LINEスタンプはフリーソフトで作られます
この記事は、フリーソフトウェアの画像編集ソフト「GIMP」を使い、PCでLINEスタンプを作成する手法の紹介です。紹介にはMacの画面を使っていますが、Windowsでも操作方法は同じです。
【目次】 |
GIMPとは?
「GIMP」(ジンプ又はギンプ)は、誰でも無料で使えるフリーソフトウェアの画像編集ソフトです。でも、無料だからと侮ってはいけません。画像編集ソフトの頂点に立つAdobe社の「Photoshop」と、同等の編集ができる優れたソフトウェアです。もちろん、Photoshopのように印刷業に使える水準ではありませんが、機能的には20年ほど前のPhotoshopと同等であり、色空間の都合で印刷に向いていないだけです。PCやスマートフォンの画面に表示する画像であれば、何も問題ありません。
ただし、色々面倒なところはあります。なぜか画像加工や保存が上手くいかず、無理矢理キャンセルして同じ操作を繰り返さないといけないとか、そんなトラブルは日常茶飯事です。無料ですからね、そんなものです。
LINEスタンプに必要な画像
LINEスタンプを公開するためには、スタンプに加えてメイン画像、タブ画像を作る必要があります。
- メイン画像
スタンプショップに表示するための画像で、1枚だけ必要です。大きさは、240ピクセル x 240ピクセル。
- タブ画像
LINEのトーク画面でスタンプを選ぶための画像であり、これも1枚だけ必要です。大きさは、96ピクセル x 74ピクセル。
- スタンプ
スタンプに使う画像は、静止画の場合、8、16、24、32、40枚のいずれかを選ぶことができます。大きさは、370ピクセル x 320ピクセル以下。余白が縦横それぞれ10ピクセルずつ必要です。
以下、370 x 320の静止画像スタンプを作成する手法を簡単に紹介します。
新規画像
- 新規画像の作成
GIMPを起動し、メニューから「ファイル」→「新しい画像」を選びます。
- 新規画像の設定
「キャンパスサイズ(画像サイズ)」を370 x 320に設定し、「詳細設定」をクリックします。解像度は標準で72dpiが選ばれており、LINEスタンプの解像度も72dpi以上とされているので、ここはいじらなくて大丈夫です。「塗りつぶし色」の欄だけ、「透明」に設定を変更して「OK」をクリックします。
なお、DPIは Dot Per Inch のことであり、印刷時の解像度を表します。スタンプは画面に表示するだけなのに、なぜ印刷解像度が指定されているのか謎です。
- 新規画像画面
以上の操作で新規画像画面が現れます。グレーの市松模様は、透明であることを示しています。このままPNGやGIFなどの画像ファイルとして出力すると、背景が透けて見えるだけの透明な画像が出来ます。
レイヤーの準備
レイヤーとは、コスプレな方々のことではありません。静止画像は重ね合わせることができ、この画像の層のことをレイヤーといいます。370 x 320ピクセルの大きさの画像に、縦横10ピクセルの余白がある画像を作って、さらに文字を追加するための「層(レイヤー)」を作ります。
- レイヤーの追加
レイヤーの画面でレイヤーを二本指クリック(Windowsの場合は右クリック)すると、レイヤーを操作するためのメニューが表示されます。この中から「新しいレイヤーの追加」を選びます。
- レイヤーの追加画面
レイヤーを追加してから変更した方が楽なので、370 x 320のまま追加します。レイヤーの塗りつぶし方法は「透明」を選びます。
- レイヤーのサイズ変更
追加したレイヤーを2本指クリック(Windowsは右クリック)し、「レイヤーサイズの変更」を選びます。レイヤーサイズを350 x 300ピクセルに変更し、「中央」をクリックしてから「サイズ変更」をクリックします。
- レイヤーの複製
レイヤーは、最初に作成した背景のほか、画像、文字など複数必要となります。作成した350 x 300ピクセルのレイヤーを選んでメニューを表示し、「レイヤーの複製」を選んでコピーを作ります。そして、同じ操作を繰り返して複数のレイヤーを用意します。余分なレイヤーは後から消せるし、放置しても透明なので支障ありません。多めに作っておきましょう。
レイヤーの準備まで済んだら、一度、ファイルをスタンプの雛形として保存しましょう。「ファイル」→「名前を付けて保存」を選び、お好きな名前の「.xcf」ファイルとして保存します。xcfは、レイヤーの重ね合わせのほか、ラスター(ドット絵情報)とベクター(線画情報)を混在して記録できます。
画像の切り貼り
「貼り付け元の画像を開く」→「縮小」→「切り取り・貼り付け」の順で作業します。
- 画像の読み込みと拡大縮小
「ファイル」→「開く/インポート」を選び、スタンプに使う画像を開きます。次に「画像」→「画像の拡大・縮小」を選び、スタンプの大きさに合わせます。
- 画像の切り抜き
GIMPのツールボックスから「自由選択」(投げ輪のアイコン)を選択し、画像を切り抜く範囲を指定します。
切り抜く際は、背景と混ざり合っているピクセルを避けて切り抜きましょう。例えば、明るい背景と混じり合った場所を含めたスタンプを作ると、暗い壁紙に使った時に白い斑点が出てしまいます。逆に、暗い背景と混じり合った部分を使ってしまうと、明るい壁紙に対して黒い斑点が表れてしまいます。
- 貼り付け
ぐるっと一周範囲を選択したら、「編集」→「コピー」を選択して画像を切り取ります。次に、スタンプ用ファイルの350 x 300pxのレイヤーを選び、「編集」→「貼り付け」を選択。パッドやマウスをドラッグし、貼り付けたい場所を選んだら、貼り付け画像から少し離れた場所をクリックして貼り付け場所を確定します。
文字を書き入れる空間を用意することをお忘れなく。
文字の挿入
PCの文字データはベクター(線画)情報のため、画像編集ソフトではラスター(ドット絵)情報とは別のレイヤーとして作成されます。また、文字を見やすくするためには、どんな色の背景でも読めるように「明るい/暗い」文字と「暗い/明るい」縁取りを組み合わせます。TVに表示されるテロップ(画面に表示される文字)を見ると、そういう組み合わせで作られていることが分かると思います。
- テキストレイヤー作成
文字を書き入れるレイヤーを選んでから、ツールボックスのテキスト(Aのアイコン)を選び、文字を挿入する範囲をドラッグして選択します。選択範囲は後からいくらでも調整できるので、適当でいいです。ただし、縁取りも含めて余白の範囲に収まるよう注意しましょう。
文字の色は、ツールボックスの下側にあるパレットをクリックして、色を選びましょう。
- 文字の挿入
選択範囲を選ぶと、文字を入力する「I」状のアイコンが表示されます。英数字入力の場合は、即座に入力した文字が表示されますが、日本語の場合は変換した後でなければ表示されません。焦らず、文字入力して変換キーを押し、変換候補を選びましょう。
なお、縦書きモードはありません。文字レイヤーの大きさを調整して何とかしましょう。
- 縁取り作成
文字レイヤー(「T」と入力文字が表示されるレイヤー)を選択し、二本指クリック(Windowsは右クリック)でメニューを表示し、「不透明部分を選択範囲に」を選びます。
次に、文字レイヤーより下側にある、空いている350 x 300レイヤーを選びます。そんなレイヤーがなければ、作成したり移動したりしてください。上部メニューから「選択」→「選択範囲の拡大」を選び、3〜5ピクセルほど選択範囲を大きくします。
ツールボックスの色設定を、文字色が明るければ暗い色に、文字色が暗ければ明るい色に変更し、「塗りつぶし」を選択して文字の上をクリックします。
スタンプ作成
「ファイル」→「名前をつけてエクスポート」を選択し、「ファイル形式の選択」から「PNG画像」を選び、お好きなファイル名を付けて保存します。
以上の操作で8〜40枚のスタンプを作ったら、「LINE Creators Market」へ行き、LINEに登録した携帯メールアドレスと暗証番号でログインして、新規のLINEスタンプを作成してください。
なお、LINEスタンプは無料配布することができません。最低でも120円で販売する必要があり、スマホ用のスタンプメーカーアプリから登録しない限り、自分で作成登録したスタンプも無料ではダウンロードできません。
補足(画像のあれこれ)
- 色空間
TVやPC、携帯の画面はRGB (Red, Green, Blue) であるのに対し、映画フィルムやカメラフィルム、印刷はCMY(K) (Cyan, Magenta, Yellow, (Black)) です。前者は色を合わせたら白色になることから加色系、後者は色を合わせると黒になることから減色系と呼ばれます。この色空間の変換が大変で、MacがDTPの世界で支配的になった理由でもあります。
色空間の特性から、昔は映画をビデオで撮影することが困難でした。ビデオカメラで特撮映画を作ろうとしても、安っぽいおもちゃのような絵にしかならなかったのです。
- 「アルファチャンネル」と「クロマキー」
画像編集で市松模様に表示される「透過」情報のことを「アルファチャンネル」と呼びます。RGBでもCMYでもない追加の情報と思っていただければ結構です。こういう便利な透過設定ができる静止画データと違い、動画にはアルファチャンネルがありません。そこで「透過色」として使われるのが「クロマキー」です。初期のSF映画であればブルースクリーン(青)、最近のテレビや映画では緑色がクロマキーに使われています。
- ラスターとベクター
ラスターは、みなさんがスマホで撮っている写真のことと思ってください。ドット単位に色情報が組み込まれたピクセルの集合体です。TV画面のように、拡大したら粗くなります。
これに対し、ベクターとは線画情報であり、座標から座標を繋ぐベクトルデータの集合体です。
みなさんがGoogleマップを見る時、通常の地図表示がベクター、衛星画像がラスターです。