急性期病棟勤務していた
ある夜勤のこと


その頃の夜勤は部屋持ち二人、ICU一人、外回り兼救急係一人、そして助手一人の五人でしていた



私はその日外回り



注射や、部屋持ちの補助、救急に降りたり、

その合間を縫ってICUに入り


体交やバランス出し、ICU担当者が食事をとるときには、かわりにICUに詰める等々、やることは山ほどあった




それも0時を過ぎるとやっと静かになり



ホッとした空気が流れる



仮眠はとれる状態ではないが
少しゆっくりお茶でも順番に飲もうということになった


外回りである私がICUに代わりに入る





このころのICUは専用の白衣を着て、サンダルも専用の物を履くようになっており



外部に出るときは白衣を上に羽織り、シューズも履き替える


逆に外部の者が中に入るときは


シューズから中用のサンダルに履き替え、中用の白衣を羽織ることになっていた


外は不潔、中は清潔、という考え方だったのだ


当然私も、サンダルに履き替え、普通の白衣の上に、白衣を羽織ってから中に入る




「じゃ、お願いねラブラブ


担当看護師がそう言い、
伸びをしながら出ていく



はいよチョキ と返事をしてカウンターに座る


カウンターの前にはベッドが並び、患者の様子が見て取れる


またカウンターにはモニターがついているので心電図もすぐわかる


電気はすでに落としてあるので薄暗い中に患者さんが寝ているのだが、なんせ目の前にいるのだから、変わりがあればすぐにわかる




時間の点滴をし、バランスを出すと、カウンターに座り、採血や温度板の点検をする




しばらくすると、ICUのドアが開く音がした


スリッパに履きかえるシュッという音もする


あぁ戻ってきたんだ



続いてペタンペタンというサンダルで歩く音がし、段々近づいてくる




私はまだ前をむいていた



音は私の左側で止まった



サンダルを履いた足が
私のほうを向いて立っているのが暗がりの中に見える




ははぁん、私を驚かすつもりだなにひひ


よし、こっちから声をかけてやるにひひ


私は思いっきりの笑顔で
左側を向いて、言った



居るの知ってるよ  と




だが、私が向いた左側には


誰も居なかった




あれほど音が聞こえ、サンダルを履いた足が私に向かって立っていたのに…



全身の血がサアッと引いていき、恐怖を感じた


そのあと担当者が戻ってくるまでの時間がとてつもなく長く感じた


白いストッキングでサンダルを履いていた足





こちらを向いていた足



何かを見せたかったのか



何かを伝えたかったのか




その時も、そして今も



わからない



いや


わからないほうが


  いいのだろうか



はっきり知ることが



私には怖い