赤の正体

これらの絵に使われている赤い絵の具は“岩絵具(いわえのぐ)”というもので、とくに赤は“辰砂(しんしゃ)”でつくられた庶民には考えられないような高価な絵の具だったようです。
たぶんボクもこの絵の具を持っていたら、若冲のように赤いものを探してその絵を描きたくなったと思います。この絵の具を使って「人を魅了するような絵を描きたい。」という熱い想いと、彼らにそう思わせた岩絵具という文明の力が、この時代の絵の一つの魅力のようにも思えます。
葛飾北斎の作品の中に『八方睨み鳳凰図』という巨大な作品がありますが、これはなんと絵の具代150両を費やした作品と記録されています。
現代もまだ画材として岩絵具が使われているのか?とか、どこでそれを見ることができるのか?とかは、興味があれば自分で調べてみてください。きっとはまってしまいますよ。
芸術はつねにその時代の文明の背景があって、知れば知るほど引き込まれてゆくので楽しいですね。
昨日のブログで紹介した赤の素材が何なのかをここで明かすことはできないのですが、塗料では絶対に表現できない“赤”というのがどういうものなのか少しおわかりいただけたかと思います。
≪追記≫
先月、葛飾北斎の「赤富士」を含めた富嶽三十六景が展示されていた熱海の「MOA(エムオーエー)美術館」に、今月は尾形光琳の紅白梅図屏風が展示されているそうです。