FF(future fiction)
「日本消滅」ーー
そして 「倭(やまと)国」創建へ (13)
登場人物(2025年現在)
神子 輝夫(かみこ てるお 1967年生まれ58歳)
神子 菫(すみれ 54歳)
神子 健二(輝夫の父)(2023年没享年81)
神子 小夜子(80歳健二の妻)
卓(すぐる 29歳 輝夫・菫の長男)
渚(なぎさ 26歳 卓の妻)
神子 健(たける 卓・渚の長男・当歳)
佐々木 千津子 小夜子の幼友達(近所に住む)
(12)の最終部分から
…………
その中に 多分全国民に衝撃を与えるであろうと思われる
条項が一つ含まれている。
それは
国名を「日本国」から「倭国(やまとこく)」へ
改称するというものである。
唐突でもあり 信じられないことでもあるが それが一人の反対も無く
全員一致で提言に加えられたのだが……
それにはもっと信じられないような理由(わけ)があったのである。
(13)
なぜ「全員一致」という信じられない事態が
起こったか から説明せねばなるまい。
第5回(最終回)の全臨会は三重県の伊勢市で開催された。
伊勢市長が議長を担当し 副議長は島根県出雲市の高校生代表が務めた。
議長が開会を宣言し 委員に発言を求めると 間髪を入れず挙手した委員が
居た。四国・徳島県代表の委員である。
「皆さんお早うございます。私は 皆さんから何を突拍子もないと笑われるかも
しれない 咎められるかもしれないことを覚悟の上で申し上げます。」
「実は昨夜 というより今朝 目覚める直前のことでした。というのはその夢を
見て 驚いて目が覚めたらいつもの起床時刻でしたから。」
「その夢というのは 中学校か高校の歴史で学んだことがあったか 無かったか
卑弥呼という女神様が夢枕にお立ちになったのです。お顔もお着物も驚くほど鮮
明で お美しいお方だという記憶は残っているのですが さて目覚めてみると ど
のようなお顔であったか全く思い出せません。」
「多分 後光が射していて 神々しくてまともにご拝顔出来なかったからかと思うの
です。」
「それでも卑弥呼様であると分かったのは その神様が『妾(わらわ)は卑弥呼じゃ』
と名乗られたからです。そうでなかったら 私には分かりませんでしたから。」
「それで 肝心の夢の卑弥呼様が何故夢枕にお立ちになったか ですが…」
「『東京とその周辺が消えうせたのは 全て神々の計らいじゃ。余りにも神の律法
を蔑ろにし自然の掟にも背き 悪事に奔り 政治家を名乗る者どもは自ら腐敗する
に止まらず社会を腐敗させ 東京を鼻持ちならぬ糞溜めにしてしまった。』」
「『一見 いかにも美しそうに見えて それは全て虚飾・虚栄で覆われた糞の塊なの
じゃ。それを神々が見過ごしていると思うていたのが人間どもの浅はかさであった。
神々は全てお見通しで ただ消し去る時期を見計らっておったのじゃ。』」
安田靫彦画 卑弥呼
「そこで私が 具体的にはどのようなことが神々のお瞋りに触れたのでしょうとお尋
ねしようと 口を開きかけたら 私の心の中をお見通しのように」
「『一々具体的に説明せよと申したいのであろう。』」
「『汝を含め 人間どもは自らのしておることを自ら分かっておらぬ。分かっておっても
悔い改めようとせぬ。』」
「『この際 少しだけ言い聞かせておく。』」
「『先ず何を差し置いても 汝ら民は神の存在を信じず 神に対する敬虔な信心を久
しく失っておるであろう。神などおらぬでも 我々はこうやって日々暮らしておるわと
かように不遜な心でおるであろう。それが第一の最大の過ちじゃ。』」
「『神に対する信心を失うてしもうた。その他のことはすべてここから派生しておるこ
とじゃ。 例えば東京に巣食うておった政治家どもは例外無く己の私腹を肥やす
ことばかりに汲汲としておって 謹んで政(まつりごと)に携わろうとする ごく当たり前
の殊勝な心がけの政治家など一人もおらなんだ。』」
「『国会議事堂など悪人どもの巣窟 伏魔殿になっておった。』」
「『汝らも見たであろう 聞いたであろう。このたびは東京だけに止めたが 大阪も名
古屋も その他の群(こおり)も 神の律法に背き 大自然の法則を破る如き人間が増
えれば 容赦なく東京と同じ運命になるであろうぞ。努々(ゆめゆめ)そのことを忘れる
でない。全てのものの上に神々がおられ 全てをお見通しなのじゃ。』」
「と仰せられて 一拍置かれてから『ついては 汝らに告げておくことがある。』」
「『これまで日本と名乗ってきた国名を 以後は倭(やまと)と改めるのじゃ。』」
「『倭国じゃ。これは昔の民が日本国と名付ける前の 元々の国の名称であったの
じゃ。妾が倭と名付けたのじゃ。今後は倭国(やまとこく)と名乗るようにせよ。』」
「そう仰られたかと思うと 私が一言お声を掛ける隙も無く スーッと夢枕から消えて
しまわれたのです。」とここで一息ついた。
ここまで話す間 他の39名の出席者は一様に驚いたように目を大きく見開き
何か発言したそうな表情を見せ 不気味なほどに静まり返って聴き入っていたが
ここでたまりかねたかのように一人が挙手し 議長は発言中の徳島県代表のほうへ
「お話しの途中ですが よろしいでしょうか。」と断って 挙手した神奈川県代表を
指名した。このたびの未曽有の大事件で県の人口の7割が「行方不明」となった。
「私はこのたびの大事件で県の人口の7割が失われた神奈川から参りました。
早速ですが 今のお話をお聴きして 正直 大変びっくりしています。」
「というのは 今お話しされた夢の話が 私が今朝 起床前に見た夢の内容と全く
同じで やはりご自分で卑弥呼と名乗られたのです。私に語りかけられたお話も
ほぼ一言一句も違わず 国の名を倭国に改名せよとの仰せでした。」
「その前に 私にはこんなことも仰せになられました。」
「『天網恢恢疎にして漏らさずと申すであろう。神は民が天道を 大道を踏み外さぬ
限り 細かなことで民を罰しはせぬ。しかし 大道を踏み外した時 神は瞋り 容赦
なく罰を下すのじゃ。』」
「『今 この国でもLGBTなどと称して 女と女が番い 男と男が番うような 自然の法
則に反する行為 神の掟を破る行為を公に認めよという集団の力が大きくなり 腐敗
した政治は これを認めようとしつつあったであろう。これは神々の大いなる瞋りに触
れた行為であったのじゃ。』」
伊邪那岐尊と伊邪那美尊の国造り
旧約聖書のアダムとイヴ
「『天地開闢以来 神々はすべての生き物が増え 栄えることを願って雄と雌の両性
を造り 両性が番って子孫を産み栄えるようにしたのじゃ。そのことを知りながら それ
に反する行為を認めるなど 神が許すわけが無い。』」
「『神々は 中東のソドムとゴモラという地で同性愛が蔓延し また黄金の牛などを
鋳造して崇めようとしたことに対して神が大いに瞋り その地に硫黄と炎を降らせて
街全体を焼き尽くしたことも知っておる。民の多くも学んでおるであろう。』」
「『今後も LGBTなど 神の掟に背く行為が広がるようであれば 神は容赦無くその
郡を破壊し消滅させるであろう。このことは民によくよく申し渡しておくようにせよ。』
と仰せになったのです。」
と ここまで発言した時 申し合わせたかのように 出席者が一斉に挙手し 発言を
求めた。
しかし議長はそのいずれも指名することなく 自ら話し始めた。
「皆様 どうやらここにご出席の皆様が そして私も 同じ夢を同じ頃に見たのでは
ないかと思いますが そうではありませんか?」
と会場へ問いかけると 出席者の全員が大きく頷き 会場は騒然となった。
そこで議長は話を続けた。
「実は私も同じような夢を見ました。そして卑弥呼様はこんなことも仰せられたので
す。」
「『民や国の動きを見ておって 多くの民が感じることは 民以上に神々は感じて
おられるのじゃ。また 民には見えぬ民の心の中までも 神には手に取るように見
えるのじゃ。このことはよくよく心に留めておくように。』」
「『例えば LGBTとか<性の多様性>などというのは悪魔のささやきじゃ。悪魔は
いつも悪魔の姿をしておるとは限らぬ。時に女の評論家 時に普通の男に姿を変え
て いかにもそれが正しいかのように言葉巧みに民を悪魔の道へ誘おうとする。
神は男と女が番い 子を産み育てる このことしか認めてはおらぬ。』」
「『性の快楽のためにのみ番うことも神は認めてはおらぬ。』」
「『人間どもが大自然の掟 神の律法を冒すようなことがあれば いつ何時でも神は
すべての人間をこの世から消し去るであろう。』」
「そう仰せられて ふっと消えてしまわれたのです。」
「皆様も同じ夢をご覧になられたのですね。こんな不思議なことは滅多にあることで
はありません。ご出席の臨時代議員の皆様は このことを如何様に受け止めるべき
かご意見をお聞かせいただけませんでしょうか。」
すると 一呼吸置いて挙手した代議員が一人居た。岡山県玉野市から臨時代議員
として出席している玉野市長である。
「私も皆様同様 今朝目が覚める直前の夢に 夢であったのか あるいは現実であ
ったのかもしれませんが 卑弥呼様がご自身で名乗られて 先ほど来のお話とほぼ
同じことを私に告げられました。」
「そして これまでまだお話に出ていないことも仰られました。」
「それは『非理法権天』ということです。皆様もご存知と思いますが 理の通らないも
のは理に負け 理は法に負け 法は時として権力によって蔑ろにされる。しかし 権
力も絶対の天の力 つまり神には勝てないということを説いた言葉です。」
「卑弥呼様がそのことを私に語られ あれは民がまだ神に対して敬虔で 自然に対
して謙虚な生き方をしておった頃に 民が自らへの戒めとして作った言葉じゃ と
こう仰せになったのです。」
「こうもおっしゃっられました。『大自然の法則の上にこそ 人間の生活も存在を許さ
れ 繁栄を許される。その法則こそが」神の律法であり その律法を蔑ろにしては人
間界の法も規律も存在し得ぬのじゃ。』と」
「そして神は 人間どもの行いが神の容認の限界を超えた時 容赦なく鉄槌を下すで
あろうとも仰せになられました。私は怖ろしさに身震いしてお聴きしていました。」
(つづく)


