Loop | EXO's World 。… .:*:・'°☆

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カメ更新ですが気長によろしくお願いします





最初からわかっていた。



わかっていたのに、



気持ちは膨らむばかり。




選ばれるとかよりも、




見向きさえされない。




傷つくとわかっていても、




傍にいたくて、




幼馴染みというポジションで、




変わりゆく彼女たちに嫉妬して、




無邪気に笑う君に心惹かれて、





そして傷つく。






もう何年




同じことを繰り返してきただろう。





これ以上は僕の心が保てなくて、





だから、決めたんだ。





最後にしようって。












殺風景な男ひとり暮らしの家に、夜中に遊びにきた大好きな人。



どうやらパートナーと喧嘩したらしく、僕のところに転がり込んできたのだ。



聞きたくもない愚痴に、ただ相槌をうつことしかできない自分。


でも、それも今日が最後だ。



「なんか、この部屋この間より家具が少なくない?」



大分お酒を飲んで、吐き出すだけ愚痴を零してスッキリしたのか、今更気づく君。


「ちょっと気分転換のために必要な家具だけにしたんだ」


「ヒョンってベッドなくても寝れるの?」


「・・・新しくしようと思って」


「へぇ〜そっかぁ〜」




お酒が回ってどこかふわふわしてる君に、これが最後だと自分に言い聞かせて、勇気を出して唇を開く。



「ねぇ、ジョンイナ」


「ん〜?なにぃ?ヒョン」



一気に眼が熱くなって、怖くなる。



「ジョンイナに、言いたいことがあって」



声が震える。



泣きそうになるのを堪えて、



言いたくても言えなかった、



僕の気持ちを、



声にする。





「僕ね、ジョンイナがすきなんだ」




目を見開いて驚く君は、冗談でも、ましてや友だちとしてではない好きだと、僕の姿を見て悟り困惑する。



最初からわかっていた。



「ヒョン、、その、、」




わかっていたのに、




「俺もすきだけど」





気持ちは膨らむばかり。





そして






「ヒョンの気持ちには答えられない」







何度も傷つくんだ。







僕に見えないようにと、今更右手で左薬指を隠すジョンイナ。



その優しさが




容赦なく僕に切りかかる。





「・・・ふふ、ビックリした?」



こくんと頷く君は、これからどうしようと思案してる。



「正確には"好きだった"だけどね」


「え?」


「ジョンイナが幸せなら僕はそれでいい」





「俺も、ヒョンが幸せなら俺も幸せ」






ふんわり微笑む君の笑顔に僕も微笑む。




痛む傷に気づかれないように。





でも、ごめんね、ジョンイナ。





"僕も幸せだよ"なんて言えないのは、



僕はとっても弱いヒョンなんだよ。




何も言えなかったこと、許してね。

















また嫁と喧嘩して、話を聞いてほしくてギョンスヒョンに連絡する。


あの告白があってからしばらくヒョンとは連絡しなかったけど、やっぱり頼ってしまうのはヒョンだけで。


「電話、出てくれるかな」


ずっと傍にいて話を聞いてくれたヒョン。
告白されても、今まで一緒にいてくれたヒョンを嫌うことなんてできなかった。


電話張に表示されてる、小さい頃から親しんでる名前をタップする。


プー・・・


「おかけになった電話番号は現在使われておりません」


「え?」



電話越しからは、聞き慣れた低い声ではなく、耳障りな機会音声。



何度かけても返ってくる声は同じで、



そのとき、一気に不安が押し寄せた。




急いでヒョンのアパートに走る。




ドンドンドンドン!




「ヒョン?!ギョンスヒョン!!」




何度も呼んでも、何も反応はない。




ガチャ




「うるせぇな。だれだよ?」





出てきたのは、ギョンスヒョンと同じ背丈の知らない人だった。




「あんたこそだれだよ。ここはギョンスヒョンの部屋だ。ヒョンはどこにいる!」



男はヒョンの名前を聞いて何か思い出したのか目を見開くと、さっきより更に眉間に皺を寄せて俺を睨みつける。


その目には怨みとか怒りとか、いろんなものが込められてて、背筋が凍った。




「ああ、あんたギョンスの幼馴染みか。今更何しに来たんだよ」


「なんであんたが俺とヒョンのこと知ってんだ」


「帰れ。今更来たってもう遅いんだよ」


「おい!ヒョンはどこにいんだよ!」


「うるせぇな!ここには居ねぇよ!お前がアイツを追い出したんだろ!」



怒鳴り返してきた男の言葉が突き刺さる。



「お前がアイツを追いつめたんだろ!今更どのツラさげてきたんだ!お前のせいでアイツはもう居ねぇんだよ!お前のせいで二度と会えねぇんだよ!」


俺の言葉が男の導火線に火をつけたのか、男は扉拳で殴ると思い切り叫んだ。



「よくノコノコと戻って来れたもんだな。散々アイツを傷つけてきたのに、ふざけんなよ!お前のせいでアイツは身も心もズタズタにされたんだ!お前はアイツといちばん近かっただろ!ずっと一緒に居ただろ!なのに、何で気づかなかったんだよ!!何でアイツの気持ちを考えてやらなかったんだよ!!何でアイツがあんなに傷つかなきゃいけなかったんだよ!!」



玄関に泣き崩れた男の後ろに見えた、部屋の奥にある仏壇。


それには花と供え物が供えられており、遠くて見えなかったけれど、わかってしまった。



仏壇の真ん中に添えられる写真立てが。




それを遮るように背の高い男の人が出てきて、泣き崩れる小さな男を抱きあげて、あやす様に抱きしめる。


そして、恨めしげな哀しい表情で俺を見ると、一言上がれよ。と言い、奥へと案内してくれる。



俺はその場から動けなくて、玄関先で立ち尽くしたまま。



「会いに来たのならここまで来い」



背の高い男は、小さな男を抱き抱えたまま、仏壇前の横に腰を下ろし、静かに俺に動くよう促す。



頭んなかは真っ白だけれど、



震える足は、ゆっくりと、一歩、また一歩と仏壇に近づく。




仏壇の前まで来ても、立ち尽くしたままでいるしかなくて。

何もしない俺に長身の男は静かに教えてくれた。




「・・・お前に告白した日、お前が帰ったあとに風呂場で自殺したんだ。見つけたとき、、、手首と首には数え切れない程の傷があって。・・・近くにあったカッターで切ったんだと思う、、、服着たまま湯船ん中で、、っ、、死んでたんだ・・・・・・」



重量に逆らえず、地面に叩きのめされるようにどさりと崩れる。


写真のなかのヒョンはあの頃と変わらない姿で幸せそうに笑ってるのに。




ヒョンが、、、、死んだ?






ヒョンが・・・・・・・・・・・・?







「・・・うそだ














嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!
ヒョンが死ぬわけない!!
ヒョンが!!死ぬわけねぇんだ!」



ねぇ、ヒョンどうして?



どうして、いなくなっちゃったの?



俺が、断ったから?



俺が、ヒョンを裂けたから?




どうして・・・・・・・・・・・・







「何で死んじまったんだよ!!!



ギョンスヒョン!!!!!!!」








何度も血が滲むほど床を殴っても、痛みなど感じられなくて、、ただただ泣き叫ぶことしかできなかった。

















抜け殻になった男を帰し、腕の中で哀しむ愛する人を強く強く抱きしめる。



「ベク。ベク」


「チャニョラ・・・」




俺を呼ぶ声は弱く、ギョンスを見つけたあの夜と同じくらいに、冷たいベクの体。


俺もベクと同じくらい冷たく凍ってて、ベクもそれを感じとり、お互いに暖めあうように抱きしめる。



息苦しいほどに。





「俺はココにいるよ。どこにも行かない。ずっとベクと一緒にいるよ」


「俺も。絶対離れないし離さない」








「「ギョンスの分まで、一緒に生きよう」」










俺たちはギョンスのおかげで結ばれた。


ギョンス、お前の気持ちを知らないまま。


お前に何でも話してた。



それでもお前は笑って話を聞いてくれた。


チャニョルと付き合えたとき、自分のことのように一緒に喜んでくれた。



喧嘩したときは呆れながらも背中を押してくれた。




だから、あの日、お前の本音を聞けて嬉しかったんだ。



ジョンイナという幼馴染みへの気持ち。



俺たちを支えてくれたお前に恩返しがしたくて、あの夜、お前に会いに行ったんだ。




なのに、何も言わずに居なくなるなんて、酷いじゃねぇか。



俺は、大切な友人に、お前に残酷なことをした最低な奴じゃねぇか。



なぁ、ギョンス。


会いたい。


お前のおかげで俺たち、もうすぐ結婚すんだよ。



お前のおかげで俺たち、どんなことも乗り越えてこれたんだ。




なぁ、ギョンス。



すげぇ会いたい。





会いたいよ。


















自然が広がる小さな丘の上に、墓石を三人の男が囲んで、それぞれ花を添える。


50くらいの男たちはとても哀しそうに墓石を見つめていて、だれひとり何も言わない。



外国から自分の血を引く韓国に戻ってきた僕は、どうしてなのかはわからないけれど、すぐさまこの丘に来た。



手には祖母から昔よく読んでいたと言われてもらった、自分と同じ名前が書かれた古びた本を持って。




「ここには、大切な方が眠られているのですか?」



後ろから3人の男に声をかけてみるも、だれも僕に振り返ることはなく、墓石を見つめていた。



「・・・ああ。とても、大切な人がいるんだ」


「そうですか」



静かに答えた男の声から、彼らの気持ちが伝わり、僕は静かに墓石に本を供え、手を合わせる。



「なら、そんな悲しい顔しないで、笑ってください」


「コイツの前で笑っていられるか!」



僕の言葉に小さな男はムッとして怒りを向けると、はっと息をのんだ。



その様子に気づいた他のふたりも顔をあげて僕を見ると、目を見開いた。  



「どうしてですか?大切な人なのでしょう?そしたらその人にとってもあなた方は大切な人のはず。僕は死んだら大切な人の哀しい顔よりも、幸せに満ちた笑顔が見たいです」


僕が微笑むと、突然小さな男は僕に抱きついた。


知らない人ではあるけどどこか懐かしい香りのするその人は、僕の肩で声を大にして泣き叫びはじめた。



「俺はチャニョル。君の名前は?」


長身の男は涙を流しながらも笑顔で聞いてきたので、僕も微笑む。


「僕はギョンスと言います。ディオ・ド・ギョンスです」



僕が答えると、チャニョルという男はめいいっぱい笑ってくれた。




「ギョンス・・・ヒョン」



黒い肌のハンサムな男は、先ほどまで死んでいた瞳がキラキラと輝き、大粒の涙を流して20歳の僕に「ヒョン」と何度も呼ぶ。



「あなたの名前は?」


「・・・ジョンイン」


「こんにちは、ジョンイニヒョン」


「・・・ジョンイナって呼んで」



年上に向かって馴れ馴れしく呼べない。
けれど、なぜだか僕はその眼に弱くて。
失礼を承知でその名前を口にする。



「・・・ジョンイナ」


「ギョンスヒョン・・・」




僕のことではないとわかっていても、彼の声から彼の気持ちが伝わり、思わず言葉にしてしまった。



「・・・ただいま、ジョンイナ」


「おかえり!おかえり、ヒョン!」





華やかな気持ちに囲まれた墓石の前。


僕はきっと、あなたの代わりに彼らに会いに来たのですね。



だから僕はあなたと同じ名前をもらったんだね。



そうなんだよね、ギョンス叔父さん。









End.