- アメリカはなぜイスラエルを偏愛するのか―超大国に力を振るうユダヤ・ロビー/佐藤 唯行
アメリカの政界のイスラエルびいきは、誰もが知るところ。
強力なユダヤロビーの存在であるとか、
政財界に多くの重要人物を輩出しているなどその原因は、さまざま指摘されてきた。
しかし、その詳細までが明らかにされることはなく、影響力の大きさ故に、
憶測ばかりが先行してきたというのが実態。
アメリカのユダヤ・ロビーについて書くことはジャーナリズムのタブーなのだそうだが、
著者はこの本でそのタブーを初めて破ったとしている。
この辺はどうなのか分からないが、たしかにある種のタブーが存在しているらしいことは
何となくだが感じるところではあるし、この手の本がアメリカで出ることはないんだろうなと。
世界各地にユダヤ人は散らばっている。
しかし、日本にいて、ユダヤ人やユダヤ文化に接する機会はほとんど無いに等しい。
せいぜいパレスチナ関連を「人権問題」として、とりあげることでお茶を濁す。
そういう意味でも、日本人にとってユダヤとは、漠然とした「得体の知れないもの」である。
「ユダヤ陰謀説」などの言葉が横行する理由も、その辺にありそうな感じがする。
この本を読むとあれもユダヤ、これもユダヤ、みんなユダヤという感じになってしまうが、
やはり日本人には欧米人と違ってユダヤ人を肌感覚で捉えることは難しいと思う。
ならば、ユダヤ人の実力はどの程度のものなのか、
その原動力とこれほどの力を発揮するメカニズムはどうなっているのか。
本書は、この点を現代の米国政治を舞台に明らかにしていく。
ユダヤの米政界への影響力の源泉は何といっても圧倒的な資金力。
大統領選であれ、議会選であれ、選挙にはテレビCMの時間を
買い取るなど巨額の資金が必要となる。
逆に言えば、資金を持つ者が勝つといっても過言ではない。
興味深いのが、ダニエル・イノウエがユダヤ票に支えられているということ。
イノウエがユダヤ教への改宗も考えていたということの真偽は不明だが、
日系人が経済的にも集票的にも大きなパワーを持ち得ない現状を考えると、
その点はイノウエの多選の説明にもなるのだろう。
さらにユダヤ人の投票率は他のエスニックグループに比べて非常に高く、
組織票が大きくものを言う。
こうして、ユダヤロビーは、ユダヤびいきの議員、大統領を支援し、
反ユダヤの候補をことごとく(?)落選させてきた。
ユダヤロビーの活動で敗北した顕著な例として、ブッシュ元大統領を挙げている。
著者は「一九九二年選挙におけるブッシュの敗北は、
その後の大統領たちに忘れ難い教訓を与えたと言われる」と述べている。
著者は最後に、「『ユダヤ』という視点から米国の外交・国内政治を読み解くこと」
を目的としたと記す。
国際情勢の中で中東がかつてないほど重みを増す現代では、
中東政策は米国の外交にとって大きな柱となっているようだ。
米国政治の展望を一端でも理解するには、このような書籍のような視点も必要であると思う。
が、事実である事、憶測である事が交錯するのも気になるので、
一つの考えとして、一歩引いた形での読み方をオススメします。
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