珍しく猫から直電…

「おじぃちゃんが亡くなったんです…」


泣いたらしく…

猫は鼻声だった…


急な訃報に俺も戸惑い…

返す言葉に詰まる…

話は…

上司の批判へ…

「ァタシ…明日から夜勤なんですけど…通夜が明日で、夜勤が潰れるのはいいとして…」

「明け、休み分で3日間の忌引消化って酷くないですか?」

確かに酷いが…

うちの施設長なら、それは普通の対処だ…


何とか宥める…


最近は職場批判と上司への憤りを俺にぶつける猫…

本当に辞めたいんだな…


複雑な気持ちだ…
音をたてずにドアを閉め…

非常階段を降りる…

素早く2Fフロアーに侵入した…

早速猫を見つけ…


「よぅ!」

「来ちまったドキドキテヘ」

と、わざとおどける…

猫:もぉーホント無茶しますよね…大丈夫なんですか?

俺:大丈夫じゃないよ★でもお前に逢いたかったんだ…

迷惑だったか?

猫:うにゃ~

猫:そんな事なぃですぅ




その言葉、それだけ聞けば…

俺は十分だった…

問答無用で階段室に連れ込み…骨が軋む程猫を抱き締めた…

何度か猫の苦しそうな息遣いが…

俺の首元に感じられたが…

唇で塞いだ…

というより…

貪った…


その時…

ブルブルブルブル…


俺の胸に振動が…

猫もハッと我にかえる…

猫の胸ポケットには…

ナースコールを受信するPHSが…
バイブを鳴らしている…

猫「はぁはぁ…行かないと…」


着衣の乱れを直しながら猫は行ってしまった…


俺も何食わぬ顔をして…
元の部署へ戻った…


その後もメールで猫とやり取りがあったが…


先程の俺の行為には一切触れてこなかった…


俺は思った…

そろそろ下降線だな…

今度は俺が放置される時が来る…

まぁ…

いいか…



でも…


アイツ…

太ったな…

22時過ぎ…

お互いの夜勤パートナーが休憩に入る…

残りの勤務者は…

俺…
猫…
ナース…
の3人…

ナースが3Fのステーションに上がってくる…

2Fには猫のみ…

問題は、ステーションに設置されているモニターに映る事なく、どのルートで2Fに降りるかだ…


1番安全なのは西非常階段から降りるルート…

職員のみが使用出来るマスターキーでドアを開け2Fへ降りるパターン…

その場を守るのが監視カメラ4番…

これをどうにかしないといけない…

モニターの前にはナースが居る…

しかし…

元々4番は映りが悪い…
赤外線が劣化しているのか暗視能力が著しく低下している…

そこに付け込む…

廊下の照明を少し落とすだけでモニターの画面はブラックアウトに限りなく近くなる…

ステーションに戻るとナースは気付いていないようだ…

ナースに「ラウンド行ってきます」

と伝えて…

俺は行動を起こした…

続く…