ヨーロッパには、ロシアを含めて45の国がある。そのうち国土面積が日本より広いのは、ロシア、ウクライナ、フランス、スペイン、スウェーデンの5か国だけ。小さな日本も、ヨーロッパでは「大国」に属する。一方歴史の荒波に揉まれながら、ミニ国家が多数残っているのもヨーロッパだ。世界のミニ国家上位10か国のうち、5か国はヨーロッパにある。きょうはその国々を訪ねてみたい。


世界最小の主権国家はローマ教皇が統治するバチカン市国である。東京の新宿御苑、上野公園、代々木公園は、いずれもバチカンより大きい。2月18日の記事「永遠の都ローマ 」で書いた通り、ローマ観光の魅力の一つは、バチカンのサン・ピエトロ寺院やシスティナ礼拝堂を訪ねることだ。日本も含め世界中の国と大使を交換している。共産国家の中国・ベトナム等とは国交がない。


二番目に小さいのはモナコ公国。地中海に面した山すそにある。皇居とほぼ同じ面積。主権国家だが、防衛は周囲を囲んでいるフランスにゆだねる。カジノやF1レースで有名。観光で潤い、所得税がないタックス・ヘイヴンなので、億万長者が居住する。コートダジュール旅行のついでに訪問した。細い路地の旧市街を歩き、王宮横の広場から、ヨットハーバーと地中海の眺めを楽しむ。


Chopinの散歩道-モナコ1
(写真:モナコの王宮前広場から地中海を望む

6歳の息子・満6か月の娘とともに 1988.8.24)


三番目はサンマリノ。3世紀末迫害から逃れたキリスト教徒が建国した「世界最古の共和国」。イタリアのアドリア海沿岸から少し内陸に入った丘の上にある。山手線の内側と同じ面積だが、人口は3万しかいない。過去何度も侵略されそうになったが、丘の砦で守り抜いた。観光と切手発行が主な産業。私はこの国に足跡を残すため、ローマからフィレンチェに行く時、わざわざ遠回りした。


Chopinの散歩道-サンマリノ
(写真:サンマリノ共和国を守ってきた岩峰上のグアイタ城塞 筆者撮影)


四番目はリヒテンシュタイン。景色のよいアルプスの山間にあり、スイスとオーストリアに接する。面積は東京23区の約1/4。神聖ローマ帝国が滅んだ時、なぜか大公が統治する独立国として残った。外交・軍事はスイスが担当する。通貨もスイスフラン。入国時にスイスの係官が旅券をチェックする。交通の便はよくないが、ハイテク企業が多数立地するのはタックス・ヘイヴンだからだ。


Chopinの散歩道-リヒテンシュタイン
(写真:スイスとオーストリアに挟まれたミニ公国リヒテンシュタイン 筆者撮影)


五番目が地中海のシチリアの南に浮かぶ島マルタ、六番目はピレネー山中にあるアンドラ。いずれも私はまだ行ったことがなく、今後も訪問する可能性が低い。マルタは1964年に英領から独立した共和国。横浜市とほぼ同じ大きさのアンドラは公国だが、大公はいない。スペインの一司教とフランス大統領の二人を国家元首とする。住民はバルセロナと同じく、カタルーニャ語を話す。


Chopinの散歩道-アンドラ
(写真:ピレネー山中のアンドラ公国 出典:National Geographic)


以上のように、島国のマルタは別にして、ヨーロッパのミニ国家はいずれも周辺国の保護下にある。バチカンはスイス人衛兵百人がいるだけで、警備でさえイタリアに依存する。そのような状況下で、主権国家が存続するというのは、いくら歴史的経緯があるにせよ、何とも不思議な現象だ。地域全体が中世の博物館のようなヨーロッパだからこそ、都市国家が今も存続しているのだろう。