とある妄想物語 scene3
「ねぇ、これからまた別の人のトコに行くの?」
肌をなぞる生ぬるい風が夕暮れを教えてくれた。
朝から買い物に付き合ってもらったり、映画を観たり
今日は一日すごく楽しかった。
でも・・・きっと、そんな最高の一日で終わるはずがないと思って
わざと地雷を踏んでみた。
「・・そうだね。どうしても会いたいっていう子がいて・・。ごめんね。
K希は少し寂しそうに微笑みながら答えた。
やっぱりね。
「いいよ。K希が悪いわけじゃないし。最初からわかってて
一緒にいてもらってるんだから。」
とは言ったものの、内心はさっきまで高鳴ってた鼓動が
急激に小さくなるのを感じてた。
「どうしてボクってこうなんだろうって、
自分でも悩むんだけどね。
今のところよくわからないままなんだ。ごめん。」
K希はそういうとバツが悪そうに、飲み干したコーヒーのカップを
くずかごに投げ入れた。
不思議。私もどうしてこんな難しい関係を了承してるのかわからない。
どう考えても不毛だし。
そばにいたいからなんだろうなぁ・・・。やっぱり。
「いいよ。謝らなくていいよ。なんか気を遣われると余計に寂しいし。
K希が決められないのはわかってるから。
でも、それでも他の子よりも好きなトコロが1個でもあったら嬉しいな。」
K希はふっと笑うと「じゃあ・・」と少しためらいがちに挨拶をして
私の元を去っていった。
生温かかった風が、いつの間にか冷たくなっていた事に気付いた。
おもむろにキーを回して、車のエンジンをかけながらぼんやりと考えた。
いろんな考えが浮かんでは消え、浮かんでは消え、頭の中で毛糸が
絡まりあっていくようだった。
他の子と比べる事でしか自分の位置を感じることが出来ないなんて
ゆくゆく私も寂しい女だと思う。
でもお陰様で、自分磨きを怠った事は一日もないよ。
そういう点ではK希には感謝しないと。
K希は私のものにはきっとならないと思う。
なんとなくだけど、そう思うんだ。
だけど、この宙ぶらりんな関係が、案外心地よかったりもするんだよね。
互いを束縛しあわない、自由な関係。
互いが必要と感じるときだけ、そばにいる関係。
「今」はそれが楽なのかも。
でも、将来は?
友達がどんどん結婚や出産の報告をくれるたびに
少し焦った気持ちにもなる事は事実。
「今」のままの私じゃあ、結婚なんて相当先の話だよ・・・。
闇雲に車を走らせてたどり着いた先は、1m先も見えないような
暗がりの中だった。
そう・・ここでK希と星空を眺めた。
満天の星空の中を時折光の矢が走るのを見て、
あわてて願い事を考えた私。
あの時の願いは今でも叶っていないけどね。
大地の静けさと、あまりにも美しい星空に堪えきれなくなって
思わず「好き」と言ってしまったけど、K希は「・・うん」と頷いただけだった。
あの時からK希と私の間には、薄い壁があるんだろうなって思った。
でもね、そんなコトはどうでもよかったんだ。
K希が私を好きかどうかなんてコト、たいした問題ではなかったの。
私には、私の存在する理由さえあればいいの。
K希は私がK希に依存してしまっている事に
ためらいを感じているんだろうけど、違うわ。
K希が私を必要としてるのよ。
K希のコトを、いてもいなくても、どうでもいいとしてる私の事を
気にしてるのは知ってるの。
でも、恋人としてじゃないんだろうけどね。
いつからか、私はK希のママみたいになっちゃったし。
年上が仇になったのかもしれないな・・。
あーあ・・なんて不毛な恋。
他にイイオトコいないかしら?