いつも一緒に居て、それが当たり前になっていた。はずだった。
「ベーク♡」
当たり前のように俺に抱きつくチャニョル。
いつからだっけ。
こいつの腕のなかに居るのが落ち着かなくなったのは。
チャニョルとは練習時代からずっと一緒に居て、同じグループになってから同年代ということもあり、より一層仲良くなったと思う。
チャニョルといると楽しいし、バカやってふざけて、喧嘩もするけどすぐに仲直りしてまた笑い合っていた。
肩を組んだり、ふざけて上に覆い被さったり、そんなの日常茶飯事だったのに。
なのに、落ち着かない。
「暑苦しいからはーなーれーろ!」
腕を伸ばして距離をつくったことを笑って誤魔化す。
「えーー、ベク~!」
それでも引っ付いてくるチャニョルから逃げると、親鳥についてくる雛のようにチャニョルが追いかけてくる。
まぢで逃げてスホヒョンを盾にすると
「ベクのケチ~!」
とチャニョルが拗ねた。
悪いな。
そう思いつつ振り返ってチャニョルを見ると、俺と同じ背丈のギョンスに抱きついてカイと3人で話はじめた。
俺はそれをモヤモヤしながら俯いて先に車内に滑り込んだ。
あ~あ。
なにしてんだろ。
宿舎に帰る車内のなか、いつもならチャニョルとお喋りしてるけど、今日は後部座席で頭を窓に預けて睡眠不足を解消した。
「ベク~、起きろ~。着いたよ。」
ぺちぺちと頬を叩かれてチャニョルに起こされる。
「ん~」と返事はするものの、眠気で頭がはっきりしなくて体も重くて、なかなか自力では動けなかった。
「手伝おうか?」
「大丈夫!ベク運ぶから荷物だけ頼むわ。」
「わかった。先行ってるね。」
「は~い。」
ギョンスとチャニョルの会話をぼーっとする頭が一語一句拾う。
「ベク、ほら、こっちおいで。」
ドアを開けて俺に腕を広げて待つチャニョルに体が勝手に動いて、自分からチャニョルの腕のなかにはいった。
「よいしょと。」
頭をドアに当てないように気をつけながら俺を引き寄せると、その細い腕で軽々と俺をお姫様抱っこして宿舎に運ぶ。
落ち着かない腕のなかで、俺は全体をチャニョルに任せた。
ゆらゆら揺れて、ふんわりやわらかな香りに包まれて。
夢の中と現実の境がわかんなくなった。
意識を手放す直前、額から頭を大きな掌で撫でられてにっこりと微笑むチャニョルに幸せな気分になる。
それと同時にまた俺から離れていきそうな気がして不安になる。
ああ、だめ。
ここに居ろよ。
力なくチャニョルの頬を撫でたのを最後に、また眠りについた。
夢の中でもうるさいチャニョル。
なんで、お前なんだろな。