お昼はいつも
ひとりでゆったりと食べている司書室内で
僕は遠い存在であるキム・ジョンインと
なぜか向かい合わせてランチすることになった
「はじめまして!オレはイ・テミンと言います!オレも一緒でもいいですか?ギョンス先輩」
ジョンインと一緒にいる取り巻きのひとり、テミンくんは明るい茶髪の派手な見た目ではあるものの、とても礼儀正しい子で、なぜか僕が1学年上なのを知っていた
というか、僕は今日はじめて誘われたんだけど、、、どこから突っ込めばいいんだろう
「えっと、、僕は全然大丈夫、、けど僕が居ていいの?」
「もちろんですよ!むしろ、だれにも興味もたないジョンイナから誘ったと聞いたので、気になって無理矢理来ちゃったんですけど、よかった!ということで、先輩からの許可をもらったから文句はナシだぜジョンイナ」
「··········」
不満だと全身で表してムスッとするジョンイン
それとは反対に にこやかなテミンくん
遠めから見ていて思っていたけど、目の前のやりとりを見て、やっぱりふたりは仲がいいんだなと、少し羨ましくなった
「ギョンス先輩はよく図書館(ここ)に居ますよね」
「うん。図書委員だし、静かだから」
「やっぱりそうなんですね!そうかなぁと遠めからですが見て思ってました」
「え?」
「オレたちはよくホールに居るんですけど、そこからギョンス先輩がよく見えるんで、覚えちゃいました」
「あ、、そうなんだ」
まあ、僕の居る受付カウンターはホール寄りにあるし、本棚はあっても腰辺りのものばかりで、ホール側は窓ガラス張りだから内部が丸見えではあるしね
だから、僕は彼らを見ていたわけだから、彼らだって僕が見えていたって自然だよね
「先輩はいつも本読んでるけど、何読んでるんですか?」
「えっと、、簡単なものばかりだよ。ハ○ーポッターとか○レン・シャンだったり、シリーズものが多いかな」
「あ!それならオレも読んだことあります!って言ってもジョンイナの部屋の本棚に並んであるもんちょこっと読んだだけですけど」
「そうなんだ。ジョンイン、くんは小説好きなの?」
ちょこっと勇気を出してずっと黙りとしている彼に聞いてみる
ジョンインくん呼びはおかしかったかな?
いや、もしかしたら話を振られること自体イヤだったかな?
イヤイヤ!そもそも彼から(強制的ではあったけど)誘ってきたわけだし、僕の趣味の話よりも何か用事があったのでは?!
頭のなかぐるぐるしてても、顔に出ないポーカーフェイスのおかげか、ふたりとも気づいてはいないのが羞恥心が広がらなくて済んでいる
「少しだけ。興味出たものだけ読む」
わ!答えてくれた!よかった、、、。
「うん。僕も同じ。気になったものを読んでるだけだからジャンルは偏ってるかな」
「そうなんですね!なんか意外です」
「そうかな。あ、でも小学生の頃にも言われたな。本読んでるとこだけ見ると気難しい本ばかり読んでるイメージもつって」
あの時かな。ベッキョンとチャニョルと仲良くなれたのは。今じゃ小中高とずっと同じの腐れ縁というやつだけど。
ふたりといるのは、本の世界にいるのとは違う楽しさがあって心地いい。
つい、ふっと思い出して口元が緩んでしまう。
「ねぇ先輩!よければこれからも一緒にお昼食べません?読書中邪魔したりしないんで!」
「んな!おい!テミナ!」
きゅるんとかわいらしい顔を活かし、僕の腕を組んで甘える仕草をするテミンくんに、慌てるように引き剥がそうとするジョンイン
なんだか、あの時の光景と似ていて、気持ちがフワフワする
一般人の僕が、有名人と知り合いになるドキドキ感に自然と頬が緩んでしまう
「ふふ、いいよ」
「え、ほんとに?」
「いえーい!やったね!」
意外な答えだったのか驚くジョンインに、飛び跳ねて喜ぶテミンくん
そっと袖を引かれ、その先には覗き込むような体勢でジョンインの少し心配そうな顔が
「ほんとに、、いいの?」
「僕はいいけど、、テミンくんたちは友達と居なくてもいいの?」
「それは別にいい」
そこはきっぱりと言い切るジョンインに、なんだか嬉しいやら、友達が可哀想なんじゃとか思ったけど
「ねぇ、くんなんて付けなくていいから。ジョンインって呼んでよ」
「え」
「俺の名前、呼んで欲しいんだけど」
え?、、、どういうこと?
そんなセリフ、恋愛小説でしか聞いたことないんだけど、、、
さっきまでのドキドキとは違う、鼓動が耳元で響くように速くなってうるさい
「ね、ギョンスヒョン」
「わかった、、ジョンイン、、」
「ん」
満足そうに微笑む顔は、遠くからでも見たことない表情で、そんな顔を間近で見てしまった僕の心臓は爆発したみたいに銅鑼が何度も音をたてている
「ヒョンが読んでる小説、俺も気になるから読み終わったら貸して」
「う、うん、わかった、いいよ!」
あれ?
なんでこんなに心臓の音がうるさいんだろう
その日は小説の続きも
いつものお弁当の味も覚えてなくて
ジョンインの笑顔ばかり思い出して
その度に顔が熱くなっていた
………𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹