自分は腰を抜かさんばかりに驚いてしまい
身体が小刻みに震えていた
目は屋上と裏庭を忙しく交互に動いているばかりだ
屋上にいる人々は特に驚きも動揺もなく立っているようだ
それも驚きだが
隣にいる先輩二人が何の感情も出さずにいるほうが驚きだった
なんで助けにいかないんだ![]()
もしかしたらもしかして今病院に運んだら助かるかもしれないじゃないか![]()
なんでこんな冷静にいられるんだ![]()
『今のは〇〇さんね』
『うん、チェックしたよ。次は★田さんかな。』
その言葉通り次の人が飛び下りた
遠目にも★田さんだと姿形でわかる
そして次々と人が飛び下りていき
屋上には誰も居なくなった
つまり
屋上に居た十数人全てが
飛び下りたのだ
先輩の一人が名簿を見て言った
『うん、間違いなくみんな飛び下りたよ。』
もう一人の先輩は携帯電話でしばらく話したあと言った
『処理班から連絡あったわ、みんな死んでるって。』
『よし、今夜の作業終了だな。戻るか。』
ちょっ、ちょっと待って下さい
これはどういうことなんですか![]()
みんな死んだってどうしてほっとくんですか![]()
『あ~君は初めてだっけ
説明まだだったよなぁ。』
『いやだ、あんた言ってなかったの![]()
びっくりしたでしょ![]()
最初はそうよねぇ。』
先輩は笑いながら言う
『これはさ、「処理」なんだ。
毎日毎日新しく入所してくるのに
ここはびっしり混んでいないし雑然ともしてないだろう![]()
どうしてだと思う![]()
ちゃんと入所者のこと調べていて
悪い思想を持っている者、
犯罪を犯した者、またその
危険や可能性が大きい者なんかは
この世には必要ないんだよ。
もちろん外国人もね。
だから国から特別に許可をもらって
「処理」するのさ
じゃなきゃあこんな施設なんて
金ばっかりかかって運営なんか出来ないだろう![]()
困っている人を受け入れる、選別して悪いのは処理する
いいほうはまた社会に出ていけるよう支援する
いいことだろう![]()
死体はね、この施設内のトップクラスの「処理班」がちゃんと片付けるんだよ
ぐちゃぐちゃな死体だから大変だけど、その分高給なのさ
あ、俺も今度階級アップして「処理班」に異動予定なんだ![]()
だから早くしっかり仕事覚えてくれよ
』
先輩はアハハと笑うと自分の背中をポンポンと叩いた
でも、でも、なんでみんな飛び下りたんですか![]()
自分から飛び下りたんですよ![]()
もし処理とかならクスリとかで…
クスリ![]()
あ、まさか…
『あら、わかった![]()
そうよ、私たちが配ったあのグミみたいなもの
あれがそう
自分から死にたくなるようにするクスリよ
私たち「宿泊班」はね
上から「処理」する人たちの名簿を貰い
それに沿ってクスリを渡し
死んでもらうのが役目なのよ
でも大丈夫、あのクスリには恐怖とかなくする効果もあるから
みんな穏やかな幸せそうな顔してるんですってよ
処理班の友達が言っていたわ
顔がつぶれてる人もいるみたいだけどね
だけど幸せだと思わない![]()
犯罪を犯して捕まったら一生下手したら刑務所暮らしだったり
逃げ回らなきゃならないだろうし
私たち一般人だって不安で暮らさなきゃならないのよ
それが少しの間でもこんないいとこで暮らせて
幸せな気持ちで死んでいけるんだもん![]()
私ここに就職できてラッキーよ
給料いいし
大っぴらには言えないけどなんたって国がついてるんですもん
』
自分の頭の中はぐるぐる回って
何にも考えられない
今の話にもうろたえたが
その『死』に、自分も関わってしまったのが
堪らなく怖かった…
なんてとこに就職してしまったんだろう…
まさかこんなところだとは![]()
先輩が自分の肩をギュッと掴んで
耳元で囁いた
『もう、逃げられないんだぜ
わかるだろう
』
その意味は掴まれた肩の痛みより
痛いくらいわかった
身体の震えは止まっていた
そのかわり全身
鳥肌が立っていた ![]()
終わり