赤い珊瑚のフィクションです。

その頃は、敦美と繋がっていた。

敦美はいわゆる夜の蝶なのだが、

日本で1番高級だと有名な場所の人だ。

僕より10歳ほど若く、とても綺麗で落ち着いていた。

様々な偶然が重なって作られた縁だったが、

あまりにも住む世界が違うので

僕は少なからず無理をしていたような気がする。

敦美のピアスは耳だけで特に太くもなく

上品な飾りがいつも控えめにぶら下がっていた。

生活の時間帯が違うので

会える時間は少ない。

『これから仕事です。行ってきますね。』

その日美容院で念入りに整えた髪と衣装の写真と共に

なぜかいつも敬語のメールが毎晩届く。

それだけで幸せだったと思う。

ある日、おへそにピアスを開けたいと頼まれ、

僕は受け入れた。

それから少しだけ時間が過ぎて、

ある特別な日を二人で迎えた時。

特別注文であつらえたピアスをプレゼントした。

彼女が大好きだと言っていた赤い深海珊瑚。

レッドコーラルが嵌め込まれたピアス。

上品で落ち着いた彼女にぴったりだった。

それからしばらくして

彼女とは別な道を歩むことになったけれど

素敵な旦那様と出会い、

可愛い子供がいると、人づてに聞いて

嬉しいような、何やら寂しいような気持ちが

同じカップに注ぎ込まれているのに混ざりあわず、

いつまでも渦となって周り続けている。

写真はイメージです。

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