桜の名所が近所にあります。
その桜の木々の蕾がほんのり色付いて来始めました。
私の大好きな季節がやって来ます。
「今年も又会えるね」
って桜の木々に話し掛けると、
「そうだけ、もう少し先だけれどね」
って桜は言いました。
「…来年はどうなるか分からないけれど、今年もまた花を咲かせられそうだよ」
と桜は寂しそうに言いました。
この桜の名所は大きな桜の通りですが、人間の身勝手でこの先の方は道路拡張の為に桜の木々が切り倒されているのです。
かろうじて、無事な場所の桜達は静かにこう言いました。
「時のみが知る事だよ」
って。
「そんな悲しい事言わないでょ」
と私が言うと、
桜はふと寂しそうに笑いました。
桜はこの先の桜達の運命を知っているのです。
桜は人間と共存する為に、電信柱を避ける様に伸びています。
障害物を避ける様に伸びていて、人間の邪魔になる箇所はばっさばっさと切られています。
それでも、毎年辛い冬を乗り越えて花を咲かせ、私達の心を和ませてくれているのに、人間はやっぱり勝手な生き物です。
「それでも運命なんだよ」
と桜が言いました。
この出会いも、そして、自分の未来も全てさだめなのだと、桜が静かに語ってくれました。
この桜も来年はどうなっている事でしょう。
この地に何年存在して、どれだけの人々を癒して来たのでしょう・・・。
きっと私が産まれるずっとずっとず~と前からここに居て、人々と共存して来たのでしょう。
「時代の流れだよ」
と桜は言いました。
その時代の流れに私達は何処迄行くのでしょう。
「何しているの?」
その時、後ろから相方が来ました。
「うん、桜と話をしていたの」
「ふ~ん。桜は何だって?」
最近、相方は何を聞いても驚かないなぁってふと思いました。
(アヤシイ・・・)
って顔ももうしません(笑)
「見て!この桜。電柱を避けて伸びているんだよ」
「本当だ!すっげ~。こうやってちゃんと邪魔しなしない様に考えているんだなぁ。この木でどの位の樹齢なんだろうね」
っと相方も感動していました。
「人間は勝手だね」
「人間は勝手だね」
お互いにそう言いながら、この桜に何もしてあげられない歯がゆさを感じていました。