老後に必要な金額は自分でしか計算できない

「老後に必要な金額は○千万円」なんて記事に煽られてはいけません。慌てず自分で計算しましょう。家計は千差万別。前提条件(自家所有か賃貸か、戸建か区分所有の集合住宅か、住んでいる地域など)によって異なります。自分に必要なお金は、自ら計算するのが一番。

 

引退後1年目は大変

退職前の収入に左右される1年です。僕の場合、市民税・県民税が約80万円、国民年金・国民健康保険が約120万円も必要でした。気分が悪くなるのが分かりきっていたので、家計簿は作らないことに。生活が安定した2年目から、家計を検証することにしました。

※ 結果的には、生命保険の見直しや解約、株式投資によって、金融資産は激減ではなく微増しています。給与所得が1桁減った中での結果なので、この状況には満足しています。

 

企業会計と家計は違う

家計を知るのに、固定資産を考慮する必要はありません。家計簿の目的は「総支出額」と「支出傾向」の把握です。総支出額が分かれば、支出に見合う働き方を考えられる。支出傾向が分かれば、家計を見直す資料になります。

 

家計簿とその考え方

僕の家計簿は、誰でも作られる簡単なエクセル表です。マクロ(VB)など一切なし。SUM関数と四則演算のみ。入力を容易にするため、頻度が高いものから順に左から並べています。

 

家計簿の考え方

 

ポイントは3つ。

  • 「支出総額」+「残高差額」=「収入総額」
  • 「投資口座」は資産形成の参考欄
  • 固定資産は無視

記入漏れや些細な入力間違いは、当然、出てきます。しかし、現金と預金は正確に把握することができるので、これを使って修正します。先に書いた通り、家計の把握と見直しが目的なので、固定資産は家計から外します。ただし、投資口座については、余剰資金、すなわち老後のための資産形成状況を把握するために記録します。固定資産は完全無視。そんなもの計上したって、家計に何の影響もありません。

※ リバース・モーゲージ(モーゲージは住宅ローンのこと、すなわち逆住宅ローン、住宅を担保にした借入)に頼る方は、この限りではありません。純資産、資産評価額を把握しなければ生活が破綻します。

 

負債(支出)

負債(支出)欄

 

この欄が最も家計簿らしい記入欄。全ての支払いを、把握したい項目に分けて記載します。例えば、光熱費、食費、医療費など、支出傾向を把握したい分類に分けて記入します。

注意点は、

  • 仔細に分類しない
  • 厳密さを追求しない
の2点。
一旦、データとして残せば、あとから抽出していくらでも分析できます。細かく分類すると手間が増えるだけ。入力し易いことを優先します。例えば、スーパーの買い物を品目別に分けるなんてやり過ぎ。手間なだけで家計の見直しにつながりません。
また、家計簿をつけることが目的になってはいけません。人が完璧にできることなどこの世にないので、少々の誤りや入力忘れなどは誤差と割り切り、月次で補正して帳尻を合わせます。

 

収入
収入欄
 
給与収入や利息、配当金などを記入します。同居する配偶者や子供、親からお金をもらっている場合は、ここに計上します。
また、先にも書いたように投資口座は資産形成のための別枠として管理します。投資口座から家計にお金を回した場合は収入として計上、投資にお金を回した場合はマイナス計上します。

 

現金・預金
現金・預金欄
 
この欄は都度入力する欄ではなく、1月に1度の月次処理のために使います。SUM関数で合算するのではなく、「今期の残高 - 前期の残高」の差額を計上します。差額から家計の赤字/黒字が判明するとともに、使途不明金や謎の余剰金を把握することができます。
決済に使わない口座、例えば定期預金口座、証券口座、投資信託口座、外貨預金などは「投資口座」欄に計上します。これらのお金は資産形成のため、家計の決算に使わないから除外します。

 

投資口座
投資口座欄
 
こちらは、重要な勘定項目ですが家計簿のオマケです。入力は1月に1度でも1年に1度でも好きな時で結構。残高や評価額を記入し、流動資産(現金・預金)と合算し、老後資金の残高を把握します。
 

補正

貸借対照表(バランスシート、B/S)のように、漏れなく記載すれば一致(バランス)します。負債(支出)欄を合算した「支出総額」と流動資産(現金・預金残高)欄の差額を計算した「残高差額」、収入欄を合算した「支出総額」が一致します。

 

「支出総額」+「残高差額」=「収入総額」

 

左辺と右辺の差が、入力ミスです。左辺より右辺の方が大きい場合は、同額を使途不明金として「負債(支出)」欄に行を追加します。左辺より右辺が方が大きいことは稀でしょうが、その場合は「雑収入」とでもして「収入」欄に行を追加してバランスをとります。家計簿の目的は入力ミスや漏れを見つけることではありません。そんな些細なことは無視します。
 

見直しましょう、あなたの家計

決済口座の「残高差額」がマイナスなら、もっと働け、もっと投資で儲けて繰入れろ、節約しろ、ということです。そして「負債(支出)」欄から節約の糸口を見つけましょう。
 

最終目的は、年金受給開始日の決定

働き方や家計の見直しは、家計簿の一次目標です。老後生活に必要な金額、資産形成の状況を鑑みて、さらに自身の健康状態を考慮にいれつつ、年金受給開始をいつにするかを決めることが最終目標です。最低でも1年に1度は流動資産の総額を計算し、資産状況を確認しないと老後が大変なことになります。

預貯金を切り崩す老後生活を歩んでいると、銀行から「住宅を担保に資金を提供できますよ」と陽気な声で電話がかかってきます。金融機関を信用してはイケマセン。所詮、民間企業、儲けてナンボです。「こいつから手数料ゲットして、資産を巻き上げられるぜ」と思うから、お金を貸すのです。