同じ夢を何度も見る 目






私は仰向けで、水の中に沈んでいく
それが海なのかどこかなのかわからない



目は開いていて見てはいるのだが


何しろ水の中から見上げているので


ぼやけていてハッキリ見えない








だが誰かが

男か女かわからない誰かが私を上から覗きこんでいるのがわかる











そして私はその人を見ながら沈んでいくのだ




苦痛や怖れは感じない


そこにあるのはとてつもない絶望感と寂寥感だった











春の陽射しを感じるようになってきたある日 晴れ




夫がドライブに行こうと言ってきた



珍しいこともあるもんだと思いつつ出かけた





しばらく車を走らせ、人通りのない山道に車を停め、夫とブラブラ歩く










春が近いとはいえ、まだまだ風は冷たい


だが間違いなく春は近づいてきており



凍り付いていた川も所々溶け始めてきている










夫が橋から身を乗り出し指をさして言う


「おい、魚が泳いでるぞビックリマーク 見てみろよ音譜








まぁ子供みたいにはしゃいじゃってラブラブ


はいはい、どれどれ!?






夫が場所を譲ってくれ、私も橋から身を乗り出して覗きこむ











ビックリマーク











『奥さん、残念ですが…』









最後までの言葉を聞かずに私は夫の亡骸にしがみつき泣き叫んだ



ように見えるフリをした




救急のドクターや救急隊員

レスキュー隊員

おまわりさんたちが気の毒そうに私を見ているのを痛いくらい背中に感じる








そりゃそうだろう



夫の亡骸の横には夫の浮気相手と思われる女の亡骸があるのだから










『奥さん、こんな時に悪いんだけど話整理させてね
聞かしてもらえるかい。』






はい、

夫が用あるから出掛けるというので


私買い物したいから途中まで乗せてもらったんです



でも何となく様子おかしかったんであとつけたんです






そしたら、あの女の人乗せたんで、浮気だってわかりました




夢中で追いかけました、車だから見失ったけど山方面だったからとにかく追いかけました



山道に車停まっていたんで見たら誰も乗ってませんでした



そのまま進んで行ったら
橋で夫と女がもみ合っているのを見つけました



どうしていいかわからなくて見ているうちに


二人共橋から…









私は自分もぐしょ濡れのからだをガタガタ震わせながらそう話した








『なるほどわかったよ奥さん。


奥さん旦那さん助けようとしてこんな濡れてねぇ。



この時期アソコは水かさ増すし落ちたらまず無理なんだよ



人通りもないからねぇ


いや残念だったねぇ。』











わかってる










あの時、夫は私を突き落とそうとしたのだ




私はとっさにしゃがみこみ、夫の足元を掬い上げた。


夫は叫びながら川に落ちていった










すると橋の陰から女が飛び出してきて

私を突き落とそうと掴み掛かってきた






夫の浮気相手だとすぐわかった




夫が浮気しているのはわかっていた



だが一時的なもんだろうと目を瞑っていたのに




二人で私を殺そうと計画していたなんて





私は女と揉み合いになり、あとは無我夢中だった




どうにか女も橋から突き落とし、私は急いで下までかけおりた






夫は岸からはい上がろうとしていた



私は川に入り、夫の頭を押さえつけた



夫はしばらく藻掻いていたがすぐダランとなった




あの女が流れてきた



私はためらわず女も沈めた










『奥さん、気を落とさないでね。



旦那さんの分も生きなきゃだめだよ


いろんなこと言う奴もいるだろうけど


負けるんじゃないよ。』








おまわりさんがやさしく私に声をかける












わかってる











あの夢








水に映っていた男か女かわからない人影









あれは私だったんだ










正夢ではなかった











でも






この深い深い絶望感と寂寥感はなんだろう… 叫び











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