1000万円のマンションと100万円のケリーバッグがあったとしよう。マンションはケリーバッグに比べて絶対額が高い。しかし1000万円のマンションは、平均的なマンション相場と比較すると、けっして高いとは言えないし、ラグジュアリー感も感じられないだろう。むしろマンションに比べて絶対額の低いケリーバッグの方に、人は至上の賛沢を感じるだろう。
値段の価格差や絶対額だけでは、顧客はラグジュアリーという体験を得ることはできないのだ。
私の結論としては、ラグジュアリーとは価格の差や絶対額にあるものではなく、高品質に裏付けられた、利用者の心の中に生ずる夢や共感や憧れの体験なのである。
だからグッチグループでは、特に「夢を売ること」にこだわっていたのだ。
「品質は人々の記憶に残るが、価格は忘れられる」
私が考えるブランドビジネスの目標は、次の2点を同時に実現することだ。
ブランド価値を上げること。
利益を極大化すること。
このふたつの目標は、二律背反の性格を持っている。