FF(future fiction)
「日本消滅」ーー
そして 「倭(やまと)国」創建へ (5)
ジャック・ジョーンズ大統領は激怒した!
一方 同盟国や近隣諸国 反対に非友好国等の反応はどうであったか。
先ず 駐留米軍5万6千人余りのうち横須賀基地と司令部は首都圏とともに消えていた。
不幸中の幸いは 横須賀寄港中であった原子力空母エンタープライズは一週間前にフィ
リピンに向けて出港し 空母ロナルド・レーガンは沖縄方面へ航行中であったことで 横須
賀基地の兵員200名余りの犠牲で済んだことであった。
しかし 時の大統領ジャック・ジョーンズは激怒した。
同盟国日本に対し その首都が壊滅するほどの打撃を与え 日本の「司令塔」を消し去る
ことで反撃の意思決定も その指令も出すことが出来ないでいる。
どこかの国が日本に予め宣戦布告無く原子爆弾あるいは水素爆弾を投下し 首都圏を消
滅させたという.現実に直面しながら それに対して直ちに打つ手が無いのである。
日本に駐留している米軍も そして日本の陸上自衛隊も 成層圏からミサイルが日本に
向けて飛来しつつあることをレーダーで把握していた。にもかかわらず 着弾前にそれを破
壊することが出来ず またそれに対する反撃も出来ない。
どこの国も核弾頭のミサイルを日本に向けて発射したと表明していないこと つまり日本に
対して宣戦布告した国は無いということ そして米軍も自衛隊も発射地点を正確に把握出
来ていないことから 直ちに報復措置を取れないという掻痒感があった。
そして
ジャック・ジョーンズにとって もう一つの「怒り」の原因は 100億$には上るだろうと皮算
用していたアメリカ国内軍需産業から自分への個人献金が全てシャボン玉となって消えて
しまったことである。
3カ月前 日本の首相・糟田(かすだ)数夫をワシントンへ呼びつけ 日本がアメリカから最低
1兆円のトマホークを買い付けるよう要求。そのかわり 糟田の個人名義銀行口座を設け
5千万$を振り込んでカードと通帳を渡すという密約を交わし 既に振り込んでいたからであ
る。
この時 糟田は何の躊躇いも 何の罪悪感もなくこの密約に飛びつき この贈収賄(bribery)
は日本側の秘書も通訳もすべて席を外させ アメリカ側は補佐官全員の居る場で行われた。
日本人の口の軽さはアメリカにも知れ渡っていたのであろう。
「おめぇにゃ もう5千万ドル渡してあるんだぜ。わかってんな!カズ」
いずれにしても このbribery は見事に水泡に帰した。そればかりでなく ジャック自身も贈賄
の疑いが濃くなり FBI の立ち入り調査が行われ 大統領の「不逮捕特権」で逮捕はされない
ものの テレビでは特集で報じられ 新聞等でも大々的に報じられた。大統領としての信頼は
100%失墜し 一方の糟田は国会議事堂とともに永遠に消滅してしまったのである。
尖閣周辺の日本の領海では 海上自衛隊及び米軍空母の艦船と中国海軍の空母船団が
睨み合っていた。その距離1哩(マイル)。どちらも1インチも退かない姿勢で対峙している。どちらも
次の瞬間にでも艦砲射撃可能な状態で 艦載の戦闘機は随時発着艦訓練を繰り返している。
文字どおり一触即発の状態である。
ところが この緊張を一瞬で破る事件が中国軍側で勃発してしまった。
というのは 中国海軍の空母・福建で夜間警戒のため発着艦を行っていた戦闘機一機が
着艦を誤ってブリッジに衝突し 火災を起こしてしまったのである。ブリッジにも火は延焼し
なかなか鎮火しない。
やがて 空母・福建のブリッジの上から米軍の旗艦エンタープライズに向けて信号灯が
点滅し始め エンタープライズで解読すると
「わが軍は事故発生によりこれより撤収する」という信号であった。
「戦場」において 言わばお笑いのようなシーンかもしれないが 双方の戦闘員たちにとっ
てはその一事でホッと息をついたことも事実である。戦闘員の中には 緊張が解けて失禁
してしまった者もいたぐらいだから 戦場 特に海戦の緊張がどれほどのものか分かる。
いずれにしても 尖閣の日本側EEZ での遭遇戦は偶然の事故によって避けられた。
空母エンタープライズを旗艦とする日米連合艦隊も 中国海軍が消え去るのを見届けてか
ら沖縄基地方面へ進路を向けた。ただ 日本の巡視艇2隻だけは現地に止まった。
さて国内では 前後二度にわたる現地調査の結果日本国民の誰にも信じがたいような事実
あるいはファクトまたはエビデンスと言われるものが明らかとなり その「事実」に基づいて誰
もが信じられないほどの「仮説」が立てられた。
それは 先ず「水素爆弾」と推定される爆弾がミサイルによって投下され 東京上空約3千m
で爆発し 中心温度約1億度と推定される地獄のような温度で東京全域及び周辺都市の大
部分を一瞬のうちに溶解または爆風によって微塵と化してしまったということ。
あらゆる植物はもちろん 人間も動物も痛みを感じる瞬間さへ無く 死の覚悟をする暇(いとま)
も無くこの世から瞬間的に消えてしまった。
そして 水素爆弾の犠牲になった東京及びその周辺都市の地上に そういった悲劇の跡形
も見られないのは 水素爆弾の爆発後間も無く おそらくM9 を遥かに超えると思われる想像
を絶する巨大な地震が発生し 水素爆弾によって破壊された関東平野のほぼ全てが地盤沈
下し 1万7千k㎡に及ぶ関東平野全体が「相模トラフ」と呼ばれる海の溝へ引きずり込まれて
跡形も無くなり海の一部になってしまったこと。
そしてそれから5分も経たず 海の底から巨大な地盤―――おそらく厚さ300m以上と推定さ
れる地盤が浮上し 消えた関東平野の跡をそっくりそのまま埋め尽くした。
という内容の 俄には誰も信じない 「作り話」としか考えられない ウソのような報告がなされ
た。しかし 「ウソ」のような話でも その調査隊の調査結果と推論は 不思議なことにすべての
現実 ファクトをぴったり裏付けるものであった。
天上からこの民の様子を遥かに見降ろしておられた二柱の神様がおられた。
それは
正勝吾勝々速日天忍穂耳命(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)様と
天之手力男神様(あめのたぢからおのみこと)様であった。
過日 神々が集い協議する「神諮り」が開催された時 隣り合わせで座られた席で
お二柱が何やらボソボソと言葉を交わされたのは 実はこのことについてであった
のだ。
神ならぬ民の知る由も無いことであるが 神々は 某国が水素爆弾の弾頭を搭載したミサ
イルをオホーツク海へ向けて発射することを事前にご存知で そのミサイルが成層圏を突き
抜けた時に天忍穂耳命様がミサイルに「フーッ」と大きな息を吐き掛けられて飛翔方向を大
きく転回させ 日本の東京のど真ん中に命中するようになさったのである。
「無慈悲な」と思う人間も居るであろうが 千年の未来を考えた時 とことん腐りに腐り切り
とても一国の政(まつりごと)を委ねるに堪えない政治家ども 政党 そして政権与党。そういう
腐敗し切って鼻持ちならぬ腐臭を放つ日本の頭部 あるいは心臓部を焼き捨て その腐敗
に感染した周辺部とともに取り除き 細胞を新しく入れ替えることで その他の無辜の民を正
しい方向へ繁栄させようという神々の御裁定であったのだ。
そして それに続いて 天之手力男神様は右の御手一本で関東平野を掬い取り 海の底へ
沈め 代わりに 今まで海の底にあったフィリピン海プレートの一部を折り取って 関東平野の
あった位置へそっくりそのまま嵌め込まれた というわけである。
<つづく>