哺乳類の大半は、緑赤を認識できない
切っ掛けは、家族との会話から。
「(我が家のワンコ)は、ピンク(の容器)を牛乳と思っている。」
餌を運ぶ容器は緑色、たまに牛乳を与えるときはピンク色の容器を使っています。このため、我が家のワンコは、ピンクの容器を見ると大喜び。しかし、中身が水と分かると、露骨にショボーンとします。そこで不思議に思いました。霊長類を除く哺乳類は、緑も赤も識別できません。
色のシミュレーター
色覚障害者が見る世界を模倣する「色のシミュレーター」。以前、勤務先でウェブサイトやロゴマークを手掛けていたので、このアプリを重宝していました。
欧米に比べ、日本やアジアでは色覚障害者の割合が低いけれど、割合が低いだけで結構な人数がいます。
ワンコやニャンコが見ている世界
大半の哺乳類の色覚は、赤緑の色覚障害を抱える人と同じです。このため、色のシミュレーターを使って緑赤の色覚障害(1型、P型)を表示すると、ワンコやニャンコが見ている世界を見ることができます。
上の写真の左側のように、人の目には緑とピンクに見えている容器は、犬の目から見たら灰色と薄青です。我が家のワンコは、「薄青の容器は牛乳」と認識しているようです。
色覚の不思議
緑の草原の中に、黄色の虎が待ち伏せていたとします。人なら容易に見つけられるのに、大半の哺乳類は識別できません。
草食の哺乳類は、緑色も黄色もすべて黄色にしか見えません。だから、草むらに隠れている凶悪な猫を識別できません。それは狩る側も同じ。猫たちも草原の中にいる茶色の草食動物を色覚から区別できません。
哺乳類を除く地球上の生物は、4色の色覚を持っています。生存競争で優位に立てなかった我々の祖先「哺乳類」は、爬虫類や恐竜が支配する長い時代を、夜行生物として細々と生きながらえました。その結果、生存に適した特性として、2色の色覚を捨てて明るさに特化した視細胞を得ました。暗い場所へ行くと、視界から色が消えて白黒になる。これが、我々の祖先が獲得した能力です。鳥が暗くなると飛べないのは、この白黒の世界を見ることができないからです。
恐竜(鳥類を除く)が去った後、霊長類に進化したご先祖様は、樹上生活の中で緑と赤を認識する視細胞を取り戻します。これは、果実を得るのに適した能力ですが、代わりにビタミンCを作る能力を失いました。大半の哺乳類はビタミンCを体内で作りますが、霊長類は食生活から得られるので、その製造能力を捨てても問題なく生き延びられたのです。