合会(互助会・無尽講)とは?
(一)合会の仕組みと法的定義
現代の銀行制度が普及する以前、台湾で民間の資金調達手段として広く利用されていたのが「合会(ごうかい)」です。一般には「互助会」や「標会(ひょうかい)」などと呼ばれ、貯蓄と借入れの機能を兼ね備えた仕組みで、参加者同士の信用や人間関係を基盤として運営されていました。
台湾民法第709条の1によれば、合会とは、会首が2人以上を会員として招集し、会費の支払いおよび入札(標会)を相互に約束する契約をいいます。
簡単にいうと、複数の人が共同で資金を積み立て、そのうち資金を急いで必要としている会員が、支払うことのできる利息相当額(標金)を提示して入札し、その期の資金を受け取る仕組みです。
例えば、Aさんが12人、毎月2万台湾ドル、期間1年間の互助会を立ち上げたとします。毎月会員が入札し、各会員には原則として1回だけ落札する機会があります。最も高い金額を提示した人がその月の落札者となり、全員が拠出した総額を受け取ります。その際に提示した標金は、実質的には他の会員に支払う利息に相当します。
(二)合会でよく使われる用語
参加する前に、以下の用語を理解しておくことが重要です。
- 会首:合会の主催者。会員を集め、会費を取りまとめます。第1回は通常、会首が直接資金を受け取り、利息を支払わないため、その後の債務不履行についてより重い法的責任を負うことがあります。
- 会脚:会首以外の参加会員。
- 会費(会款):各期に支払うことを約束した金額。
- 活会・死会:まだ落札して資金を受け取っていない会員を「活会」、すでに資金を受け取り、その後分割して支払う会員を「死会」といいます。
- 倒会:すでに資金を受け取った会員や会首が、その後の会費の支払いを行わなくなり、資金の循環が途絶えること。法的には債務不履行の問題が生じます。
- 標金・落札:入札者が支払うことを提示する利息相当額を「標金」といい、開札日に最も高い金額を提示した者が落札し、その期の資金を受け取ります。
(三)内標と外標:利息の計算方法の違い
利息の控除方法によって、実務上は大きく2種類に分けられます。
1.内標(比較的普及しており、計算が分かりやすい方式)
利息相当額をあらかじめ会費から差し引く方式です。
例えば、毎月の会費が7,000台湾ドルで、その月の標金が1,000台湾ドルの場合、活会の会員は6,000台湾ドル(7,000-1,000)を支払います。
2.外標(利息を会費に上乗せする方式)
利息相当額を会費とは別に加算する方式です。
例えば、毎月の会費が3,000台湾ドルで、ある会員が500台湾ドルの標金で落札した場合、活会の会員は3,000台湾ドルを支払い、落札後の死会会員は毎期3,500台湾ドル(3,000+500)を支払います。
合会が悪夢に変わる:「倒会」について知っておくべきこと
(一)倒会とは?相互の信頼関係が崩れたとき
合会は、本質的には会員同士の信頼関係を基礎とする民事上の契約です。
「倒会」とは、さまざまな事情によって合会を正常に継続できなくなり、資金の循環が途絶えることをいいます。典型的には、会首の財務状況が悪化して姿をくらましたり、一部の会員が落札後に予定どおり会費を支払わなくなったりすることで、資金の流れが破綻するケースがあります。
(二)倒会の主な3つの原因
合会が機能しなくなる原因はさまざまです。
1.会首の財務・信用状況
会首自身の財務状況が悪かったり、集めた資金を高リスクの投資に使用したりすると、資金繰りが悪化した際に合会全体が崩壊する可能性があります。
2.参加者の履行能力
死会会員(すでに落札した会員)が経済的な事情から会費を支払えなくなると、活会会員(まだ落札していない会員)が資金を受け取る権利に直接影響します。
3.経済環境の変動
景気の低迷や突発的な経済危機によって、すべての会員の支払能力が低下し、債務不履行の可能性が高まることがあります。
(三)倒会は民事問題?それとも刑事事件?2つを区別する
1.民事上の損害賠償・返還請求
台湾民法の合会に関する規定によれば、合会を継続できなくなった場合、会首や責任を負う会員は、原則として支払義務を負うことになります。会員は法的手続を通じて、未払いとなった会費等の返還を請求することができます。
ただし、実際に回収できるかどうかは、債務者の名義に強制執行の対象となる財産が存在するかどうかに大きく左右されます。
2.刑事責任
すべての倒会が犯罪になるわけではありません。
例えば、会首が合会を始めた当初から資金を持ち逃げする意思を有していた場合や、架空の会員を設定して不正に落札するなどの行為(いわゆる幽霊会員・名義貸し)があった場合には、台湾刑法第339条の詐欺取財罪に該当する可能性があります。
また、他人の署名を偽造して会員として加入させた場合には、台湾刑法第210条、第216条の文書偽造等の罪に問われる可能性があります。
一方、単に合会の運営に失敗し、資金繰りが悪化して支払えなくなっただけであれば、通常は民事上の債務不履行の問題であり、必ずしも刑事犯罪が成立するわけではありません。
手続の選択: 民事上の請求については、弁護士に依頼するか、自ら裁判所に訴えを提起して賠償・返還を求めることができます。刑事事件に該当すると考える場合には、警察に届け出るか、検察庁に告訴することができます。なお、私人訴追(自訴)については、法律上、弁護士を選任して裁判所に提起する必要があるため、この点には注意が必要です。
倒会が起きたらどうする?状況を立て直す3つのステップ
(一)第1ステップ:法律関係を整理し、証拠を保全する
合会が破綻した場合、まず行うべきことは、法律関係を整理するとともに証拠を確保することです。
具体的には、以下の資料をできる限り完全な形で集めます。
- 合会の会員名簿(会簿)
- 入札記録・標単
- 銀行振込記録
- 会費の受領書・領収書
- LINE等のメッセージ記録
- その他、会費の支払いや落札状況を確認できる資料
これらは、後に検察庁へ告訴する場合でも、裁判所に民事訴訟を提起する場合でも、重要な証拠となります。
また、合会をめぐる紛争では、台湾民法上の債務不履行と台湾刑法上の犯罪の双方について専門的な判断が必要となる場合があるため、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
さらに、複数の活会会員がいる場合には、情報や資料を集約して共同で対応することで、手続費用を分担し、交渉における発言力を高めることもできます。
なお、自訴を提起する場合には、法律上、弁護士による代理が必要となります。
(二)第2ステップ:台湾民法第709条の9を活用する
あまり知られていませんが、台湾民法には倒会を想定した規定として第709条の9があります。
会首が破産、逃亡その他の事情によって合会を継続できなくなった場合、法律は活会(まだ落札していない会員)に対して、主に次の4つの保護を与えています。
- 平均して交付する制度
会首およびすでに落札した会員が支払うべき各期の会費について、原則として各期の標会日に未落札会員へ平均して交付することとされています。ただし、別途の約定がある場合は、その約定が優先されます。 - 会首の連帯責任
会首は、すでに落札した会員が支払うべき各期の会費について連帯責任を負います。つまり、死会会員が支払えない場合には、会首に対して直接請求することができます。 - 2期分の遅延で全額請求が可能
会首またはすでに落札した会員が支払いを遅延し、その遅延額が2期分の合計額に達した場合、未落札会員は残りの会費全額の支払いを請求することができます。1期ずつ支払いを待つ必要はありません。 - 代表者の選任
未落札会員は、共同で1名または複数名の代表者を選任し、関連する手続や請求を処理することができます。これにより、集団での債権回収をより効率的に進めることができます。
(三)第3ステップ:訴訟と交渉を並行して進める
未払い金を回収するためには、大きく2つの方法があり、実務上は両方を並行して進めることもあります。
1.法的手続を利用する
裁判所に訴えを提起し、会首または連帯責任を負う会員に対して、未払い金の返還・支払いを請求します。
会首について、架空の会員を利用した不正な落札や資金の持ち逃げなどがあり、詐欺罪が成立する可能性がある場合には、民事上の請求と併せて刑事責任を追及することも考えられます。
ただし、刑事裁判で有罪判決を得たからといって、当然にお金が戻ってくるわけではありません。 最終的に金銭を回収するためには、原則として民事上の強制執行等の手続が必要です。
また、刑事責任を追及する場合には、台湾刑法第80条に定められた公訴時効にも注意し、時間の経過によって追訴権を失わないようにする必要があります。
2.直接交渉する
裁判には時間と費用がかかるため、債務者と直接交渉し、債務の弁済について合意する方法もあります。
例えば、
- 分割払いによる返済
- 一定額を一括で支払うことによる和解
- 不動産その他の財産を担保として提供する
- 保証人を付ける
などの方法が考えられます。
合意書を作成する場合には、将来相手方が約束を履行しなかった場合に備え、公証人による公正証書の作成や、強制執行認諾条項を付けることも検討するとよいでしょう。これにより、相手方が後に約束を破った場合、改めて通常の民事訴訟を提起することなく、強制執行に進める可能性があります。