僕は小雨の降る日にランニングをするのが好きだ。単純に雨が走ることで生じる身体の熱を冷ましてくれて心地よいからだ。
外をランニングすると、アスファルトの微妙な襞、普段歩いてるときは感じることのない微妙な起伏、いつもは目に入らない店舗の看板に気づいたりと、感覚が少し鋭敏になる。
レインラン愛好者は結構多いらしく、僕の隣をいかにもランニング仕様の男が颯爽と駆け抜けていく。
僕も自然と彼のペースにつられ、ピッチが少し早くなる。そして、すぐに呼吸が乱れ、腰に痛みがはしる。
そして僕はノロノロと歩き出してしまい、彼は遥か遠く、なんとか豆粒程度に視界に捉えられるレベルまで距離をつけられてしまっている。
自分より早いランナーに抜かれると、自然と追いつこうとしているのかペースが上がってしまう。
これは闘争本能なのか、ある種のカメレオン効果なのか分からないが、苦しくなって歩いてしまうのはどうにもエネルギー効率的にもよろしくない。
どれだけ他のランナーに追い抜かれても、自分のペースを守ることが、結局ランニングとして最も効果的なのだと思う。それがたとえ亀のような歩みだとしても。
ところで、僕は本当に人生という名のランニングを自分のペースで走れているのだろうか?
そもそも自分のペースなんてものは存在するのだろうか?
なんか臭すぎるな、この表現。
なんか笑っちゃうな。
答えは走りきった後に全て分かるのだろう。
何も分からないというアイロニーをガーニッシュに添えて。