをゆるさない……!」
炎に身体を焼かれ、苦しみながら娘は世界を、町の人達を呪いました。
喉も焼かれて声なんてとっくに出なくなっているはずなのに、娘はぎろりと自分を囲む者達を睨みつけました。
その表情にはかつての優しかった面影は全くなく。
ただただ強い恨みと憎しみだけが残っており。
そんな凶相を浮かべた娘を恐れた兵士達が娘を追加の薪を投入し、娘を更に燃やそうとしました。
全て燃やし尽くして……跡形もなく焼き払ってしまえば、もう恐るものはない、そう思ったのです。
しかしーーより勢いを増した炎の中、兵士達が見たのは笑顔でした。
とびきりの笑顔を浮かべた、娘がそこに居たのです。
やがて娘が炎の中に飲み込まれて、見えなくなった後。
広場に1つの咆哮が響き渡りました。
地獄の底から聞こえてくるような……とてもこの世のものとは思えぬ、恐ろしいその咆哮は聞いたものをその場に縛りつけます。
今すぐにでも逃げ出したくて堪らないのに、身体は石になったように重くて動かなくて。
処刑台に固定された視線のまま、人々は目にしました。
炎の中から現れる一対の翼を。
蛇のように長い胴体、鋭利な金色の刃が側面から生えた腕に、凶悪な顔つきをしたその生き物はまさしく伝承の中で語り継がれてきた、御伽噺の中の存在のはずでした。
でも、確かにその生き物は今ここに存在しているのです。
炎の中から刃と同じ金色の双眸が人々を睥睨しておりました。
それは、炎と同じ紅き身体を持つ竜でした。
ぐあと大きく開かれた口から吐き出された、娘を苦しめたものと同じ紅蓮の炎は広場に集った人々を呑み込んでいきました。
ーー愛する人を奪われ、自らも魔女として処刑された娘は世界を恨み憎しみを抱いたまま亡くなり。
世界に災厄をもたらす悪しき竜として生まれ変わったのです。
あとがき的な。
今回は絵本とかそういう物語調な感じでふわっと書いてみました。
昔、魔女狩りが流行ってた時代に生き、悪魔だ魔女だと言われて殺されてしまった名もない青年と娘のお話です。
幸せからドーン!と落とされたお話でもありました。
そして最後に出て来たのは作者が大好きなメギドラモンになります。
青年も娘も幸せになってないけど、最後にメギドラモン出て来てしまって町の人達の今後も幸せにはならないので皆平等です。
炎の中からバサッと翼広げてシルエットが登場するメギドラモンかっこいいよね。
この後どうなるかは考えてないですけど、娘を火刑にし、娘の愛する青年を殺した町の人達は娘が焼かれた炎と同じものに焼かれる運命なんじゃないでしょうか。